表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/17

骨の夢



   ◇ ◇ ◇




……誰かが泣いている。



それにしてもキナ臭い。

ここは何処だろう?



火に炙られた木材がはぜる音がする。そしてその匂い。



幽かだが、木が焼ける匂いとは違う匂いが漂っている。



何だろう?お香のような、そんな香りだ。



ああ、まだ誰か泣いている。



やっと開いた瞼の間から泣き声のする方向を見た。



狂ったように泣く男。

膝を附き、何かを抱き抱えている。



あれは父さんだ。

空襲で私と母さんは家ごと焼夷弾にやられた。






いつもの1日だった。


二人で父さんの帰りを待っていた。

母さんは笑っていた。



それなのに、耳をつんざく爆音と供に何もかもが壊れた。



母さんの笑顔が壊れた瞬間を私は覚えている。



怖い。悲しい。悔しい。苦しい。



そんな感情が入り交じって、でも小さな私にはどうする事も出来なくて、目の前を闇が覆った。





父さん、おかえり。




私もいるよ。





やっとの思いで声を振り絞ると、父が、泣いていた父が



酷く驚いた顔でこっちを見た。








「ああ、タマキ……母さんは……母さんは……生き返らなかったよ」



父は私を抱き起こしながらそう言ったが、その時の、その言葉のおかしさなど私に解る筈も無い。


抱き起こされて視界が変わると、小さな香炉から煙りがたゆたうのが見える。



「タマキだけでも生き返って良かった」





私は小さいから、その言葉の意味も解る筈は無い。



ただ父の腕の温もりで、心底安心した。













「タマキちゃん」



キナ臭さやお香の匂いは一変して消毒薬の匂いになった。



白い天井、白い壁。



「タマキちゃん!良かった、気が付いたんだね」



高柳医師だ。



思い出した。私は彼の話を聞くうちに気が遠くなって……




今まで見ていた夢は何だったのだろう?



小さい頃の記憶?



そんな筈は無い。私は何も覚えていない。



きっと高柳医師の話のせいで変な夢を見ていたんだ。












評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