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第一話『布と水精霊』

一話目です。今回も含めてしばらく説明が多いと思いますが、御寛恕の程、お願いします

 目を開き、まず視界に広がったのはテントの布だった。

 

 「そういえば、遠出した帰りだったか」


 俺は分厚い野外用の布団――砂利の上でも痛くない高級品――から抜け出し、アイテムボックスに仕舞ってから外に出て大きく伸びをする。

 アルタベガルでは、俺は闇よりも黒い長髪を少し高めのポニーテールにしたカッコイイ系の男だ。年はおおよそ二十前後で、細いのに筋肉はきっちり付いていて腹筋も割れている、いわゆる細マッチョとか言われるタイプだ。鋭い目や口元のせいで、リラックスしていても険があるのはマイナスかもしれないが、ランダムで決定されるキャラクターでこの容姿は十二分に当たりだったのだろう。

 ちなみに、今の俺の装備は防具が上から、


 入手時に設定した精霊――俺の場合は《水精霊ウンディーネ》――をMP極低消費で常時召喚する《精霊王マクリルのピアス》


 自身よりレベルの低い相手に限り、攻撃の軌道予測を表示する《主神オーディーン刺青タトゥー


 雷系魔法の威力、命中率を上げる《雷神トールのチョーカー》


 物理攻撃力強化と闇耐性に加え、闇属性付与とかなりの隠蔽ハイディングボーナスがある《闇龍シュバルツシルトのコート》


 光に耐性を持ち、攻撃力増加効果、光属性付与の力を持つ《天龍ソウェル天凱布てんがいふ


 絶大な防御力と速度上昇効果を発揮する《天狼あまら帷子かたびら


 攻撃力上昇と水属性付与、それにHPの自然回復速度上昇の効果を持ったフィンガーグローブ《海神ポセイドン蒼漣布そうれんふ


 防御力は低いが、代わりに風属性付与と帷子以上の速度上昇の効果があるズボン《風龍ウェントス奔流布ほんりゅうふ


 任意による斥力発生効果と地属性付与、素の防御力以外にもステータスの防御力上昇効果を持つ《地龍オースィラ地撥甲ちはつこう


 速度上昇に加えて、高い隠蔽ボーナスに一定時間に限り宙を駆ける事ができる《発明神ヘルメス万唆靴ばんしゅんか


 と、なっている。状況によって、他の装備に変えたり、増やしたり減らしたりとするが、基本的にはいつもこの装備で行動している。

 普段から装備している武器は主に三つ。


 耐久値無限で命中率に補正が掛かる光属性の白い三尺(約九十センチ)の刀《鍛冶神ゴヴニュの天刀》


 俺が個人で開発したスキル《布武術ふぶじゅつ》の基礎が完成した際に運営側から渡された物で、耐久値無限の上に攻撃力を持ち、高い火属性を持つ《不朽の紅血布インモータル・ルビー・クロス


 魔術スキルの詠唱を省くために手に入れた、それぞれの属性を籠めた魔石をスロットにセットする事で、魔石の純度に応じて魔術の詠唱を破棄できる五十センチの樫の杖《大地神ガイア混沌杖カオス・スティック


 これだけ見るとチート装備だが、この装備でも最強種を一人で相手取るのは厳しいし、古参は皆同レベルか一つ二つ下の装備なので、最初期からいる最古参の一人としては別に普通の装備だ。物理、魔法のどちらかに特化した装備は、その方面に限っては本気で鬼畜だと断言できる。

 俺は天刀を左腰に差して紅血布を右腕に巻いた状態で、右腰のポーチに混沌杖を入れている。全ての装備を点検し終わった所で、目の前の地面から勢い良く水が湧き出した。水はすぐに中空で人型を取り、美しい少女の姿で凍りつく。それが〈パキン〉という音と共に砕け散った。それを魔法独特の光が包む。

 光が収まった時には、氷のあった場所には蒼髪蒼眼に蒼色の和服を着た少女が立っていた。

 相変わらずの派手な登場だが、仕様なので仕方が無いと早々に諦めている俺は、特に反応する事も無く少女に声を掛ける。


 「スイ、一日ぶりだな」

 「はい。リンが来るまでにオーク鬼が二回、ウェアウルフが一回、雷蛇が四回ほど来ましたが、レベル差を感じたのかすぐに逃げ出したので戦利品はゼロです。今日は、確かリーズライロの街でミーナ様と待ち合わせでしたね。時間まであと一時間で、ここからだと歩いてギリギリの距離になります」


