ショコラ国エルフェ村
エルフの里
今日のアンディーヴ一行はエルフェ村という村に向かう。エルフという種族の小妖精の里である森と隣接するこの村は、エルフとの交易によって成り立っている。他所の村から安く仕入れた作物などを、エルフの里でそれなりの値段やそれなりの物と交換する。そしてそれをまた他所の村に売って日銭を稼ぐ。安定している時はいいが、周りの村が不作の年はかなり綱渡りの商売になる。
今年はアンディーヴ一行が魔法や奇跡の力で各地を豊作にしたので、元々何もしなくても今年はなんとか税を払えるようになっていた。だがそれでも、アンディーヴ一行はエルフェ村に向かう。せっかくならば交易のお手伝いをして、もっと様々な物で交易を出来るようにして、エルフェ村の収益を増やして村の収支を安定させようと考えたのだ。
アンディーヴ一行はアンディーヴのポケットマネーから、首都カピタールで塩やスパイスなどの調味料を買い漁った。調味料というのはかなりの高値で取引されるものだが、ショコラ国は元々の物価が安いのでアンディーヴのポケットマネーにもほとんど負担なく買えた。これを使って交易を行い、それをエルフェ村の村長や村人達にも見てもらって交易の幅を広げてもらうのだ。
「調味料はエルフの里である森では取れないでしょうから、売れ行きは好調なはずです」
「そうだね。きっとエルフ達も喜ぶだろうし」
「ウィンウィンですね!」
「あとはどのくらい利益が出るかですね」
準備も出来たところでエルフェ村へ行く。エルフェ村はショコラ国の最南端にある。大陸の南側はほとんど魔族や精霊達の領地となっているため、エルフェ村は魔族や精霊達との領地の境界線となっている。エルフェ村から先は、エルフェ村の村長や村人達以外が足を踏み入れることはない。だが、今のところ領地争いなどの問題は発生していないらしい。
「皆様、エルフェ村へようこそ。今日はエルフェ村とエルフの里との交易をより豊かにしてくださるとお伺いしました。よろしくお願いします」
「よろしくお願いします」
村長と村人達がアンディーヴ一行に律儀に頭を下げる。アンディーヴ一行はそれを素直に受け取り今回の交易品である調味料を見せる。
「今回はこれを売ろうと思います」
「調味料!?かなり高いのでは…」
「今回は僕のポケットマネーから出します。これからは今回の交易で出た収益で買ってください」
「なんとありがたい…!」
村人達が沸き立つ。
「では早速エルフの里へ向かいましょう」
そういうと村長と村人達の何割かが武具で武装する。そしてアンディーヴ一行と共に魔獣も住む森へ足を踏み入れる。
するとしばらく進んでから熊の魔獣と出会ってしまった。村人達もさすがに熊の魔獣には気後れしてしまう。だが、ジェラールが槍を構えて飛び出した。熊も健闘したものの、ジェラールの槍捌きには敵わず瞬殺される。村人達はジェラールの強さに驚き目を見張る。交易品に熊の魔獣が追加された。
エルフの里に辿り着くアンディーヴ一行とエルフェ村の一行。エルフの子供達がすぐに気付いて集まって来た。
「ようやく着きましたね」
「ここがエルフの里ですか!素敵なところですね!」
「エルフってやっぱりすごいね。あんな魔獣がうじゃうじゃ居るところにこんな里を作れちゃうんだ」
「先の戦争にエルフが加勢していたら勝敗は違ったかもしれませんね…」
「そうですね…我が国は運が良かったらしい」
「エルフェのお爺ちゃん!今日もお芋を持って来てくれたの?」
「エルフェのお爺ちゃん、こっちはエルフの木の皮用意してあるよ!」
「エルフの蜂蜜もあるよ!」
「エルフェのお爺ちゃん、この人達誰ー?」
「新しい交易品を持って来てくれた人達だよ。挨拶してくれるかな?」
エルフェ村の村長がそう言うと、エルフの子供達は綺麗に整列して元気に挨拶をする。
「エルフのシータです!新しい交易品?をありがとうございます!」
「エルフのオルガです!エルフェのお爺ちゃんの知り合いなら大歓迎だよ!」
「エルフのルカです!エルフの里にようこそ!」
「エルフのアルタイルです!新しいものってなぁに?」
アルタイルと名乗った子供が目を爛々と輝かせる。アンディーヴはアルタイルの頭を撫でて説明してやる。
「調味料、というものを持って来ました」
「調味料ー?」
「なあに、それー?」
「お料理に味を付けるものですよ。試しに舐めてごらんなさい」
アンディーヴが子供達に少しだけ調味料を差し出す。
「…!しょっぱーい!」
「こっちはからーい!」
「こっちは甘ーい!」
