Q.血を奪う者-ヴァンパイア- 其の十九
翌日、学校が終わり日が傾きだした頃、想月の屋敷にセツノが来ていた。
「おう、優人。これが頼まれとったもんじゃ」
優人はセツノから三枚の紙を受け取った。
「ありがとう、鬼ざ……セツ……ノさん?」
「ぬしはまだ、アタシの名前覚えとらんのか!」
「えっと……あってたよね?」
「曖昧だったじゃろうが!」
「ま、まぁまぁ、鬼崎様。優人様の事情はご存知でしょう?」
「う……む。それは知っとるが」
間に守が入り、セツノをなだめる。
その間に、優人は受け取った紙を確認する。
優人が受け取った紙は想月家の間取りだ。
その間取り自体は不動産屋に貼ってあるような簡易的に記されているものだ。
だが、唯一、例外として詳細に記されているものがある。
それが窓について。
優人が知りたかった情報が載っていた。
日中差し込む光の詳細が窓毎に詳細に記されている。
「うん、完璧だ」
「ふん、当然じゃ。だが、鬼をこんな雑用に使うとはの」
「それは……」
「私が頼んだ事、ですから」
サラが優人を庇うようにセツノとの間に立った。
「そんな事はわかっとる。威厳の話じゃ。まぁ、子分共は金払いがいいと喜んでいるがの」
セツノは困ったように片目を閉じて、後ろ髪をがさがさと掻き上げた。
そんなセツノを知ってか知らずか、赤鬼と青鬼が走ってきた。
「姐御、車の準備が出来やした!」
「いつでも行けやすぜ!」
「そうか。優人、確かうちに来るんじゃったな」
「……えっ……と?」
「優人くん、ほら、あの件、ですよ。妖怪や人外についての記録を見たいって」
「ああ、そうか……えっ?想月家が管理してるんじゃないの?」
「サラ、きちんと教えといたれや」
セツノの呆れたような目に、サラは一瞬、むっとしたが、すぐに表情を作り直した。
「想月家が手をつけない訳では、ありませんが、そういった資料を使う事が多いのは鬼の一族なんです。言わば実働部隊ですから」
「ああ、成る程……って、それってそれでいいのか?」
言うならば、役所などの資料の管理を警察が行っているようなものだ。
「まぁ、この形態に問題がないとは言えませんが、鬼の一族はこういう事に対して、一番公平、ですから」
「仕事だからの。不正を起しては鬼の沽券に関わる。ひいては威厳にもな」
「はぁ」
優人は余り納得がいかなかったが、だからと言ってどうする事も出来ないので、特に何も言わない事にした。
「さて、子分を待たす訳にもいかん。連れていくのは、優人だけか?」
「守とミコもお願い、します。優人くんの助手なので」
「あいよ」
セツノはそう言いサラに背を向けたところで、何かに思い出したように、顔だけ振り向いた。
「しかし、相変わらず敬語が下手じゃの、サラ」
「その喋りかたしか出来ない、貴女が言わないで、ください」
「これも威厳じゃ、鬼が畏まっても鬼らしくない」
「なら別に私の前まで、威厳を持ち出さなくても、いいでしょう?」
「それこそ、そんな喋りかたの、サラが言う事でもなかろうが」
サラはむっとし、セツノはくっくっと笑った。
優人はサラの知らない一面を見たような気がした。




