Q.血を奪う者-ヴァンパイア- 其の三十七
ハルカが部屋を出て、また次のメイドがやって来る。
そのメイドは同じく二十台前半に見えたがハルカよりも更に若く見えた。
彼女はセミロング程の黒髪をポニーテールに纏めていた。
優人はその容姿をちらりと確認すると同じように対面側の椅子に座らせた。
「丸山桐花です」
「丸山……そうか、貴女が丸山のお姉さんだったんですね」
「ナオの事、ご存知だったのですか?」
「小学生の頃からの知り合いです。別のクラスだったので、すぐには気づきませんでしたが、最近再会しました」
「そう……だったんですね」
「通いでしたよね?丸山……ええと、奈緒さんとは一緒に住んでるんですか?」
「はい」
「では実家から?」
「……いえ、実家は取り払ったので賃貸です」
優人はトウカの目を見据えた。
「言いづらい事だとは思いますが、何があったんですか?」
「……三年前に父も母も亡くなりました。交通事故だったんです。持ち家でしたが、姉妹二人で使うには広く、管理も行き届かなかったので売り払ったんです」
「交通事故……もしかして、奈緒さんがゾンビになったのは」
「はい、車同士の事故で、妹も同乗してました」
「それで、奈緒さんとご両親は……丸山さん……桐花さんは大丈夫だったんですか?」
「事故の日は夕食を食べに出かける予定だったんです。私はこの仕事を始めた頃で、想月家からバスでお店に向かったので事故を免れました」
「成る程、では、奈緒さんはそこからどうやってゾンビとして復活したんですか?」
「それは…………余り、人に言える事ではないんですが、ウチは呪術師の家系だったんです」
「呪術師……」
「と言ってもそれを生業にしていたのは曾祖父よりもずっと前の代だと聞いています。ただ、その秘術自体は代々受け継がれていました。だから――」
「貴女が奈緒さんを?」
トウカは頷いた。
「父と母は手遅れでした。ただ、ナオは間に合った。原型を留めていたから」
「……」
「道徳として、一度死んだ者をゾンビのような形で生き返らせるのはいかがなものかというのは分かります。ただ、私はどうしても奈緒を助けたかったんです。奈緒がいなくなれば私は一人になってしまう。父と母と四人で暮らしていたのに、ある日そうなる事に私は耐えられなかったんです」
「そう、ですね。確かにどんな形であれ死んだ家族を生き返らせられるなら、大抵の人間はそれを選ぶでしょう。多分、僕でもそうしたと思います」
「あ、優人、様は……」
トウカに心情を見透かされそうになり、優人はかぶりを振った。
「……最後に質問をして終わりましょう。仮に噂話として耳にしたとして、滝宮遥香が犯人だと言われれば、貴方は信じますか?」
「え――!?」
「僕が言ったのではなく、噂話として聞いたら、という仮定の話です」
「……分かりません。分かりませんが、嘘だった時、申し訳ないとは思いますが、彼女とは距離を置くと思います。噂よりも同僚である滝宮さんを信じたいという気持ちはありますが、それで私まで疑われるのは困ります。私には奈緒が独り立ちするまで、職を失う訳にはいきません。だから、単なる疑惑でもその人を庇って、私まで疑われたりする自体は避けなければいけません。そういう意味なら噂を信じると言う事になるのかも知れません」
「成る程、ありがとうございました」




