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タックル無双  作者: 中村繭
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一章第二話魔法と砂術師

 何かが顔に触れているのを感じて目を覚ます。

 目を開けると桃色の髪と綺麗な目が視界いっぱいに広がった。

 目が合い固まること数秒。

 「うお!何だ!」

 「きゃ!」

 桃色髪の女は、飛び上がり後ずさる。

 「生きてる...?」

 首を縦に振る。

 「よかった...」

 桃色髪の女は、両の目いっぱいに涙を溜めている。

 「私を助けてそのせいで目を覚まさなくなったらどうしようって...」

 溜めていた涙を溢し泣いている。

 泣かれるほど感謝されてるってことでいいのかな...?

 「生きててくれてよかった...」

 そりゃ自分を守って人が死んだら嫌だよなあ、辛いよなあ、体験したことはないがしたいとは絶対思わないよ。

 「俺も生きててよかったよ」

 「本当に...」

 数秒の沈黙があり、その間に桃色髪の女は涙を拭いて話し出す。

 「私ココロと言います」

 「お、俺は成だ、小岩井成」

 畏まって挨拶少し緊張する。

 「ナルさんですか...」

 沈黙が訪れた、気まずい...

 「あの、失礼かもしれないけど、あなたは何者なんですか?」

 「え、あの、ラグビー部です」

 しまった!変な回答をした!

 「ラグビーブ?聞いたことがない」

 よかった!聞いたことないみたいだ!

 にしても...何なんだろう、この砂の世界といい、さっきの妙な男達といい、目の前のココロという女の子といい、何もかも先刻までの学校とは違う、まるで異世界に迷い込んだみたいだ...

 辺りを見渡しココロの姿を見てみると、服装が全く持ってありきたりなものではない、見たことないファッションをしている。

 さっきの男達も妙な格好をしていたような気もする。

 さっきの痛みで記憶が曖昧だけど、確かそうだったような気がする、多分。

 「あの、さっき私、あなたに魔法をかけたんですけど」

 魔法!?今魔法って言った!?そんなものかけられたの!?いやでもわからないぞ現実に魔法なんてない、いや信じる心が魔法とかそう言うことはあると思ってる、強い気持ちや思い込みが何かを凌駕することはあるが、魔法のようなものと魔法そのものはきっと別だ。

 「魔法って...?」

 「魔法を知らないんですか?そんな人いるんですね...」

 馬鹿にされてる...?

 「知らないけど...」

 この際だ、わからないこと全部聞いた方がいいかもしれないな...

 「あの俺、うーんと、その、さっきの衝撃で、記憶が喪失してしまったようで...できるだけ詳しく教えてくれないか?」

 「それは大変です!わたしのせいで...」

 ココロは涙ぐんで俯いてしまう。

 「ああ!!きっと詳しく聞けたらすぐ記憶が戻ると思うから!!うん!!大丈夫になる気がする!!」

 「ほんとですか...?じゃあ教えますね、魔法の説明の前にまず砂術師(さじゅつし)の説明からします」

 「砂術師?」

 「砂術師というのはですね砂術を使う人たちのことをそう呼びます、私たちが立っているこの地は砂ですよね?この砂を使い、砂を原動力にして使う道具を用いて砂術を行使するのが砂術師です。これくらいのことは覚えていますか?」

 何だそれ、常識なのか?常識っぽいよなぁこの聞き方は、全くしらんけど少し知ってるふりした方がいいかな...?いやでも知ってるフリで気を遣ったのがバレた時の方が苦しいか...