「こっちはすっぱーい!」
エルフの子供達が沸き立つ。エルフェ村の村長や村人達は微笑ましげに見守る。
「これを買ってくれたら、君達の食事がもっと豊かになるよ」
「豊かになるー?」
「もっと美味しい物が食べられるのです」
「やったー!」
「美味しい物だってー!」
「嬉しいねー!」
「そしたらたくさん食べよー!」
子供達が無邪気に笑う。それに皆が癒される中で、エルフの老婆がこちらに向かって来た。エルフェ村の村長がエルフの族長であることを教えてくれた。
「エルフェの村長殿。今日は何を持って来てくださった。…ん、新しい村人か?それにしては身なりがいいようだが」
「ごきげんよう。プリエール皇国の第二皇子、アンディーヴ・プリエールと申します。調味料、というものとエルフの里の特産品の交易を勧めるために参りました」
「ああ、どこぞの大国の主か」
「主ではありませんが、その息子であることは間違いありません」
「そうか。…うん、ならば今回エルフェ村はプリエール皇国とやらの橋渡し役か?」
「いえ、僕らがエルフェ村とエルフの里との橋渡し役です。この調味料というもの、便利ですが価格が高いので、橋渡し役が居ないと交渉が上手くいかない可能性がありまして」
「なるほど…見せてもらおう」
「どうぞ」
アンディーヴは調味料をエルフの族長に渡す。
「これはどう使う」
「料理の味付けに使います。試しに舐めてみてください」
「ふむ…うん、甘い。これはいい。…こちらはしょっぱいな、いい、いい。これは…酸っぱいな?使いようによっては良さそうだ。…ん、これは辛いな。ふむふむ、なるほど…ふーむ、これは高いだろう」
「ええ、とても」
「だが、喉から手が出るほど欲しいな」
「ええ、そうでしょう」
交渉が開始された。
「さて、では、なにとどれくらい交換しようか」
エルフの族長の眼光は鋭い。が、それに屈するアンディーヴではない。
「エルフの木の皮、エルフの蜂蜜を有りっ丈」
「ほう」
「さらに魔獣の肉と毛皮、この辺でしか取れない木の実もあればそれも。あと、この辺で取れるハーピーの羽も有りっ丈」
「随分と念入りに調べたな?」
「ええ。ですがこれでも良心的な価格設定ですよ」
「ふむぅ…」
「これだけの量の調味料があればしばらくは持ちます。次にまた調味料をエルフェ村の人達が売りに来る頃にはまたこの里の特産品も貯まっている頃でしょう。作物との交易は金でも出来ますし、この森には…錬金術師のエルフがいるのでしょう?」
族長の眼光は更に鋭くなる。
「そこまで知っていたのか」
「ええ」
「だから金ではなく特産品での取引か」
「そうですよ」
「…ええい、わかった!買ってやる!お前達、販売用の特産品を有りっ丈持ってこい!私達が使う分まではさすがに要求されまい?」
「もちろんです」
ということで大荷物を持ってエルフェ村へ帰るアンディーヴ一行とエルフェ村の一行。今回の交易でとりあえず取引価格も決まったため次からは村人達だけでもさくっと交換出来るだろう。後は無事に持ち帰って売るだけだ。
一度エルフェ村に戻り成果を他の村人達へ方向。そしてそのまま村人達と共に首都カピタールへ向かう。カピタールに着くとすぐに商人にエルフの里の特産品を売りつける。
金貨がドバドバと袋に詰められ渡される。かなりの高額になる。
「こ、こんなに大金…」
「すごい、すごいぞ…」
「こんなに儲かるなんて流石に初めてだ…」
「元手の三十倍は儲けましたね」
「さすがに調味料の元手分は返させてください、第二皇子殿下」
「村長。いいんですか?」
「ええ、これからもエルフの里との交易で幾らでも取り戻せますから」
「わかりました。受け取りましょう。ありがとうございます」
「それにしても、これでまたかなりの調味料を買えて、それをまた売れる…ぼろ儲けですな」
「ええ。これからも上手くやってくださいね」
「ありがたや、ありがたや…」
「エルフにとっても損、ということはありませんし、まあウィンウィンと言えるでしょう。よかったよかった」
アンディーヴ一行とエルフェ村の一行は金貨を大切に仕舞いエルフェ村へと戻った。
「というわけですので、これからは定期的に調味料の交易も行いましょう。エルフェ村とエルフの里の相互の利益のため、よろしくお願いしますね」
村人達はその成果に沸き立つ。これなら村興しも成功するだろう。
…その後、エルフェはアンディーヴ一行が国に帰る頃には大都市として発展するのであった。
肌の褐色な珍しいエルフさん達です




