Q.血を奪う者-ヴァンパイア- 其の三十三
そして、夕食の時間。今回は洋食だった。
広い食卓で二人だけの食事にも慣れてきたな、と優人は思っていた。
「急な話なんだ、ですが、明後日の昼には母が帰って、きます」
「へぇ、そうなのか」
サラの母親レルシィに対して、優人が持っているイメージは一つだった
――年齢不詳。
身長は低く幼児体型。
元も子もない言い方をすれば、小学生の子供のような容姿をしていた。
「それで、母が帰ってきた時に食事会をしようと思う、います」
「ほう、食事会ね」
サラの母親であるレルシィに会う事はともかく、その食事会自体には興味をそそられなかった優人は、それを隠すようにフォークに刺した鶏肉を口に入れた。
「規模自体は小さいけど、ですが、優人くんの歓迎会を兼ね、ます」
「歓迎会なんて、大層だな」
「同時にそれは優人くんが“探偵”の役割を担った事の発表会――宣言する場でもある、のです」
「成る程……ん?て事は」
「多分、優人くんが思っている通り、です。優人くん、捜査の進捗状況はどう、ですか?」
「……」
優人は、ナイフとフォークを置き、懐からメモ張を取り出した。
「出席者は私と優人くんと母。それ以外にセツ――鬼崎家から当主と次期当主。付き添いの人――鬼達も来る、でしょう」
「……」
優人はメモを見ながら、二本指で自らのこめかみの辺りをコツコツと叩いた。
「使用人達は直接雇用している者は全員その場に呼ぶ事になって、ます。出席というよりは立ち会いという表現が正しい、ですね」
「……ふん」
優人は鼻を鳴らすと、メモ張を閉じた。
「優人くん、次第ではあり、ます。無理なら無理で――」
「タイムリミットって事か?」
「え?」
「時間制限もなく、好き勝手にのんびり捜査されては使い物にならないからな。確かに考えてみれば、物語の探偵は真実に至るまで死ぬ事はない。そういう延命の仕方もある訳だ」
「わ、私はそんなつもりで言った訳じゃ、では、ありません!」
声を荒げるサラを観察するように優人は腕を組んだ。
「その割には随分急な話なんだな」
「それは……母の要望です」
「そうか」
仮に娘の思惑は違っても、母親の思惑はまた別だな、と優人は考えた。
「優人くん……?」
優人の返答があっさりしていた事でサラは戸惑いの目を向けた。
「まぁ、いいさ。進捗状況は八割ってところだ。明日の捜査でなんとかケリを付けるさ」
「そう、ですか。助かる、ます」
「まぁ、居候の身で、想月家当主にしてオモイツキの尸童様であるサラの顔に泥を塗る訳にはいかないしな」
「……優人くん、わざとトゲのある言い方してる、ますよね?」
「はは、気にするな」
「笑ってごまかさないで、下さい」
構わず優人はひとしきり笑った。
笑い終え、真顔に戻ると無意識に言葉が出た。
「――後悔はしないでくれよ、サラ」
「え?」
「分かっていると思うが、家の中に犯人がいるんだ。それを暴くんだ。それが何を意味するかわかるだろう?」
「……はい」
サラは伏し目がちに頷いた。




