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屍の学者



   ◇ ◇ ◇




僕と東雲は帝都大学の医学生として供に学んだ仲だった。


僕の場合は親が医者と言う事もあり、家業を継ぐ為にしぶしぶ入学したんだが、彼は違う。


もっと何か崇高で恐ろしい目的の為に学問を修めたい……そんな空気がいつもまとわりついていたんだよ。



そう、あれは卒業論文が発端だった。



何を書いたかって?



真面目な医学生ならおよそ書かない事だ。


否、考えすらしない。



あまりに馬鹿馬鹿しくそしてあまりにも









恐ろしい論文だったんだ。








その為、教授陣に書き直しを命じられた。


こんなテーマの論文では卒業させられない。と。

彼は当たり障りのないテーマで違う論文を書き上げたよ。


お陰で卒業も出来た。




その教授陣にボツを喰らった論文を彼に見せて貰ったよ。





論文の題はこうだった。






「死体蘇生術」










それには……小学生の君達にも解るように簡単に言うと、次のような事が書いてあった。





◆反魂樹(反魂香)を用いての死体蘇生


古典の書物に登場する【反魂樹】はあながち架空の植物とも断定出来ない。


香にして焚き染める事により未知の成分が発生するのではないか?


それが死体に何らかの作用をもたらすと考えられる。


しかし、損傷の激しい死体等はこの仮説が正しくとも蘇生するのか否か?

どの程度の損傷ならば蘇生出来るのかが研究テーマである。





◆蘇生した死体の管理


古典文献によれば、反魂香によって蘇生した死体は狂暴化する、もしくはまたすぐに死んでしまうとある。



防腐剤や強い化膿止め等の薬品を用いて延命させる事が可能ではないか?





……そう、僕はここがひっかかったんだよ。



タマキちゃんが死体の筈は無いけど、何らかの形で薬品の実験台にされてるとしたら……



タマキちゃん?


いや、君が“死体”だと言っている訳では決して無いよ。



反魂樹なんて有る訳無いんだし、死体が生き返るなんてお伽噺もいいところだ。



だから安心して……




タマキちゃん?





どうしたんだ?

しっかりしなさい!








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