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番外編:爆弾天使とデートな1日

番外編その2。おしゃまな女の子、みのりちゃん登場!

「菜緒さん! 今日はどこ行くの?」


「そうだなぁ、ショッピングモールに行って、そのあとカフェでおやつにしようか?」


「やったぁ!」


 そう喜ぶのは、ぐっち、こと井口の娘、みのりちゃん、小学2年生。


 GG4の仕事と、井口の奥さんの仕事が被ってしまったため、ちょうど休みだった菜緒が預かることになったのだ。


 ショッピングモールでは小物屋さんでキラキラしたヘアゴムや文房具を一緒に選んで。ゲームセンターでプリクラ撮って、カフェでおやつタイム。


(みのりちゃん、ほんと、可愛いなぁ)


 ニコニコ笑っている顔はまるで天使のようで。菜緒もつられて笑顔になった。



 カフェではショートケーキを美味しそうに食べるみのりちゃん。ふと、問いかけてきた。


「菜緒さんはさぁ、ひつじおにいちゃんの彼女、なんだよね? どっちから告白したの?」 


 カフェラテを飲もうとした菜緒の手が止まる。


「えっ!えっと…智士くん……かな?」


 小2相手に赤くなるのもどうかと思うが、やはり気恥ずかしい。


「そっかぁ。ねぇ、菜緒さんはアピールってした?」


「え?アピー……ル?」


「うん。私ね、今、たっくんにアピール中なんだけど──」


「んっ!?」


「けんくんからもアピールされてるの。でも親友のさきちゃんがけんくんのこと好きでね。ちょっと複雑になってて」


「へっ!??」


 思わず変な声が出て、菜緒は目を白黒させた。


「でも、私が好きなのはたっくんなの。けんくんは……さきちゃんのこと、ちゃんと見てあげてほしいなって思ってる」


「えっと、小学2年生の話……だよね??」


 ふと、自分は小2時代どうだったか、と思い起こしてみたが、友だちと駆け回っていたりシール集めに夢中だったり、そんな記憶だけ。菜緒は今どき小学生の恐ろしさにちょっぴり背筋が寒くなった。



