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主戦力が僕だけの勇者パーティ、しんどすぎる話

作者: 三須美ソウ


僕で32人目の勇者となるらしい。


世界を救うための旅に出よと、なんか知らないけど王様に命じられた。

事情をあれこれ説明されたけどすんなりと飲み込めない。だって僕はついさっきまで愛犬の散歩に出ていてトイレを探していたはずだったのだ。

それが世界を助けてくれって、なんだ??こんな世界僕知らないんですけど???

ビックリしすぎたせいか尿意もどっかいっちゃった。

呆然としている間に話が進んでいて、武器と冒険服を渡される。

『僕家に帰れないんですか!??』

背中を押さえてさぁ行けすぐ行けと外へ出されそうになって慌てて尋ねた。

呼び出したはいいが、元の世界に帰る方法は分からないなんて無責任なことを言われた。

そんなバカなとあっけにとられている間にも押されて気づけばお城の扉だった。

振り返ると、お城の人たちはなんだか申し訳ないような疲れたような顔をして僕に頭を下げていた。

そして、驚きの連続も連続だったというのに、追い打ちのような言葉をもらった。


僕で32人目の勇者であるらしい。


そんなバカな……

この短時間でどれだけこの言葉を呟いたことか。

夢だったりしないかな。

バタリと大きな音をたてて重厚なお城の扉が閉められた。

片手に武器、片手に冒険服を持って僕は途方に暮れた。



***************



僕にとってはいつもと変わらない休日だった。

強いて言えばいつもは出てこない冒険心がむくっと顔を出してきて、日課の愛犬の散歩に出ていた僕はいつもの散歩コースを外して初めて通る道を選んだのだ。

なんだか無性に楽しくなってきてずんずんと知らない道を進んでしまったのがまずかった。

急に催してきてしまった。だがしかし僕の現在地は住宅街。コンビニなんてなかった。

行けない状況となると、なおさらせき立てられてしまうというもの。ピンチだ。

歩行スピードが徐々に上がって、しまいには走り出していた。愛犬は嬉しいのか尻尾を振って同じ速度で走ってくれている。遊んでるんじゃないんだぞ、僕はとても切羽詰まっている。

住宅街を抜けると公園を見つけた。人影もなく、遊具も1つぽつんとあるだけ。

幸運だったのが、こんな小さい公園でもトイレがあったのだ。小さな公園だ、あまり清掃も行き届いてないかもしれないが贅沢は言えない。

流行る気持ちをぎりぎり抑えてリードを傍にある木にくくりつけ男女兼用のそこにダッシュ。

飛び込んだらそこにあったのは便器じゃなくて見知らぬ景色だった。

ゲームやアニメで見るような、魔法とか騎士とかが存在するヨーロッパっぽいお城の一室のような部屋だった。

僕はトイレに入ったはずだったんだ、わけが分からない。足早に現状を説明され、わけが分からないうちにお城から追い出されてしまったというわけだ。

どういうわけなんだろう、僕が聞きたい。


とにかく住んでいるところとは違う世界に飛んできてしまったらしい僕は世界を救う旅に出なければいけないことは確かのようだ。

そうじゃないと少なくても僕に帰る道はないみたいだし。

それにしたって僕が32人目って……どういうことなんだろう。

それまでの31人はどうしたんだ……あまり考えたくないけど……死んじゃった……とか?


…………元気がなくなりそうだからそれ以上は考えないでおこう。


ええっとなんだっけ……宿屋に僕と共に旅をしてくれる人たちがいるらしい。

なにもかも分からないからとりあえずその人たちに頼らせてもらおう。



***************



宿屋についた。

僕に着いてきてくれるという人たちと合流できた。

見る人みんな勿論初対面だけど、一緒に旅をしてくれる人がいるってだけでなんだか少しほっとする。

そうと決まれば、早速合流メンバーを紹介しよう。


そのイチ!10歳くらいのロリッ子!得意技は応急手当!旅になんて出て大丈夫なのかな?

