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手段など選ばない

 この騒動を起こした五人の冒険者たちは皆、地面に倒れ込んでいる。

 事切れているのが三人。

 残りの二人は辛うじて意識があるものの、先ほど負った傷が相当痛むらしく、ヒィヒィと泣きながら苦しんでいる。

 一人は腕を、もう一人は足を持っていかれている。

 冒険者として活動することは、もう無理だろう。

 ブラッドはジャムベリーにだけ回復魔法をかけ、残りの二人に関しては敢えて放置した。

 魔狼の母親や子供たちが受けた痛みを思えば、男たちの苦しみなど大したことはない。


「おい」


 ブラッドが呼びかけると、二人はビクッと肩を震わせた。


「今日の一件は、決して口外するな。もし、無駄口を叩こうものなら……」


 一応釘は刺しておく。


「口が裂けても話しません!! 誓います!!」


 半泣きになりながら、男たちが声を合わせて叫ぶ。

 とはいえ浅はかな男たちが軽々しく口にする誓いなど、ブラッドは露ほども信用していない。

 そもそも魔法を使ってしまった時点で、諦めはついていた。

 世界平和推進結社に見つかるのは、時間の問題だろう。

 世界平和推進結社には、魔力探知を専門とする優れた能力者がいるのだ。


(居場所が暴かれる可能性がわずかでもあるのなら、この街にはもう留まれないな)


