私の場合
私――霧鑢烈火は住宅街を歩いていた。
服の内側に刃渡り三十センチのナイフを忍ばせて。
無尽弥勒に復讐するために。
私は弥勒のことが好きだった――ううん今でも好きだ。
私は弥勒に尽くした。料理を作ったり、洗濯をしたり、掃除をしてあげたりもした。なのにあいつは私を裏切った! 他の女の所に行った! その女の名は蜈蚣坩堝。私の友達だった女。
恋人にも友達にも裏切られた。こういうのはよくある話。それは分かっている。でも、私は許すことが出来ない。
路地に入る。弥勒の家の近道だ。坩堝と出かけていることは確認済みだ。家の中で待ち伏せ、帰ってきたところを刺すつもりだ。
誰かが私の後をつけていることに気づいた。
体を左にそらすと、斧が横を通過した。
右足をあげて、体を蹴り飛ばした。男は尻もちをついた。殺気を放つと、男は立ち上がって逃げた。情けない奴だ。
私は男を追いかけた。すると男は体力が尽きたのか、無様に倒れた。追いつくと、強引に首を掴んだ。
辺りを見回し、弥勒の家を見つけた。そうだ、男を殺して弥勒の家に放置しよう。弥勒を殺人犯に仕立て上げよう。いや、それはムリか。私の指紋が男の首にべったりついているから。指紋を照合すれば、すぐに弥勒が犯人じゃないと分かるだろう。
それはさておき、とりあえず、男を処分しよう。
私は弥勒の家に行き、ナイフを鍵穴に挿入した。数秒ほどガチャッガチャッとさせて扉を開けた。中に入ると、ベッドの近くに行き、男をナイフで滅多刺しにして、ベッドの下に放り込んだ。
ハンカチで床に付着した血痕を拭いた。
そのまま家を出ると、先ほどと同様ナイフを鍵穴に挿入して、ガチャッガチャッとさせてその場から立ち去った。
ベッドの下の死体を発見すれば、どういう反応をするんだろう。なぁ、私の大好きな弥勒よ。
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