表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/34

俺たちが選んだもの(1)

「……ほんとにありがとう、みんな」


 言葉が喉の奥で震えた。


 齊藤さんが徹底的に資料を積み上げて反撃の種を作ってくれた。

 四宮が怒りとともに証言をかき集めて、横暴に立ち向かう、風を巻き起こしてくれた。

 そして井口さんがそれを追い風にしてくれた。視聴者に語りかけ、俺たちは守りたい人たちのために戦う、と示して。


 菜緒さんの覚悟に報いるために。GG4を守るために。


 四宮がにやっと笑って言った。


「何言ってんの。菜緒ちゃんとGG4のためだ、当然だろ?」


「全部取り戻そうぜ、俺たちの手で」と井口さんが肩を叩く。


「お前がお前でなきゃ、チームにならねぇよ」


 齊藤さんはいつもの冷静な表情で、でも確かな目で言った。

 そして一言、言い添える。


「準備は整えた。あとは……お前だな」


 その言葉に、胸が熱くなる。


 菜緒さんは、きっと公開実況に来てくれる。あの人なら、見届けに来てくれる。

 だから俺は、見つける。どれだけ観客がいようと、どれだけ距離があろうと。絶対に。


 気づけば、拳を重ねていた。羊、Ren、セイ、ぐっち——4人でGG4。

 これが俺たちの形だ。そしてそれは、これからも変わらない。



 公開実況の会場は、スタジアム。観客は満員御礼。心臓の鼓動のような音響。華やかなライトアップ。絶え間ない声援。舞台裏にいても熱気が伝わってくる。


 舞台袖には、Asteriaの幹部と娘。娘は相変わらず艶めかしい笑みを浮かべてこちらを見ている。幹部は花束を持ち、上機嫌。最後の花束贈呈で“スポンサー発表”を飾りたいらしい。

 まるで俺たちのステージを“自分たちの作品”にしようとしているような態度に、胸が冷える。


 ……でも、その通りにはならない。させない。



 ステージに立つと、歓声が一気に押し寄せた。


「GG4、待ってましたー!」

「Renさん、今日もカッコいいー!」「羊ー! キレッキレのツッコミ頼むぞー!」「セイくん、叫んでー!」「ぐっちさーん! 鬼畜プレイ、期待してる!」


 笑った。自然に、心から。

 今日はやれる。どこまでも、行ける。行ける気しかしなかった。


「よっしゃ、いくぞー!」とセイがマイクを持つ。



 実況が始まれば、空気は一変した。

 俺も、セイも、Renさんも、ぐっちさんも、迷いなんて一切なかった。

 ただ、ゲームの世界にのめり込み、笑って、はしゃいで、観客を巻き込んだ。


 セイがボケて叫ぶ、ぐっちさんが高笑いしながら猛突進する、Renさんは冷静にナビゲーションして流れを作る、そして俺は皆の呼吸を読んで確実にツッコミ、盛り上げる——全部がきれいに噛み合って、久しぶりに“全開のGG4”が戻ってきた。


「ちょっとRenさん、それ、俺のターゲット!! 横取り禁止!!」

「いやいや、お前が遅いだけだろ——そこだっ!」


「ねぇ、ぐっちさん、このルート、まさかの……」

「何言ってんの! 突っ走るしかないっしょ、羊くん! 今、いいとこなんだから! うわぁぁぁぁ!」


 熱狂の中、迷いなく声を出せた。

 ファンの笑顔が、仲間の声が、体にしっかりと火を灯してくれる。


 あの頃から俺たちは、何も変わってない。ただ、仲間とはしゃいで、笑って、この楽しさを観客に伝える。一緒に盛り上がる。

 

 今日も、声を届ける。

読んでいただき、ありがとうございました。

もしよろしければ、評価、感想いただけると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