・探偵契約 其の五
「私は……優人くんを助けたいんです」
「……ん?」
脈絡がない、と優人は少し戸惑った。
「やっぱり、私のせいなん、です。だから、せめて助けさせて下さい。それが……例え自己満足でも」
「どういう事だ?」
「優人くんは、想月家がどうして月母尾で信仰を集めているか知ってる、ますか?」
「……その前に敬語が苦手なら普通に話したらどうだ?」
「い、いえ、そういう訳にはいかな、いきません!」
優人はため息を一息吐いた。
「確か、伝承があるんだろ?月母尾の守り神か何かの子孫だって」
「伝承があるのは確かですが、少し違う、います。守り神ではなくただの神です。月母尾の神に住民を守る意思はなくて、ただ支配してるだけ、です」
「はぁ……それで?」
「そして、神の子孫というのも違います。正しくは神に憑りつかれる者の血族。代替りする度に想月家の当主はその身に神を宿すのです」
「それが何の……待てよ、当主?それって……」
「私の父はあの事故の前に亡くなりました。名目上は成人後という事になる、りますが、実質上、現当主は私です」
「……頭痛くなってきたな」
優人は温くなった茶を口に含むと残った茶菓子を食べきった。
「だというなら、サラはその身に神を宿してる、なんて言うつもりか?」
「はい」
即答だった。
「……」
「その神の名は想い憑き。想月という苗字もここを由来にして変換されたものなの、です」
「思い付き?重い月……?いや違うな。イントネーションからして……想い憑き、か」
「そう、想いに憑く神……そしてその想いを具現する神……なん、です」
「想いを具現?願望を実現させるという事か?」
「考え方としては……ただ、それだけに留まらないの」
「ああ、想いを具現、か……衝動的に考えた事、それこそ思い付きでさえ実現されるって事か……待て、サラが思った事を具現?それで、それが……」
「優人くんが今考えてる事は多分、あって、ます……あの事故の原因は衝動的に私が思ったからなん、です」