 夕方。迎えに来たのは、井口と、智士。


「ただいま~。菜緒さん、本当にありがとう~。お世話になりました」


「こちらこそ、とても楽しかったです」


「パパ~!これ見て~!」


 みのりちゃんがニコニコしながら、今日の戦利品のヘアゴムやプリクラを見せながら、報告をする。


 と、ふいに、智士の方を見上げてニッコリ笑って爆弾投下。


「ひつじおにいちゃんに、もし彼女ができなかったら、私が彼女になってあげようかなって思ってたんだよね。でも、菜緒さんならお似合いだな、って思った!」


「ん? 羊くんの彼女に……?」


 井口の目がすうっと細くなる。


「──ッ!?」


 智士が咳き込んだ。

 空気が凍りつく。


 みのりちゃんは更に続ける。


「菜緒さん、すっごくかわいいし優しいもん!」

「それにね、私にはたっくんがいるし!」


「たっくん……?」


 井口の表情が固まる。


 最後にとどめの一撃。


「あ、でもね、気をつけて、ひつじおにいちゃん。菜緒さんね、めっちゃモテるよ。今日私がトイレ行ってる間に1回、ゲームセンターでも1回、声かけられてるから」


「ふぅん……」


 智士の周りの空気が黒くなった。


 散々爆弾を投下して、満足そうに手を振るみのりちゃん。


「じゃあね~!菜緒さん!また遊ぼうね~」


 と井口の車に乗り込んだ。


「ば、ばいばい、みのりちゃん……!」




 帰りの車の中で、井口の表情を思い出し、智士は運転しながら、震えていた。


「俺、明日からしばらく、ぐっちさんの顔、まともに見れないかも……」


「ぷっ……」


 菜緒は思わず吹き出した。


「大丈夫だよ。みのりちゃん、ほんと素直なだけだから」


「うん、わかってるけど……さすがにあの爆弾は、心臓が……。さすがはぐっちさんの娘。笑顔で鬼畜プレイ……」


「ふふ。でも、いい子だったね。私も楽しかったよ」


 一緒に撮ったプリクラを眺めて菜緒は笑った。


 信号待ちのタイミング。

 智士がちらりと菜緒を見た。


「……今日はありがとう。菜緒さんが、俺の仲間や世界に当たり前のように馴染んでくれるのが、なんか嬉しいよ」


「……うん。私も、ここにいられて嬉しい」


(菜緒さんが隣で笑ってくれる。それだけで、俺の世界が今までよりずっと鮮やかになったように感じるんだ)


 智士は満たされた気持ちでハンドルを強く握り直した。



 その夜。智士の部屋にて。


「で、菜緒さん。みのりちゃんの言ってた『声かけられた』って件につきまして……詳しく」


「えっ、あれはただの……っきゃっ」


 膝の上に乗せられ、がっちりと腰を抱えられる。逃げ場なし。


「ちょ、ちょっと智士くん!?」


「菜緒さん、隙が多すぎて。こっちの方が……よっぽど心臓に悪いんです……」


 そう言って智士は、誰にも渡さない、と言うかのように、菜緒の柔らかな身体を抱きしめた。



 

【おまけ;羊、撃沈の日】


 本日のGG4収録は、チーム対戦型ゲーム。

 4人がそれぞれ別陣営に分かれ、敵として戦うという形式で、観る側としても盛り上がる名物企画だ。


 ……が、開始5分で、ある異変が起きていた。


「……待って!? ぐっちさん!? なんで俺だけ狙うんですか!?」


 羊こと、日辻智士の焦りに満ちた声が、マイクに響く。


「なんのことかな~? ……はい、隙あり。撃破~!」


「いやいやいや! 絶対おかしいでしょ!! なんで俺だけ!? 私情ですよね!? ぐっちさん、絶対、私情入ってますよね!?!?」


「あれ~? 俺の娘から“彼女になってもいい”って言われちゃった羊はどこかな~? あ、いたいた……ここだ~~~っ!」


「ほら、それ、私情ーーー! やめてぇええええ!! 俺その場にいただけ!! ノータッチ!! 完全ノータッチでしたから!!」


 画面上では、井口が、朗らかな笑い声とは全く想像もつかない、鬼のようなプレイングで羊を追い詰めていく。

 逃げようとしたら追撃、味方と連携しようとしたら妨害、リスポーンしたら即狙撃。


 四宮の爆笑がマイクを揺らす。


「ぐっちさん、やっば! 羊がマジで逃げられない」

「このゲームで一人だけ3回落とされるの見たの、初めてだわ~」

「めっちゃ盛り上がってるねー! ぐっちさんって普段ふわふわしてるのに、スイッチ入ると笑顔で鬼畜プレイしてくるんだよね。おー、怖ッ!」


 齊藤は頭を抱えながら、半笑い。


「これ……編集でどうまとめようか、真面目に悩むわ……」


 その間にも、ゲーム画面では「撃破:ぐっち▶羊」の文字が鮮やかに4回目を飾る。


「うわあああ!! またやられた!? 俺いつになったら遊べるのこのゲーム!!?」



 そんな嵐のような収録が終わった直後。

 智士はヘッドフォンを外しながら、深いため息をついた。


「……今日、俺……画面に映ってました?」


「バッチリ映ってたよ~、基本やられてるシーンでね~」


 まだケタケタ笑っている四宮。


「なにその屈辱的なハイライト……」


「大丈夫だよ羊くん。最後の悲鳴、切り抜きにしたらバズりそうだった」


 齊藤も笑う。


「嬉しくないわ!!」


 智士は心から叫んだ。

読んでいただき、ありがとうございました。

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