 「全然わからない」

 ココロは驚いた顔をしてフリーズしてしまう。

 「あ、あの?」

 「す、すみません少々驚いてしまって、説明を続けますね、砂術というのは人々の生活にありふれてますよね?火を起こしたり、灯りを作ったり、物を凍らせたり、誰でも使えるものです。皆それで生活しています、おそらくあなたもそうでしょう」

 足元にある砂を掬い取る。

 どうやらここは自分の住んでた世界と別の世界らしい。

 この世界の住人は、この砂を電気みたいな動力に変えて生活してるってことか。

 「砂術師とは、その砂を動力とした道具、砂術具を研究し争いに用いるもの達のことです。」

 「あのー?砂術師はどういうことができるんだ?」

 「あなたは先ほど砂術師を目撃していますよ」

 じっと目を見つめられドキッとする、タックル一筋であまり女子に免疫がないのだ、勘弁してくれ。

 それにしても先ほどといえば...

 「さっきの男達か?何か使ってるようには見えなかったけど...?」

 「身につけた道具を念じて使ったんだと思いますよ、出なければあなたの攻撃であそこまで派手に吹っ飛んだのに、すぐ逃げ出せた理由が説明つかないです」

 それよりもどうしてあんなに吹っ飛んだのかの方が気になるが...

 「砂術師は砂術具を使って砂術を行使しますが、魔法は砂術とは別物です。ですが全く関係がないわけではないのです。それが私の狙われていた理由」

 視線はこちらを見ているが、どこか遠くを見ているようだった。

 「魔法は、どうして発現するのかどのように発現するのかの理屈は解明されていませんが、ごく稀に目覚める一種の超能力です。あるものは魔法の力で、一国を焼き滅ぼしたとも言われています。他には、どこまでも吸い込む闇によって殺戮の限りを尽くしたとか、一瞬で千を超える武器の山を作り出す魔法もあったとか。」

 ココロは自分の両の手を広げこちらに向ける。

 向けられた手は光を放った。

 「魔法は何か特異な超常現象を起こせる、そう言うものです。そして私の魔法は回復(ヒール)です」

 眩しく輝く姿が綺麗だと思った。

 「魔法を使えること砂術師に狙われる理由が繋がってこないけど...?」

 「魔法が使える者は魔法が発現した時、肉体に魔法の結晶ができます、その結晶を使えばその魔法使いと同じ魔法が使えるようになると言われているのです」

 魔法を使える人の体内にできる結晶を使えば魔法が使える、でも体内にできる結晶を使うってことは...

 「つまりさっきの男達砂術師は回復(ヒール)の魔法を狙ってココロさんを、その、殺そうとしていたってことか...?」

 「そうです、即座に傷を癒すことができるのはこの世界でも私だけでしょう...」

 両手を組み祈りを捧げるようなふうに見えるが、自分の力に悦に行っているだけのようだ。

 まあ、この世界で唯一の魔法それは狙われもするし、自分の世界の酔ってしまうのも分かるような気もする

 「そう、私の魔法は即座に傷も病も治してしまう完璧な魔法、のはずなんですが。あなたが気絶してる時に魔法をかけても全く目を覚ましませんでした」

 ん?それって言うと、俺は回復(ヒール)が効かないってこと!?それとも魔法自体が効かないのか?

 「とても困惑しています。誰でも立ち所全快に治してあげることができる自分の魔法が、効かないことがあるなんて...不思議ですね...?」

 「そうですね...?」

 とにかく何もわからないと言うことだけは2人ともとても理解した。

 この世界に来てまだ少しの時間しか経っていないが、おかしな事ばかりで目が回ってしまう。

 食事や寝床生活していく上で必要なものものを手に入れるには、この世界の常識を知っていかなければいけない。

 急に不安になってきた、ラグビーの服装一式のみでこんな世界に放り出されて生きていけるか不安だ。

 俯き少し手が震える。

 「あの、よかったらうちに来ますか?ご飯ご馳走します!」

 「ほんとですか!お言葉に甘えさせてください!」

 「はい!」



 2人は砂漠の中を歩き出す。

 道中たわいのない話をしながら、2〜30分ほど歩くと壁に囲われた街の入り口のようなものが見えてきた。

 「見えてきましたよここが私の家がある街、砂上都市フラモニです」


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