1-06食べずに放っていられない
「スライムを養殖する、スライムスレイヤーって何者だろう」
「それはとっても変わっているわね」
「あかり姉さん、冗談じゃなくスライムの絶滅の危機でした」
「うんうん、シエルくんのおかげでね」
「うっ!? だから今は責任をもってあちこちで繁殖させてます」
「森の生態系さえ崩れなければ、セーメイオン様はもう怒らないはずよ」
あかり姉さんの言葉に思い出してしまった、しばらくぶりに母さんに呼び出されたと思ったら、森のスライムが最近少なくなって困ると言われたのだ。ドラゴンは縄張りのことには敏感だ、そして他のドラゴンがそれを壊そうとしたなら、その時はお互いに全力で戦うのも辞さないのだ。俺はちょっと歯の奥までガタガタ震えつつ、なにかをちびりそうになりながら、善処しますとだけ言って母さんの前から逃げた。
「なぁ、あかり姉さん。母さんって俺が嫌いなのかな?」
「私はそんなふうに感じたことは無いけど、そうね強いて言うのなら心配で堪らないみたい」
「心配されてるのかな、無事に成人してここを出ていけるように?」
「シエルくん、ここを出ていっても偶には帰ってきてね」
「もちろんだよ、あかり姉さん!! 俺はあかり姉さんのこと、絶対に忘れないよ!!」
「あらあら、そう言って貰えると嬉しいわね」
そんなふうに成人前の貴重な残りの時間をあかり姉さんと過ごしつつ、俺は自分が縛りプレイとやらで強くなっているのかも確認していたのだ。スライムは問題なくもう倒せるようになった、次はデビルパットだろうか、要はコウモリの魔物で血を吸うやつがいたり、毒を持つ奴がいたりするのが厄介だ。俺の相棒である木片がうなりをあげる、そうして一匹のデビルバットがこの世から消えた。
「『風刃』」
俺は魔法での攻撃も試してみた、最初は難しかったがそのうちにかなりの確率で、きちんと魔法を当てられるようになっていった。あかり姉さんが言っていたことが分かるような気がした、毎日ほんのちょっとずつだが俺の体が強くなっているようなのだ。昨日できなかったことが今日はできる、そんなことを繰り返す毎日になった。
「うどわひゃああああぁぁぁ!!」
でも良い日があれば悪い日もある、デビルプレイマンティスという魔物、そいつに追いかけまわされた時は死ぬかと思った。それでも俺の体はドラゴンには戻らなかった、これはあかり姉さんとの約束だけじゃなくて、無意識に俺がドラゴンとして生きていきたくないと思っているのだ。そう感じることがあった、俺には母のようなドラゴンとしての圧倒的な強い力が無いのだ。
あっ、ちなみにデビルプレイマンティスというのは、あかり姉さんに言わせるとただのでっかいカマキリだ、ということであるが俺にとって脅威なのは変わらないのだ。なにせあっちには翅があるから、飛んでくることもあるので厄介なのだ。デビルと名がつく魔物は元々は普通の動植物なのだが、魔の森の特有の魔素に汚染されて魔物に変わっていってしまうのだ。
「カマキリなんて、『風刃』でちょちょいと両手を落とせばいいのよ」
「あかり姉さん、それができるのは極一部の人間と魔物かドラゴンだと思うなー」
「まぁ、確かに虫系は嫌よね。私もデビルコックローチには絶対に近づかないわ」
「あの平べったい黒い虫、あいつも素早いもんね」
「いいえ、生理的に受け付けないのよ。あれと戦うくらいだったら、別の森にドラゴン退治に行くわ」
「その虫以下なのドラゴンって!?」
あかり姉さんは笑ってそんなことを言っていたが、だけどよく見ると目が笑っていなかった。確かに俺もあの平べったい黒い虫は素早いから嫌いだが、ドラゴン退治という危険を冒すほどでははずだ。女性特有の考え方というものだろうか、それともドラゴンと人間という種の違いからであろうか、ドラゴンでも人でも苦手なものはあるものなのだと思った。
「デビルバッドも楽に倒せるようになったし、次はデビルラットかな。あいつら巣穴の中にいるから狩りにくいつーの」
それからも小動物系の魔物を俺は狩りまくった、母さんから脅され……注意されたので狩りつくすような馬鹿な真似はしなかった。その過程でどんどん魔法を覚えていった、『衝撃』、『氷撃』、『障壁』、『浄化』、『治癒』などなどいっぱい覚えた。というよりもこんなことも知らないで、よく分からない人間の世界で生きていこうと思っていた、俺ってなんて馬鹿だったんだと少しばかり落ち込んだ。
「兎肉は美味しくて良いわね」
「沢山あるから遠慮しないで、あかり姉さん」
「ん~、シエルくんのおかげね。最近は食卓が賑やかだわ」
「俺も美味いものが食えて嬉しい、あかり姉さんはやっぱり凄いな」
「そういえば料理についても、きちんと教えておかなきゃね」
「はい?」
デビルラビットあたりを狩りだしたら肉を持って帰るようになった、『解毒』さえ使えれば人間のあかり姉さんでも魔物の肉を食べれるのだ。そうしてせっせと肉を持ち込むようになったら、以前から料理の手伝いくらいはしていたが、更に詳しい料理方法を教えて貰えた。あかり姉さんは別の世界からきただけあって、俺の全然知らない料理も多く知っていた。
俺は花嫁修業じゃないかと思いながら、それとも料理人として生きろということかと悩みながら、いろんな料理をあかり姉さんに教えて貰った。本当にあかり姉さんの料理は美味しくて、俺は毎日のように食べにいっていた。そしてしれっとした顔で母さんもあかり姉さんの食卓に毎日来ていた、料理をぺろりと綺麗に食べてしまい美味しいとだけ言って帰っていくことが何度もあった。
「母さんも忙しいだろうに、食いしん坊だなぁ」
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