episode5
そうして、長いような短いような日々が過ぎ、晴れて入学の日を迎えたのであった。
シャルロッテは学園へと向かう馬車の中、憂いを帯びた瞳で窓の外を見つめていた。
そして馬車の中は静寂へと包まれていた。
そんな重い空気に耐えられなかったのか、ウェンがシャルロッテへと話しかけた。
「ロッテ様...いい加減機嫌を直しては頂けませんか?」
シャルロッテの機嫌が悪い理由はただ一つ。
ジークハルトが訪問して来てからこの日まで毎日の様に愛を囁く手紙を送って来るのであった。そんな彼と毎日顔を合わせる事になるなどと...シャルロッテは考えただけで寒気を感じた。
「無理ですわ、ウェン。私にあの方の愛は重すぎますわ...!」
「確かにあの手紙は...圧巻でしたね。」
「私...やっていけるでしょうか...」
「ロッテ様なら大丈夫ですよ。万が一ジークハルト様に何かされそうになったらお得意の体術で...」
「駄目ですわ!彼はそれをも愛情と捉える方ですのよ?!」
「あぁ...そうですね...」
ウェンは同意するしか無かった。そして再び馬車の中は重い静寂へと戻っていったのであった。
そんな中で急にシャルロッテの隣へと座っていたメイドが元気いっぱいと言わんばかりにてをあげた。
「シャルロッテ様!発言よろしいでしょうか!」
「...なぁに?ミサト。」
シャルロッテに"ミサト"と呼ばれた少女はシャルロッテの両手を自身の両手で包み込み目をギラギラさせながら「大丈夫です!」と声高らかに言った。
「シャルロッテ様はこのミサトめが命を賭けてお守り致します!男どもの汚い指一本すら触れさせません!」
このミサトと言う少女は街で奴隷商に攫われそうになっていた時に助けた子供であった。その日から彼女はシャルロッテの屋敷へと毎日、足しげく通いつめ、根負けしたシャルロッテからメイドになる事を提案され、それからシャルロッテ付きのメイドへとなったのであった。
「ミサト...ありがとう。心強いですわ。」
「いえ!シャルロッテ様の為なら何だって...!!」
「ミサト!いい加減ロッテ様から手を離すんだ。」
「何をするのですか。シャルロッテ様は喜んで下さいました!」
実を言うとこの二人、シャルロッテの事になると協力し合う事もあるが、基本犬猿の仲であった。二人の間に火花が散っているのを見ながら、シャルロッテは自身の手を握りしめ、瞳を二人へと移した。
「ウェン。ミサト。これからは学園での生活が始まりますわ。気を引き締めて自分磨きをしていきましょう。」
「はい。ロッテ様。」
「シャルロッテ様に全てを捧げます!」
そうこうしているうちに、馬車は学園へと辿り着いた。
「さぁ、二人とも。準備はよろしくて?」
そして彼女らは学園の門をくぐって行った。




