悪女に転生しましたが、旦那が原作と違って亭主関白で顔が怖いおじさん
私の夫は顔は傷だらけ。熊のように体が大きく体毛が濃い丸刈りの男だ。とても乙女小説のキャラクターには見えない。
「飯用意せい」「風呂炊け」「酒買ってこい」「肩揉め」「服着せろ」「靴下履かせんかい」「女は男に逆らうな」
私は生前大好きだった小説の悪女に転生したはずなのになんでこんな目に合ってるのかしら?
原作では私は使用人にバカにされ娘に嵌められて裏切り者として夫に追い出されて他国の優しい優しいイケメン王子に助けられ、夫の国を滅ぼすはずだっのに。
なんで私は言われた通りご飯を用意してちゃぶ台に並べてるの?
娘二人も仲良く食事を共にしている。
むちゃくちゃ広い王室でなんでちゃぶ台で食事してるの?私たち?
「お父ちゃんあのね?」
「お父ちゃん聞いてる!?」
「……おう。ちゃんと聞いてるわい」
二人の娘達もすっかり夫になついている。原作では家族仲は最悪だったのに。
「おう。酒もってこい」
「はい」
私が台所に向かうと以前は私をバカにしていた使用人達が『私がやります』『奥さまは休んでいてください』と気を使ってくれる。
『おどれら!わしの嫁になんちゅう口聞いてんじゃあ!』
夫にそう怒鳴られてから使用人たちが私をバカにすることはもうない。
「お注ぎします」
「おう」
原作が変わり、私の大大大好きな推しである他国のイケメン王子が私をさらいに来た時も夫は堂々としていた。
『あなたの奥さんはあなたに相応しくない。こちらに差し出してください』と王子が言った時の夫は怖かったなぁ。
『あっ?』
この一言とメンチで王子は恐怖で泡を吹いて倒れた。戦争になるぞと私達は慌てたが夫は相変わらずだった。
私に視線を移すと「おう酒買うてこい」と言った。
その後も深夜。私の部屋に忍び込んだ王子に『私についてきてくれ』と言われたがついていく気にはならなかった。原作なら王子が戦争を起こし最後に夫の首をはねるはずなんだけど。王子が夫に勝てる気がしないんだもの。
夜這いに気がついた夫は鬼のように怒った。
「次ぃ面見せたらおんどれの顔面にパチキ食らわせたんど!」
「……ひぇ」
パチキの意味は分からなかったけどそれ以来王子と会うことはなかった。
「……ごっさん。旨かった。おい。風呂や」
「はいはい。沸いてますよ」
「おう」
服を脱がすのも背中を流すのも寝巻きに着替えさすのも妻の私の仕事だから私もお風呂の準備しなきゃね。
「今日は私もお父ちゃんとお風呂はいるー」
「私も~」
「あ……あかん」
顔を真っ赤にして口元を隠す夫は可愛らしい。
「お母様ばかりずるいー」
「……お母さんはええんや」
『『えーーー』』
「布団しけ」
お風呂から上がるとドカっと座布団に座って煙草を吸いだした。乙女小説どころか現実世界でもこんな亭主関白今時いないと思う。
でもまぁ。いいかな。正直私は今幸せよ。だって私『決して家族は悪く言わず手を出さない』『家族の為なら命も惜しくない』この人を好きになってしまったんだもの。
ときめく様な展開もファンタジーも無さそうだけどこれも女のゴールよね。
私と夫の布団を二枚敷くと夫は煙草を消して咳払いをしてモゴモゴし出した。
「……今日は一枚でええ」
「あら?あらあらあら~?」
つまり『今夜は一緒に寝たい』という意味だ。
誘ってるのねーかわいいー。
普段は男らしいくせに!童貞の少年みたいねー。
「じゃああなたお脱がししますね」
「お……おう」
私が先に脱いで夫の浴衣を脱がし、ふんどしの紐もしゅるりとほどいた。
「じゃあ。寝ましょうか?」
「……おう」
もう一度言わせて。私は幸せよ。




