Q.血を奪う者-ヴァンパイア- 其の十八
戻って来た守とミコに席を外してもらい、優人は一人で考える事にした。
「何かを違えているのか?」
用意してもらった茶菓子を噛みちぎり、思考を開始する。
(昨日やった事、今からやる事……実を結ぶかはともかく、意味のない事ではないはずだ)
糖分をガソリンとし、脳というエンジンを温めていく。
(若干手詰まり気味ではあるが、それ自体は間違いではないはず――)
そして、アクセルを踏み、思考を加速する――
(――捜査としては、だ。この行為自体は重要だとしても、それは役割がずれている)
無意識に燃料を追加投入しようと、別に用意していた飴玉を口に含んだ。
(これは、警察の捜査だ。それはそれで重要。だが、探偵の捜査も行う必要がある)
そこで優人の探偵像を考える。
(大抵の探偵は閃きに基づいた捜査を行う)
だが、優人は現時点でそんな閃きはない。
強いて言うのなら、この事に気付いた事自体が優人にとって閃きだった。
(なら、その閃きの先を考えるとどうなる?)
何かを違えてるという発想その土台に戻ると、また別の答えが浮かんだ。
(今とは違う捜査……つまりは別方面からのアプローチが必要という事だ)
「……あ」
優人は自分達がまだ手を付けていない事に気付いた。
いつの間にか飴玉は口の中で溶けてなくなっていた。
こんこん、と扉を叩いて優人は部屋に入った。
「サラ、いるかい?」
そう言いながら優人は我ながら余りにも気軽だと思った。
「あら、優人くん。どう、されました?」
サラは家の仕事をやっていたのか、普段かけない眼鏡をかけて資料の束を持っていた。
「少し聞きたい事があったんだが……邪魔したかな?」
「いえ、大丈夫ですよ。言っ――伺いましょう」
サラはかけていた眼鏡を外し、優人の方に向き直る。
優人はその事を何故か残念と捉えた。
「ああ、じゃあ……」
「優人くん、座って下さい」
「ん、ああ……」
なんとなく出鼻をくじかれた気になりながら、優人は椅子に座った。
「それで、ご用件は?」
「サラの吸血鬼観を聞きたいと思って」
「あれ、捜査、ですか?守とミコはどうし、たんですか?」
「今は席を外して貰っている」
「えっと、どうしてですか?」
「……まぁ、俺の判断でだよ」
「そう、ですか」
「で、質問の答えは?」
「吸血鬼観、でしたね。単純に吸血鬼のイメージという事ですか?」
「ああ、そうだ」
優人は改めて、吸血鬼の定義をはっきりさせおきたいと思った。
「そうですね……えーと……」
「単純に思いつく事だけでいい。余計に要素を増やす必要もない(・・・・・・・・・・・・・・)」
「!……そう、ですね」
そうは言うものの、サラは何かを思い出すように頬に手を添えた。
「私としても、極力物語は読まないようにしているので、一般的な吸血鬼のイメージしかないと思っています。人の血を飲む、日光に弱い、十字架に弱い、にんにくに弱い、外国の妖怪なので洋館に住んでいる……と言ったところ、でしょうか」
「……!!」
それは当たり前に認識していた事だった。
だが、それを再認識した事で優人は求めていた別のアプローチにたどり着いた。
「人の血……日光……」
優人は頭の回転を補助する為、咄嗟に胸ポケットに備えていた飴玉を口に突っ込んだ。
「十字架……にんにく……外国の妖怪……?」
「優人くん?」
「ああ、当たり前だ。でも、その当たり前に気付いていなければ……!」
頭の回転が緩んでいく、優人の思考は完了していた。
「ありがとう、サラ。お陰で調べる事が山ほど出来た」
「え……うん。それっていいこと、ですよね?」
「勿論」