そのニ!僕と同い年くらいの女性のような男性のような人!得意技は異常状態回復!妖しい占い師っぽく見えるけど本当に一緒に旅に出てくれるの?

そのサン!歳も性別もよく分からない!優に2メートルは上回る巨体!得意技は蘇生術!鍛え抜かれた肉体は見せかけなの?


このパーティ大丈夫?

主戦力、僕だけになりそうだけど大丈夫??


―――まぁ、大丈夫じゃなかったよね。



***************



そもそもが僕たちをとりまく状況はとても悪かった。

お城があるこのエリアから一歩出ると魔の空気漂う悪しき空間だった。

それもそのはずだ。真ん前に近いほどに禍々しいオーラの建物があるんだから。

本来はもっとこちら側の支配エリアは広かったそうだ。

侵略される前に異世界の戦士に解決してもらいたかったそうだがそれが叶わず、徐々に侵略を許してしまい今や目の前に迫っている。

この城が墜ちればまた大きく後退してしまう瀬戸際だそうだ。

そんなギリギリに呼ばれた僕。僕で大丈夫なの!??

魔の空気にすっかり腰が引けてしまったんだけど。気持ちですっかり負けてるんだけど。

いやでも僕には助けてくれる人がいるんだよな、大丈夫だよな!?

蘇れ、愛犬の散歩コースを外したあのときの冒険心!外へ一歩踏み出した。

比較的安心できるエリアから一歩出たら即バトルだった。がんばれ僕!!


「ぜー……はー……か、勝った……」


なんでこのパーティの組み合わせなのか、数回行なわれた強制バトルでよく分かった。

主戦力が僕だけの、紹介された3人は回復担当というとても偏ったパーティの意味。

今度こそ呼び出した勇者は絶対死なせるものかという意地の結果だ。

おかげで敵へ突っ込む僕は傷だらけですぐ怪我を負うが、怪我したと思った瞬間には3人のうちの誰かが僕に回復魔法をかけてくれるのだ。

結果的に毎回体力気力共に満タンでバトルが終わる。

ステータスとしての値が満タンでも疲労感はたまる。だって補助を受けても敵を倒しているのは僕だけ。しんどすぎる。


あとね、敵のレベルと僕のレベル合ってないと思う。不相応に強い気がするんだ敵が。

ゲームみたく進行度合いに合わせて最初は低レベル、とかないよこれ。

これだけ敵勢力が勢いづいてるせいなのかな。初心者にはきついです。

それをなんとか倒していけてるのはどう考えても過剰が過ぎるほどの回復をかけてくれる3人のおかげだ。

1人くらい攻撃に回ってくれてもいいのでは。

さすがにロリッ子に戦闘に加わってくれなんてことは言えないけど筋肉隆々の彼?彼女?はそのご自慢の筋力を発揮していただけないのだろうか。


「我は魔術師であるが回復に特化した能力しか持ち得ておらぬ。侮られぬようせめて体を鍛えたらこの有様よ」


こんなのおかしいよ……

がっくり項垂れると中性的な彼?彼女?がぽんと肩に手を置いて慰めてくれる。


「ごめんよ勇者くん。せめて君を死なせないよう頑張るからね」


この彼?彼女?は唯一、敵へ干渉できる術を持っているが、毒性付与とか麻痺付与とか、決定打のようなものはないそうだ。


「ボクも早く成長してキミの役に立てるようがんばるから!」


このロリッ子も初めは女の子かと思ったけど一人称が『ボク』で、結果どっちなのかわからない。

もうなんなんだよこのパーティ。

性別不詳回復特化パーティとか設定盛りすぎじゃない??


まったく、とんでもない世界に来てしまった。

そしてふと思い出した。リードを括り付けたままの愛犬、大丈夫かな。

思い出したら寂しくなってきた。

僕は生きて自分の世界に戻れるんだろうか。死なないようにがんばろう。




****END****



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