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番外編:Game Geek 4 結成物語

 1. Renとセイ、最古参の共犯者


 実況を始めた頃から、互いの名前は知っていた。

 タイプは正反対。

 Renは落ち着きと分析で視聴者を引き込む“静”の実況者。

 セイはトークとテンポで爆発力を生む“動”の実況者。


 とあるスポンサー企画で複数の実況者たちが集められた。そこで偶然出会った2人。でも「この人なら任せられる」とお互いにすぐわかった。


「こいつがしゃべると何でも面白くなる。すごいな」

 Renがそう評価する一方で


「この兄ちゃん、俺がどんなに暴れても静かにまとめてくれる。面白れぇ!」

 セイはRenに強く興味を持った。


 そこから何となく不定期で一緒にゲーム実況を配信するようになった。お互いにこれからも組むならこいつかな、と無言の確信があった。



 2. ぐっちという“芯”


 そんなとき、あるコラボ企画で共演したのがぐっちだった。


 実況歴はそこまで長くないが、視聴者からの信頼、話を広げる力、テンションを崩さず拾うタイミング、そして何より親しみやすさと包容力。それらが抜けん出ていた。


「え、なにこの人。場のコントロール、プロじゃん」

 ぐっちの配信を見たセイは目を丸くする。


「この人がいるだけで安心できる。場の空気を作ってくれるな。支柱って感じ」

 Renは確信を持ってそう言った。


 ぐっちは、動×静の間に“人間味”を流し込む潤滑油だった。


 彼に声をかけたとき、ぐっちは画面の向こうで目を細めて笑った。


「よくこんなおじさんに声かける気になったなぁ」


 これで3人。これで揃った——と思った。



 3. 最後のピース、羊


 ある日の雑談配信の後、ぐっちは言った。


「あのさ、ひとり、紹介したいやつがいるんだ。実況歴は浅い。でも、めちゃくちゃ雰囲気ある」

「語彙が豊富で、コメントの切り返しが絶妙。あと、声がとにかく残る」

「たぶん、こいつが入れば……“面白い”じゃなくて、“空気が完成する”と思う」


 それが——羊だった。



 3人で観た羊の配信。ゲーム内容が静かに進む中、ふとした言葉の端々にセンスがあった。


「うっわ、ここの展開、プレイヤーの心を刺してくるなぁ」


「いや、えぐいって。好きすぎるこの構成。誰? このシナリオ書いた人? 養いたいわ」


 どれも淡々としてるのに、視聴者が笑うように仕向けてくる空気がある。

 なにより、あの低音の声と、余白を残す間。初めて観たその衝撃をセイとRenは肌で感じていた。


「何この、独特の語彙!? なんで“感情を段ボールに詰め込まれて着払いで送られた気分”とか出てくるの?」


「ツッコミのキレは抜群。おまけに気づきをくれるタイプだな」


「わかるだろ? “引き算で魅せる実況”ができるやつなんだよ」


 ぐっちは真っ直ぐに画面を見て言った。


「こいつとやれば、俺たちが持ってない“間の笑い”が絶対に生まれる」



 4. 初の4人収録


 テスト配信を非公開で録った。

 羊は最初、緊張してあまり喋らなかった。けれど、3人はその空気を崩さなかった。


 セイが煽って、ぐっちが笑って、Renが整えて——

 そこに羊が、静かに切り返す。


「え? 今の、俺のせいじゃないですよね……?」


「いやいやいや、それはダメでしょ。それ、地獄への片道切符っすよ」


 笑いが起きた。

 画面が明るくなった。

 そして、何より「これで完成した」と誰もが思った。



 5. GG4という名前


「名前、どうする?」


 そんな話になったとき、セイがポンと言った。


「もうこれでよくない? Game Geek 4。ゲームオタク4人組」

「中身は個性バラバラだけど、全員“好き”で繋がってんだから」


「いいな。奇をてらわず、正直な感じ」

 深く頷くRen。


「覚えやすいし、俺らのこと、伝わるな」

 ぐっちはいつものように柔らかく笑う。


「俺も好きです。なんか、俺たちらしい感じがして」

 羊はちょっとまだ緊張して。でもその目は期待に満ちていた。


 これが、GG4誕生の瞬間だった。


 