 嬉しそうに微笑んで答えてくれる。この少女が精霊王のピアスで常時召喚している水精霊だ。戦闘では主に後方支援の回復担当として頑張ってくれている。水系統の魔法は回復関係が充実しているので、スイと行動するようになってからは一度も状態異常等の理由で死んだ事が無い。ソロとは思えない快挙だ。

 あと、これはどうでもいい事かもしれないが、この世界は特定のNPCのAIがかなり高い。神々のようなボスクラスだけではなく、こういったレアな最上位固有武装により召喚される生き物や上位依頼の依頼者等は、処理落ちするのではないかと思うほど感情豊かだ。

 スイに限って言うならば、俺の名前をリンセイルから愛称のリンで呼んでくるなど、ファンタジーRPG系にしてはやり過ぎ感もあるのだが、別に運営に文句を言うような事ではない。

 まあ、初対面の相手に俺との関係を聞かれて、「妻です」なんて堂々と答えるスイが特別だという気もするのだが。いや、その辺りは開発した人の悪ふざけだと切に願う所だ。これでAIが自立成長して独自の思考に従った行動をしているなどと言われれば、俺はきっと自殺する。何故なら、スイがこうなったのは俺の行動が原因という事になるからだ。

 ちなみに、今居るのは《鬼の森》というダンジョンで、初心者が戦闘の基本を学ぶための場所になっている。チュートリアルの無いアルタベガルでは、この森で中級者から手ほどきを受けるのが最近の通例だ。

 だからこそ、まだ上級の域に入ったかどうかというスイが相手でも逃げたのであって、これが中級以上のダンジョンだと容赦なくスイに襲い掛かっていただろう。基本、相手が逃げるのは自身の倍以上のレベルを持った相手だけだ中級層のモンスターだと、せいぜいスイは一.五倍程度のレベルしかない。

 水精霊故に死が存在しないが、スイが負けるような相手だといくら最高級のテントに掛けられた魔物避けの魔法でも意味を成さない。容赦なくテントが破壊されて道具の一部がロストするペナルティが課せられただろう。そういう危険な場所では、モンスターの出ない安全地帯で落ちるのが常識である。

 テントをアイテムボックスに仕舞い、マップ画面で現在地の確認をしていると、手持ち無沙汰なスイが前に回りこみ、じーっとこちらを見て口を開いた。


 「リン、ミーナに会うなら装備を統一した方がいいのではありませんか? そのままですと、またセンスが悪いと罵られる事になると思います」

 「ああ、確かに。サンキュー、指摘してくれて助かった」


 俺は頷き、装備画面を開いて一度ピアスとチョーカー、コートを残して他の全武装を外す。一度黒コートにパンツ一枚のどこの変態だと言いたくなるような格好になるが、スイしかいないので恥ずかしがる必要も無い。ただ、誰かが来る事も考慮して、すぐに先程とは別の装備に変えていく。

 頭を縛っていたただの紐から靴まで、鋭角的で攻撃的な印象を持つ漆黒の装備一式をを身に纏う。所々に銀色の装飾と紅の牙や眼を使った補強が施されているが、それ以外は完全な漆黒。先ほどまで身に付けていた神々の名を冠する装備品群には若干劣るが、トッププレイヤーでも垂涎の代物である。

 それも当然で、このゲームでも最上級の強さを誇る龍種の中、二天とまで呼ばれる闇龍シュバルツシルトの素材で作られた防具で、上から下まで物理攻撃力特化プラス闇耐性かつ闇属性付与のシュバルツシルトシリーズと呼ばれている。隠蔽ボーナスもレア度相応に高いので、息を潜めて隠れれば、たとえ高レベルプレイヤーと言えども、索敵スキルをかなり上げていなければ見付ける事は適わないだろう。

 そんな俺の装備を見て、スイの感想はというと。


 「現実で街を歩くには勇気がいる装備ですね。厨二病と後ろ指差されそうです」


 自分でも薄々感じていた事を正面から指摘され、精神的ダメージに耐え切れずガックリと膝を突いた。

とりあえず、水精霊スイの登場です。

主人公本気でチートですね。ただし、この世界だと龍や神、精霊王にその他最強種という括りに入る怪物には軽く負けます。ソロだと、準備に準備を重ねて終始主人公に有利な状況で戦っても、運が良ければ勝てるかもという程に差があります。

ちなみに、レベルなどステータスは今後物語中に出していきます。ある程度出てきたらそれぞれのステータスを纏めた物を出すつもりです。

誤字脱字、変な所があれば遠慮なくご指摘ください。

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