Q.血を奪う者-ヴァンパイア- 其の三十
畳の和室の中央には今では珍しい丸いちゃぶ台が設置されている。
優人が座布団に座っていると、ミコがお茶を持ってきた。
「しかし、神道って名前からして、もしかしてとは思ってたが、本当に神社とはな」
ミコの実家は神社だった。厳密には神社の敷地内にある家屋だが。
「あれ、言いませんでしたか?あたし巫女なんですよ」
「巫女の神子とはあからさまだな……退魔師とは聞いているよ」
「はい、神道家の神主や巫女は代々退魔師を兼任しています」
「それが、なんで想月家の使用人なんだ?」
「それは……」
ミコは返答につまった。
答えていいのか迷っているそういった表情だった。
「答えられないなら、それでも構わないけど」
「……いえ、使用人というのはあくまで名目なんです。その実はお嬢様、オモイツキ様の尸童の護衛、有り体に言うならばボディーガードが代々神道家の役割なんです」
「ああ、そう言えば、子供頃は決まってどちらかは取り巻きに居てたな」
「っ!」
「うん?」
「優人、様は……あの頃の事をどれだけ覚えていますか?」
「……」
「お嬢様や……あたしや守くんの事、恨んでますか?」
「それを聞いてどうするんだよ?」
「謝らせて下さい」
ミコは真っ直ぐ優人の目を見て言った。
「……そんな事に意味はないよ。自己満足以外にはね」
「!!」
「今となれば、あの時、サラに逆らえるはずもない事はわかる。その時の感情がどうであれ、結果が変わらなかったのなら、大した意味はない。責任が神道にある訳じゃない」
「……なら、優人、様はあの時のお嬢様をまだ恨んでるんですか?」
「……」
“もう恨んでいない“そう口に仕掛けたところで、過去の出来事がフラッシュバックとして優人の脳裏に浮かんだ。
「かもな。だからってその事を復讐したいとか、そういう気持ち(・・・)はない」
衝動はあるけれど、と優人は心の中で付け加えた。
「優人様、もしそれをあたしにぶつけて……」
「解消なんてされないよ。やめておけよ、そういう自己犠牲は」
「……」
ミコは一瞬目を大きく見開いて、そのまま項垂れた。