 ブラッドは常に最悪を想定して動くようにしている。


「ジャムベリー、あとは任せた」

「あっ! ブラッドさん……!」


 何か言いたげなジャムベリーに後始末を頼んだブラッドは、静かにその場を立ち去った。


◇◇◇


「ただいま」


 できるだけ優しく響くように意識しながら、室内に向かって声をかける。

 当然返事はないが、彼女には届いているはずだ。

 ブラッドは、街の東側、低所得者向け集合住宅が乱立する地区に住んでいる。

 この地に移り住んだのは一年半前。

 治安は悪く、不衛生で、混沌とした界隈だが、悪いところばかりではない。

 その日暮らしの生活を送る自分と似たような人々でごった返している点と、高台の墓地に歩いて五分で行ける点を気に入っているのだ。

 部屋は狭く、単純な間取りをしている。

 入ってすぐが、ダイニングキッチン。

 その奥に寝室がひとつ。

 バストイレは、キッチンの向かいに位置している。

 当然家具は少なくて、チェストとテーブル、それにくたびれたソファがあるくらいだ。

 クッションのへこみは、ブラッドが毎日ここで寝ている事実を物語っていた。

 壁には子供の描いた絵が、何枚も貼りつけられている。

 子供の存在を主張する物は、部屋のあちこちにあった。

 数えきれないほどのぬいぐるみ、子供用の食器、鞄、靴、衣服。

 チェストの上には、以前画家に描いてもらった家族のスケッチが飾られている。

 微笑む女性と、彼女に抱き上げられた小さな女の子。

 二人に寄り添っているのは、二年前のブラッドだ。

 絵画の中のブラッドは、薄汚れた現在の姿からはかけ離れた身なりをしている。

 チェストの前で立ち止まったブラッドは、絵画に描かれた人々をしばらくの間じっと見つめていた。

 だからだろう。突如として、このスケッチを画家に依頼した日の記憶がブラッドを襲ったのは――。


◇◇◇


『きゃっきゃ! パッパー、みてみて!』


 心底楽しげな声を上げながら、娘フィアットがブラッドの周りを駆け回っている。

 家族のスケッチを描いてもらうという非日常的なイベントのせいで、娘は興奮しているようなのだ。

 そんな娘の様子を眺めるブラッドの顔色は、あまり芳しくない。

 まだ四歳になったばかりの娘の足取りは危なっかしく、冷や冷やとさせられるのだ。


『おい、ルクス。フィアットをあまり走らせないほうがいいんじゃ――』


 隣にいる妻ルクスにそう呼びかけたのだが、一足遅かった。


『わあっ!?』


 躓いたフィアットが、草の上にトテンと転がる。


『フィアット……!!』

『わっ……わああああっっ!!』


 血相を変えてブラッドが叫んだのと、転んだことに驚いたフィアットが泣き出したのは同じタイミングだった。


『ルクス、フィアットを抱き起してやってくれ……!!』


 焦りながら妻に訴えかける。

 一瞬、自ら駆けつけようと思ったが、万が一痛む場所に触れてしまったらと不安になり、行動に出られなかったのだ。

 ブラッドは娘フィアットを心底可愛がっていたが、だからこそ恐れてもいた。

 あまりにも大切な宝物過ぎて、触れ方を間違えたら壊してしまいそうな気がするのだ。

 ブラッドの不器用過ぎる愛情や、小さな娘のちょっとした転倒に慣れている妻は、苦笑しつつフィアットを抱き上げた。


『大丈夫、大丈夫。びっくりしちゃっただけよ。ね。ほら、落ち着いてごらん』

『ううっ……ひっくひっく』

『ほら、フィアット。あなたがそんなに悲しんでいると、お父さんまで泣き出しそうよ。あなたのお父さんは、とっても心配性ですねえ』


 おどけた口調でルクスが話しかけると、一瞬前までわんわん泣いていたフィアットも落ち着きを取り戻した。

 やっぱりルクスに任せてよかった。

 そう思いながらホッと胸を撫でおろしたところで、こちらに視線を向けたフィアットと目が合う。

 その瞬間、涙まみれのフィアットの顔にふにゃっとした笑みが浮かんだ。


『パッパ、だいじょーぶよー』


 大丈夫というルクスの口癖を真似して、心配でどうにかなりそうだったブラッドを励ましているらしい。

 そんなフィアットがあまりにも愛しくて、胸が切なくて、ブラッドは泣き笑いを返したのだった――。


◇◇◇


「……」


 ブラッドは躊躇いがちに手を伸ばすと、壊れ物を扱うような手つきで、スケッチに描かれた少女の姿をそっと撫でた。


「ただいま、フィアット」


 絵画の中の少女にも、しっかり挨拶をする。

 ブラッドは毎日この行動を繰り返しているが、日課だから続けているわけでは決してない。

 そうせずにはいられないから、そうしているのだ。

 重い息を吐き、写真の前を通りすぎると、そのまま寝室に繋がる扉の前へ向かう。

 ノックをして扉を開けると、ブラッドの前に、魔法で生成された文字が浮かび上がった。


『おかえりなさい。今日はどんな一日だった?』

「今日はそうだな……話さなきゃいけない問題が起きてしまった」


 ブラッドは答えながら、室内に入った。

 寝室には西向きの窓があり、その窓に沿うようにベッドが置かれている。