【GG4結成秘話:それぞれの視点から】


⚫️Side;Ren


 初めてセイと組んだ時、「ああ、これは回るな」と思った。

 うるさいのに鬱陶しくない。テンポがいい。何より、俺が喋らなくても場が持つ。貴重だった。


 しばらくして、ぐっちさんの存在を知った。

 雑談で引き出す力がすごい。“人として安心させる空気”を実況中に持てる人なんて、そういない。

 セイとのバランスも悪くない。もう、3人で固定でやれるなと思った。


 でも、そこに最後のピースがはまったのは、ぐっちさんが紹介した若手——“羊”の配信を見たときだった。


 画面越しの静かな声。沈黙を怖がらず、でも置いてけぼりにしない間。

 彼が喋らない間も、“画面の向こうでちゃんと感情が動いてる”のが伝わってきた。


 ああ、この子が入れば“音のグループ”になる。


 そう思って、「やろうか」と言った。

 きっと、誰よりも先にこの4人の完成形を見ていたのは自分だと思ってる。



⚫️Side;セイ


 うっわ!ってなったのが最初。

 Renさんとたまたま組んだイベントで、「あれ? なんでこの人、俺のボケに全部返せるの?!」って焦った。


 静かだけど、俺が喋ると、絶対に“拾いどころ”を逃さない人。

 あ、この人と組んだら、自分が活きるってすぐわかった。


 ぐっちさんが来た時は、「絶対おもろい人だ!」って直感した。

 配信でも裏でも、全然テンション変わんないの。本物の“安心”って感じ。

 この3人でやれたら絶対強いなって確信はしていた。けど、正直“画的に地味かな”とは思ってた。


 そこに、ぐっちさんが言い出したのよ。「おもしろいやつがいる」って。


 最初、羊くんの配信見た時は「なんか静かだなー」って思った。けど、5分後にはそれが心地よくなってた。


「こいつ、空気で落とすタイプのボケだ」ってすぐにわかった。

 それに、俺がワチャワチャやってるとちょっと笑って突っ込むんだよ。

 それがツボすぎて、「あー、こいつ以外考えられねぇな」ってなってた。


 バランス取れたグループなんて面白くねぇ。でも、あいつが入った瞬間、絶妙になった。

 そういう意味で、羊くんは“ギリギリの絶妙”を作る才能、あると思う。



⚫️Side;ぐっち


 あの2人、Renとセイは、正直すごい。

 片や分析と安定、片やテンションと空気の読解。

 実況歴も長くて、十分な実績もあるのに、日々パワーアップしていく。年齢とか関係なく、既に「完成してる」って思った。


 でも、完成された二人をつなぐには、“中間”じゃなくて“別軸”が必要だった。

 俺が入った時点で、空気はだいぶ和らいだけど……足りなかったのは、“余白”。


 それで思い出したのが、羊くん。

 実況歴は浅かったけど、声と空気だけで人を黙らせる力があった。


 最初に見た時から思ってた。


「この子、もしも誰かと組んだら、“静けさ”が武器になる」って。たぶん“間”を最大限に活かせるんじゃないかって。


 結果は思った通り――いや、思ってた以上だった。


 あの日、テストで4人集まった瞬間、「これでいける」って本気で思ったんだ。

 俺の役目は、バランスを取ること。

 そのために、一番信頼できる空気を持ってるやつを、最後に呼んだ。それだけだよ。



⚫️Side;羊


 最初、ぐっちさんに声かけられたとき、正直「なんで自分が?」って思った。

 あの頃はまだ、再生数も少なかったし、配信もうまく喋れてなかったし。


 でも、「声いいし、実況おもしろいよ」って言ってくれて。

「一緒にやろうぜ!」って誘われて――。


 Renさんは静かで、でも一言で空気を締める人。

 セイはずっと喋ってて、でもそれが不思議と心地よくて。

 ぐっちさんは、一緒にいるだけで緊張を和らげてくれる人。


 初めての4人配信。

 最初は何も喋れなかった。でも、3人が“無理に喋らせようとしない”空気を作ってくれた。


 そして、気づいたら自然に言葉が出てた。


 「……今の、めっちゃ怖かったですね(笑)」


 そのとき、セイさんが「それな!」ってテンションを上げて

 Renさんが「おっ! 喋ったな」って笑ってくれて

 ぐっちさんが「ほら、言っただろ?」って目を細めて。


 ああ、ここなら、自分でも大丈夫だって思った。


 あのときの空気が、たぶん、GG4の“始まり”だったんだと思う。


 


 こうして、GG4は生まれた。

 個性も経験も年齢も違う。

 けれど、同じ方向に“楽しさ”を出せる4人が揃った瞬間だった。


ここまで読んでいただきありがとうございました。

この話をもって、月と羊 第2部〜その声を届けるために〜を完結とさせてもらいます。

智士と菜緒の恋、そしてGG4たちの絆を見守っていただいた皆様に感謝申し上げます。

よろしければ、評価、感想いただけると嬉しいです。

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