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プロローグ『布と日記の一ページ』

 廃プレイヤー。

 俗にそう呼ばれる、人生の大半をゲームに注ぎ込み、現実よりもゲームが大事だときっぱり言い切るようなイカれた人種の総称である。

 俺も、そんな廃プレイヤーの一人だった。

 

 「○○ー、カラオケ行こうぜ」

 「悪い、用事あるから」

 

 高校時代、入ったばかりの頃はこうして声を掛けられる事もあったが、全てを尽く断り、ゲームに没頭した俺は、いつしか友人と呼べる友人が居なくなっていた。

 

 

 そんな頃だ。十六歳の誕生日がとうに過ぎ去った六月、俺はアルタベガルのβテストの広告を見付けた。

 

 

 即座にβテストに応募し、七月初めにその当選通知が来た。年齢制限のあるゲームのため、兄の名前を使って応募したのだが、ソフトと共に合格通知が送られてきた時は小躍りして母に怒られたのを覚えている。

 そんなこんなでログインしたアルタベガルの世界に圧倒され、そのディティールに歓喜し、寝食を忘れるほどにのめり込んでいった。

 思えば、これが運命の転機だったのだろう。

 俺は今まで複数登録していたMMOゲームの全てから撤退し、他のゲームには見向きもしないでアルタベガルへと心血を注いだ。学校では携帯片手にネットの掲示板で最新の情報を調べ、放課後は延々とレベル上げや行動可能な地域の探索に時間を費やした。

 その後半年ほどでβテストが終了した時は、心から嘆き悲しんだ物だ。

 そして、βテスト終了から三ヶ月という短期間で発売された正規品を優先権により迷わず入手し、β時代の仲間と集い、段階的に解放される世界の中で常に最前線を独走し続けた。

 

 

 結果、俺を含む仲間の幾人かは始祖という極レアな種族へと転生を果たし、他の仲間もトップ集団で一歩以上飛び抜けた実力を身に付ける事ができた。

 

 

 理不尽領域と名高い神々の領域でも、平然とまでは言えなくとも、生きてくまなく探索できる程の実力を得てからは、所有者の少ないレア装備のコレクションへと走ったり、初心者指導に熱を入れてみたりと好きに生きた。

 色々と面倒にも巻き込まれたりしたが、それでも現実よりも充実した時間を過ごせる中で、こっちが現実ならと思ったのは一度や二度ではない。むしろ、思わない日の方が少ないと言っていいくらいだ。

 しかしながら、人間、本当にそうなるとは思わない物だ。

 

 今では、平和で平凡で何も起きない地球に生まれて、幸せだったのだと理解している。

 無論、現状に不満な訳ではない。充実している。

 だが、たまにはこうして過去を振り返るのも必要な事だろう。

 

 

                神暦××××年××月××日 特級指定図書『リンセイルの日記』より

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