A.存在意義 其の五
「神道……いや、ミコちゃん。どうして、いつ、気づいたの?」
メイの絞り出すような声だった。
「……最初からです。子供の頃に見た叔母さんの姿、そのままでしたから」
「そう……妖怪になって容姿が変わらなかった事が裏目にでたのね」
「叔母……思った以上に近い関係だったんですね」
「はい……」
「話してくれますか?神道家で何があったのかと、何故殺人に至ったのかを」
「何があった、という事もありません。ある日妖怪になってしまった私は神道家のルールにより追放されました」
「追放……」
「私は力を求めていた訳ではありません。先代の巫女ではありましたが、退魔師ではありませんでした。ただ、運が悪かったんです。だから、追放で済んだとも考えられますが……私からすれば、理不尽に追放されたという怒りしかありませんでした」
「ちょっと、待って下さい。その追放ってどういう意味なんですか?月母尾の外という意味じゃないですよね!?」
「そういう事が出来ないから、昔は処刑していたんだと思います。追放とは月母尾からの追放です」
「妖怪が月母尾の外に出て……どうなるんですか?」
「私の場合は消滅しました」
「え?」
「月母尾の外に居てはならない者が外に出れば、その存在は許されませんでした」
「……じゃあ、ここにいる備海さんは何なんですか?」
「私は……追放された彼女、神道未海の無念と磯女の伝承により、再構築された彼女の分身です」
「っ!!では、その神道未海さんは……」
「……私と彼女を同一視するなら、此処にいます。しないなら、もういない、という事になります」
「そんなのって……」
「これで、犯行の理由もお分かりでしょう?」
「神道家への復讐……やはり神道を陥れる為に……」
「はい、それと私の磯女としての存在意義、というのもありましたが」
「存在意義?」
「磯女は伝承が残っていたとは言え、マイナーな妖怪ですから。磯女としての在り方を示さないと……本来は形あるものではない私が消えてしまう恐れがありますからね」
「っ」
サラの表情が一瞬、苦々しくなった事に気付いたのは優人だけだった。
「……これから、どうするんです?」
「甘んじて裁きを受けるだけでしょう。私にはそれを拒絶する権利はありませんし、以前と違って、私の罪は自分で引き起こした事ですから」
それで、終わりだった。
優人が求められた真実は。
「そうですが。では……あとは……まか……せ……ま…………」
故に優人を支えていたもののスイッチが切れた。
優人の意識は周りの景色をスローモーションに映し、暗闇へと落ちていった。