 ベッドに横たわっているのは、二十代後半の美しい女性だ。

 彼女はブラッドの最愛の妻、名をルクスという。

 ルクスの長い黒髪は枕に広がり、その繊細なウェーブが顔の周りに自然な枠を作っていた。

 ブラッドは体にかかったシーツを直してやりながら、穏やかな眼差しをルクスに注いだ。

 ネグリジェをまとったルクスの体がガリガリに痩せ細っている事実をブラッドは知っていたが、今はシーツが覆い隠してくれている。

 それでも病の影は、ルクスの体の様々なところに現れていた。

 ブラッドはそのすべてに気づかぬふりをしながら、ベッドの隣に置かれた椅子に腰を下ろした。


「俺の話より先に、ルクス、君はどうだった? 不自由はなかったか?」

『ありがとう。私はとっても元気!』


 またブラッドの前に、キラキラと光り輝く文字が現れる。

 きっとかつてのルクスだったら、このタイミングでいたずらっぽく微笑んだだろう。

 しかし今のルクスは、唇を微かに動かすだけしかできない。

 一年半前に起きたとある事故の後遺症で、ルクスは全身麻痺になってしまったのだ。

 どんな魔法を用いても、ルクスの体はもう元に戻らないのである。


『それで、ブラッド。あなたのほうは? あなた少し緊張しているみたい。何か問題が起きたの?』

「……ルクスはなんでもお見通しだな」


 ブラッドはやつれた顔に笑みを浮かべた。


「感情が顔に出やすい人間ではないはずなんだが」


 隠し事は得意なほうなのに、ルクスにはなぜだがまったく通用しない。

 でもブラッドはそれが不快ではなかった。

 世界で一人だけ、自分を簡単に理解してしまえる相手。

 そんな人が妻になってくれたなんて、未だに信じられない。


『ふふ。いつも言っているでしょ? あなたのことなら、なんでもわかっちゃうの。だからほら、何があったのか、隠さずに教えて』


 ルクスはそう望んだが、ブラッドはしっかりと言葉を選びながら、今日起きた事件について伝えた。

 冒険者の男たちが魔物の子供に対して行ったひどい行為についても、当然隠した。

 ルクスの耳には、できる限り世界の美しい部分だけを届けたいのだ。

 ルクスはもう人生の残酷さを、これでもかというぐらい味わったのだから……。

 とはいえ早急に引っ越さなければいけない事実だけは、さすがに隠しておけなかった。


「――そういうわけで、うっかり力を使ってしまったんだ。すまない。せっかく今の環境に慣れたところだったのに……」

『謝らないで。別の街に住むのも楽しみ。……あの子も一緒よね?』

「ああ、もちろんだ」


 ただできることなら、ルクスだけでも先に、安全な場所へと移動させてしまいたい。

 それを提案すると、ルクスは数秒間黙り込んだ。


『……あの子と一緒がいいわ。片時も離れたくはないの。わがままを言ってごめんなさい……』

「いや、いいんだ。そう思うのも当然だよ」


 ルクスの答えは予想がついていたし、彼女の意思を尊重してやりたかった。


「それじゃあ今からあの子を連れに行ってくるよ。俺が戻ったらすぐに旅立とう」

『これから? もう夜よ。明日にしたら?』


 ルクスはそう提案してくれたが、すでに世界平和推進結社の人間が動いている場合を想定しておいたほうがいいと思った。


「君は寝ていてくれ。明日の移動に備えて、体力を養っておかないとな」


 本当はそんな無理をルクスにさせたくはなかった。

 申し訳ない気持ちと、自分がとった選択への後悔が膨らむ。

 ブラッドのそんな想いに気づいたのか、ルクスはブラッドが謝罪の言葉を口にするより先に、魔法で文字を浮かび上がらせた。


『人助けをする優しいあなたを誇りに思うわ』

「ルクス……」

『本当はね……あなたには、元のような生活に戻ってほしいと思っているのよ。あなたの力があれば、たくさんの人を救えるでしょう?』


 ブラッドが世界平和推進結社在籍中に請け負っていた仕事については、組織内でもトップシークレット扱いで、家族にすら打ち明けてはいけないことになっていた。

 たしかに当時のブラッドは、平和のために戦い、腕を振るってはいたが、動機がなんであれば、実際にブラッドが請け負っていた仕事の内容は、英雄扱いされて敬われるようなものではなかったのだ。

 しかしブラッドが秘密を守ってきたため、ルクスも国中の人々同様、【ブラッディ・ハウンド】は平和のために尽くした英雄だと信じ込んでいる。

 ブラッドは長年それが苦しくてたまらなかった。

 とはいえルクスに真実を打ち明けようと迷ったことは一度もない。

 自分が背負っている罪の重荷を、家族だからという理由でルクスに共有するなんてありえなかった。

 だから今回もブラッドは、ルクスの誤解を訂正しなかったし、自分の本心を悟られぬよう、穏やかな微笑を浮かべたままでいた。


『ねえブラッド、今日のこと、いいきっかけだと思うの。遠い田舎町に引っ越せば、もっと自由に生きられるはず。あなたもまた冒険者として活躍できるわ』

「田舎町なんてだめだ。たしかに田舎なら世界平和推進結社の目も届かないはずだが、その手の町にあるのは時代遅れの小さな診療所だけだ。診療所なんかじゃ、君を安心して任せられない」

