episode17
三人で食堂へ向かうと...入り口でエリザベスとその親衛隊が待ち構えていた。
「来ましたわね。シャルロッテ・オベール!」
どうやらシャルロッテがかましたビンタは思っていた以上に力が強かった様で、エリザベスの頬には湿布が貼られていた。
「よくも...よくも私のお顔にビンタをしてくれましたわね?!貴族であろう者がこんな暴力的で良いとお思いで?!ジークハルト様!こんな娘、早く見限った方がよろしくってよ?!」
三人は折角良い気分でいたのに、一気に急降下していった。それに追い打ちをかけるように親衛隊が声を上げてきた。
「シャルロッテ・オベール!先日はよくもエリザベス様に暴力を振るい、それに加え暴言まで吐くとは...しかもそれに対する謝罪を拒否するなどと皇族の方に態度がなっていないのではないか?!」
「...それを言う君達もロッテに対して暴言を吐いたり、暴力を振るおうとしたよね?...貴族令嬢に手を上げるなんて許されるとでも?」
ジークハルトは暗い笑みを浮かべながら、彼らを睨みつけた。それに親衛隊は「ヒッ!」と声を上げ、一歩、二歩と後退していった。
「ジークハルト様!何故こんな乱暴な娘を庇うのですか?!私と言う貴方に見合った美しい王族の人間がいるんですのよ?」
その発言を聞き、ジークハルトは我慢の限界が来たのか、エリザベスの元へと歩み寄り手を振り上げ、そのまま彼女の顔目がけて手を下ろそうとした。しかしその手はシャルロッテに掴まれ、エリザベスを叩く事なく鎮められた。
「ロッテ!何故止めるんだい?!」
「いけませんわ、ジークハルト様。貴方がエリザベス様を叩いてしまったら、国同士の問題になってしまいます。」
「...しかしっ!」
「...私の事を想って下さり、ありがとうございます。」
シャルロッテがそう言い笑顔を向けると、ジークハルトは落ち着きを取り戻したのか、手に込めた力を緩めた。
「ロッテ...ごめんよ...。」
「どうかお気になさらないでくださいな。」
シャルロッテはジークハルトへそう告げると、エリザベスへと目をやった。エリザベスはジークハルトが余程怖かったのか、顔を真っ青にしてへたり込んでいた。シャルロッテはエリザベスへと近づくと彼女に目線を合わせ、手を差し伸べた。
「...?!」
「大丈夫ですか?エリザベス様。」
「シャ、シャルロッテ・オベール...?」
「男の方から手を上げられるのは怖かったですよね。」
シャルロッテはそう言いながらエリザベスへ笑顔を向けた。エリザベスはそんなシャルロッテに対して驚きを隠せないでいた。...それはジークハルトやウェン、エリザベスの親衛隊に周りの生徒もであった。
「ロ、ロッテ?」
「ロッテ様?一体何を...」
ジークハルトとウェンが困惑の声を上げると、シャルロッテは二人に顔を向け、笑顔で口に人差し指を当てた。それを見た二人は黙るしか無かった。
そしてシャルロッテはエリザベスへと向き直し、エリザベスの頭を優しく撫でるのであった。
「...えっ?」
「エリザベス様。貴方は国のトップである皇族なのです。将来は国の民の為に尽力しなくてはならないのですよ?いつまでも子供の様に我儘を言ってはいけません。...分かりますか?」
「は、はい...」
シャルロッテはエリザベスを静かに諭す。すると今までキャンキャンと喚いていたエリザベスはシャルロッテを黙って見つめ、シャルロッテの問いかけにただただ頷く。
「私達貴族はあなた方皇族を支えるためにあるのです。...だからエリザベス様も私達を導く様な皇族になれるよう、この学園で学ばなければなりません。ですから、もう我儘を振り翳し周囲に迷惑をかけないようにして下さいね?」
「...はい。」
大人しくなったエリザベスに周囲はとても驚いた。シャルロッテはエリザベスが頷いたのを見届け彼女に笑顔を向けた。
「それでは私はこれで失礼いたしますわ。ジークハルト様、ウェン。参りましょう。」
「あ、あぁ...」
そうして三人は食堂の中へと入っていった。
そんな後ろ姿を見て、エリザベスは頬を染め、シャルロッテに向け「お姉様...」と呟いた。




