episode1
小さい頃から綺麗なモノより強いモノが好きだった。
おままごとや人形遊びなんかよりも体術や剣術、魔術を学んでいる方がずっと楽しかった。
貴族故に、マナー作法や勉学には力を入れられていたが、やはり身体を動かす快感には勝るモノはなかった。
「シャルロッテよ。体術や剣術を学ぶことはとても良いことだと父は思う。だが、これだけは覚えていてほしい。その力は人を傷つけるモノではなく、守るために使うモノだと言うことを。」
「はい。お父様。」
シャルロッテと呼ばれた少女は、ピンクがかった美しい銀髪を揺らし、彼女のお気に入りの真紅のドレスをつまみ上げ、父親に対し礼をしながら返事をする。
「この間街に行った時のことを聞いたぞ?悪漢に襲われそうになっていた子供を助けたらしいではないか。その行いはとても素晴らしいとは思うが...お前もまだ子供なのだから大の大人に一人で挑むのはやめなさい。護衛の者に聞いたが、見かけ次第制止を振り切ってワンパンで仕留めたらしいではないか...。父は心臓がいくつあっても足りないぞ。」
「お言葉ですがお父様。護衛を待っていたらあの子は無事ではなかったと思います。」
「それはそうなのだが...。お前に怪我でもあれば私は心配で夜も眠れないぞ。」
「...申し訳ございません。」
このやり取りは一度や二度ではない。
少女は身体を動かす事が好きなだけでなく、とても強い正義感を持っているのだ。
また、体術・剣術・魔術はそれぞれの家庭教師達をも舌を巻く程の実力となっている。まだ、10才でありながら、大人も手を上げてしまっているのであった。
「ゴホン。シャルロッテよ、今日は大事な話ががある。」
「なんでしょうか、お父様?」
「さぁ、こちらに来なさい。」
父親が扉の方へと声をかけると、メイドに連れられ、一人の少年が部屋へと入ってきた。
「今日からお前の付き人になるウェンだ。お前程では無いかもしれないが、様々なことに腕が立つ。年はお前と同い年だ。仲良くするんだぞ?」
「はじめまして、シャルロッテ様。ウェンと申します。どうぞよろしくお願いいたします。」
少年はガチガチに固くなりながらシャルロッテに挨拶をした。そんな少年の様子を見てシャルロッテは彼の手を取り笑顔で返した。
「はじめまして、ウェン。そんなに固くならなくてもよろしいですわ。仲良くしましょう?そうだ、私これから剣術の稽古がありますの。よろしければご一緒しませんか?よろしいですよね?お父様!」
「二人が良ければ私は構わないよ。」
「どうかしら?ウェン?」
「...はい!ぜひご一緒させて下さい!」
それから二人は動きやすい服装へと着替え裏庭へと出ていった。
「旦那様に連れられた時も思いましたが、美しく立派なお庭ですね。」
「フフッ。そうでしょう?剣術の稽古が終わったらテラスでお茶でもいたしましょうか。」
「ハイッ!」
「さぁ。先生がいらっしゃいますん。お手柔らかにお願い致しますわね、ウェン。」
そこからは二人にとって楽しい時間となった。
シャルロッテの父親が言った通り、ウェンもなかなかの剣の腕前を持っていた。そのため剣術の家庭教師は二人の動きを見て目を回した。まるで、舞でも舞っているかの様なやり取りで、大人も手を上げるサマだった。
「フフッ。ウェン、なかなかやりますわね。私についてこられたのは貴方が初めてですわ!」
「ハァ、ハァ...ありがとうございます...!!」
「先生。今日はこの辺りでよろしいでしょうか?」
シャルロッテに声を掛けられ我に返った家庭教師はしどろもどろに承諾の返事を返した。
「さぁ、ウェン。着替えてお茶にいたしましょう?」
先程までの大人の様な立ち振る舞いから、少女の笑みを浮かべ、楽しそうにウェンへと話しかけた。
「ハイッ、シャルロッテ様!」
「シャルロッテ様だなんて。ロッテで構いませんわよ?」
「いえ!そんな無礼なことは...」
「無礼な事などではありませんわ。私貴方ともっと仲良くなりたいのです!」
「...で、ではロッテ様と...」
「えぇ。構いませんわ。」
シャルロッテは嬉しそうに笑った。
かのじょの笑みを見ると、ウェンは恥ずかしそうに顔を赤らめ下を向いた。
「ウェン?どうかなさいましたか?」
「い、いえ!何でもありません!」
「?なら良いのですが...」
二人はそんなやり取りをしながら屋敷へと入って行った。
「ではう。またすぐ後に。」
「はい。ロッテ様。」
ウェンはシャルロッテの部屋の前まで彼女を送ると、自身に宛てがわれた部屋へと入って行った。