『でも、そもそも私は病院に通う必要なんてないじゃない? 現段階でできる治療はすべて終わっているし、体はもうこれ以上よくはならないのだから』


 そう言うルクスの瞳には、悲しみの色が一切見られない。

 彼女は自分の体について、皮肉を言っているわけではない。

 それに絶望しているわけでもない。

 落ち着いた状態で真実を述べているのだ。

 ルクスはブラッドよりよっぽど冷静に、自らに起こった現実を受け止めていた。


『わかってほしいの、ブラッド。私は無意味にあなたの自由を奪いたくない。私たちに対して罪悪感を持たないでほしいの。だってあれはあなたのせいじゃない』


 ルクスは繰り返しそう伝えてくれるが、愛する妻の言葉とはいえ、その主張だけはどうしても受け入れられなかった。

 ブラッドは、事故の日からずっと罪の意識を抱き続けている。

 当然の結果だし、そうあるべきだとも思っている。

 当たり前だ。

 守ると誓った。それなのにもかかわらず、約束をはたせなかったのだから。

 罪の重みを忘れるなんて許されるはずがない。

 ブラッドの表情に暗い影が落ちたのに気づいたのか、ルクスは強引に話題を戻した。


『仕事の話はひとまず置いておくとして、せめて身なりだけでも昔のようにしてほしいわ。無精髭やそのボサボサの髪、本当は気に入ってないんでしょう?』


 ルクスと結婚する前――、とくに二十代前半の頃のブラッドは、『洒落者でスマートな最強冒険者』として、若い女性たちの間できゃあきゃあと騒がれる存在だった。

 ブラッド自身、モテたいという願望を抱いた経験は一度もなかったが、身だしなみを整える行為自体は楽しんでいた。

 実際、当時は依頼請負で稼いだ報酬のうち、かなりの額を着飾るために使ったものだ。

 貧しい出自のブラッドは、富を持ち、身なりを飾り、人々から羨望の眼差しを向けられるような環境こそ、成功の証だと思い込んでいたのだ。

 しかしそんなこだわり、とうの昔に捨てた。

 今のブラッドは、家族を守ること以外に、何の関心も抱いていない。


「浮浪者みたいな恰好をしていれば、余計な詮索をされない。身元を隠すには、こういうスタイルが一番だ」

『あら、じゃあもし私が、「昔のあなたのほうが好き」って言ったらどうする?』

「へえ、そうなのか?」


 ルクスの瞳を覗き込めば、からかうような色を帯びていた。


『もちろん嘘よ』


 表情が変わらなくても、彼女の温かい想いと愛情を感じる。

 過去の事故を思い出し、沈んだ心が救われる。

 ルクスの思い遣りがとても尊くて、泣きたいような気持ちにさせられた。


「ごめん、ルクス。……ありがとう」


 ルクスの表情は変わらない。

 一点を見つめたまま、微動だにしない姿。

 それでもブラッドにはちゃんとわかった。

 心の中では微笑みかけてくれているのが。


「それじゃあ行ってくるよ」


 ブラッドは最愛の妻の額に口づけを落としてから、寝室を出た。

 長い夜になりそうだ。


◇◇◇


 墓場の管理権限を持つドルク司祭は、ブラッドとルクスの暮らす居住区から、緩やかな坂を上った先に住んでいる。

 坂を進むとまず見えるのが、教会とその隣に広がる墓地だ。

 ブラッドは、夜風に吹かれながら石畳を進み、教会の裏手に回った。

 不意に緑に囲まれた屋敷が姿を現す。

 あれがドルク司祭の住居だ。

 訪ねていくと、ドルク司祭はちょうど晩餐の最中だった。


「君はたしかブラッド・レスターだったか。こんな時間に突然訪ねて来るとは、さすがに不躾が過ぎんかね。まったく……。聖職者は年中無休と思っている輩が、世の中には多すぎる」


