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幕間その四『楽しい? ノルン姉妹の会話』

 カチ、コチ、カチ、コチ―――。

 

 そこは、中央に三方へと顔を向ける柱時計の置かれた円形の部屋だった。

 内装は中央付近を無機質に、その外側をキレイな三等分で全く違う内装が施されている。出入り口も無ければ窓も無い、だというのに空気が澱む事すら無い奇妙な部屋である。

 そこで、二人の少女がそれぞれ寛いでいた。

 

 『……四百四十四問…………ふふふ………』

 

 そこらの専門店よりも遥かに多いぬいぐるみで埋め尽くされた空間で、ペディベアを抱きしめて埋もれるように座る少女が突如ポツリと呟きクスクスと笑う。銀髪にピンクと薄いグリーンのゴシックロリータを着たあどけなくも美しい少女だが、ぼんやりどこも見てない瞳と脈絡の無い言動はまさしく電波少女。

 そんな少女の呟きに反応したのは、同じ部屋のはずなのに薄暗く、床も壁も天井も黒いまともに物も無い部屋で、隅にこれまた真っ黒な薄い毛布を被って座る黒髪美女だ。

 

 『ふ、不吉な数の問題を間違えちゃいましたね。そ、そうですよね。わ、私が見ていたから間違えたんですよね。ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい―――』

 

 二十代前半の、街を歩けばナンパの絶えなさそうな可憐な容姿をしているのだが、濁った瞳を涙で潤ませ、壁に向かい謝り続ける様を見れば、どんなに酔狂な男であろうとも見なかった事にして踵を返すだろう。

 これに現在祠でクイズの出題者を務めているヴェルダンディを合わせて、人間の転生を司る三姉妹だ。

 三人揃って人格破綻者であり、転生させられる側である人間からすれば、不安しか感じないような役振りだが、三人とも生物の転生を司るノルンという神の端末――指先のような物であるため、ただ死んで輪廻するだけならばシステム的な処理をされるだけで滞り無く流れていく事になる。

 この部屋はそんな三人の待機場所であり、体と精神を休めるための場所で、現在訪問者のいない二人はヴェルダンディの五感を借りて久々の娯楽を楽しんでいる。

 

 『………始祖、揃った……………始まる(・・・)、かな』

 『嫌ですよ。始まって欲しくないです。今はどうせ引っ込んでてもすぐに使い潰されるんです。どうせ私達は代替の利く人形でしかないんですから。ごめんなさい生意気言ってごめんなさいもうしないから許してくださいごめんなさいごめんなさい―――』

 『…………笛はまだ寝てる……でも、誰かが起こす………』

 

 突然まともな会話をする二人の瞳は、しっかりと焦点を結び、濁りも無い。

 が、それも一瞬。すぐさま二人は元に戻ってしまった。

 

 『………大きな鳥……蜥蜴を食べる…赤くて紅い……』

 『ごめんなさい生まれてきてごめんなさい息をしててごめんなさい目が見えててごめんなさい生きててごめんなさい死んでなくてごめんなさい―――』

 

 電波と根暗はそれぞれ全力で妄言を撒き散らし謝罪し続ける。

 これにハイテンションなヴェルダンディが加わり、アルタベガルで最も関わりたくない三姉妹が更なる混沌を成すまで、あと八時間を切った辺りの出来事。

 “ノルン”だけが知る、他には知られない価値の無い、そんな話。

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