 ドルク司祭の肩越しに見えるダイニングテーブルには、豪華な料理がずらりと並んでいる。

 一羽丸ごと使った鳥の照り焼きに赤ワイン、数種類のチーズと内臓のパテ、柔らかそうな白パンと盛りだくさんのフルーツ。

 独り者のドルク司祭にとって、明らかに贅沢すぎる食卓だ。

 美食家を気取り、暴食にうつつを抜かしてきたせいで、ドルク司祭はでっぷりと太った肉付きのいい体型をしている。

 堕落した聖職者に対し、ブラッドは嫌悪感を覚えた。

 それでも微かに眉を潜めるだけにしておいた。

 こんな男でも、力を借りなければいけない相手なのだ。

 敵意を剥き出しにして、接するのはまずい。


「食事中に申し訳ない。急用だったもので」

「なんだ、死人でも出たかね? だとしても焦る理由にはならんが。なんせ死者にはたっぷりと時間があるからな」


 ドルク司祭は気の利いた冗談でも言ったような態度で、満足げに微笑んだ。

 ブラッドは笑い返すことはせず、要件を伝えた。


「街を出て行くと決めたため、裏の墓地に埋葬してある娘の棺を掘り起こしたい。許可をもらえるだろうか?」

「掘り起こすって、まさか君が自ら?」

「ああ。急いでいるんだ。墓堀人を雇っている時間はない」

「ふむ。何かわけありのようだ。まあ、事情などどうでもいいが。肝心なのは金だ。五十万ゴールド、我が教会に献金してもらおう」


 ドルク司祭はしれっとした顔で、法外な金額を要求してきた。

 五十万といえば、日雇いの賃金で三ヶ月分だ。

 葬式をあげるのだって、通常はその半分で済む。


「さすがにこちらの足元を見すぎじゃないか?」

「ふん。金が用意できなければそれまでだ」

 ドルク司祭はあくまで強気だ。


 大金を手に入れたいという気持ちもあるのだろうが、無理難題を押し付けて困らせることを楽しんでいる節も見受けられた。


(下衆め)


 ブラッドはうんざりしながら、心の中で罵った。

 かつて――第一線で活躍していた頃のブラッドなら、そのくらいの金など簡単に支払えたが、当時の蓄えはすべて妻の治療費に注いだ。

 現在のブラッドには、僅かな金しか残ってない。


(ドルク司祭など無視して、勝手に掘り起こすか?)


 そんな考えがチラッと過ぎるものの、ブラッドと違い、妻のルクスは信心深い。

 ルクスにとって、ドルク司祭の許可と神の祝福が伴わない遺体の移動は、墓荒らしと変わらないはずだ。

 ルクスの気持ちを優先し、ブラッドは折れることにした。


「支払いに関しては、了承した。ただし後払いにさせてくれないか?」

「ははは、冗談はやめてくれ。神の世界に借金などという文化は存在しないのだ。支払う金がないのなら、私は食事に戻らせてもらうよ」


 ドルク司祭が扉を閉めようとする。

 このまま追い払われるわけにはいかない。

 扉の隙間に靴先をねじ込んだブラッドは、ドルク司祭の行動を阻んだ。


「おい、君……ぐおぅっ!?」


 文句を言おうとしたドルク司祭の胸倉を掴むと、勢いよく壁に押しつける。


「本当にどこまでも腐った野郎だな」


 低い声で囁きかけながら、腕でドルク司祭の気道を押さえつける。

 突然、残忍な本性を現したブラッドの前で、ドルク司祭は赤子も同然だった。


「んぐぅぅぅぅっっ!!」


 呼吸ができなくなったドルク司祭は、顔を真っ赤にさせてもがいている。


「少し待っていろ。すぐ用立ててやる」

「ふぐううううっっ!!」

「わかったか?」

「ふぐっふぐっ!!」


 ドルク司祭が苦しそうな顔で必死に頷く。

 それを確認したブラッドは、ドルク司祭を乱暴に解放した。

 そしてその足で、夜の街の暗部を目指した。

 即座に五十万ゴールドを稼ぐのなら、手段など選んでいられない。

本日、まだまだ更新します。

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