Q.血を奪う者-ヴァンパイア- 其の十五
小学校の裏には林がある。現在は整備されているが、当時はまだ土の道だった。
雨上がりの放課後、薄汚れた泥水溜まりに優人の手提げ鞄は漬かっていた。
『……』
その事に対して、辛いだとか嫌だとかいう感情を抱く事はなくなっていた。
ただ、あと処理が面倒、それだけだった。
『あれぇ?どうしたの、優人くぅん』
ただ、後処理よりもサラの相手をしなければ、ならないのがより面倒だった。
『……』
サラは誰が犯人なのかを隠そうともしない。
ただ、優人の反応を見て楽しみたい、それだけだった。
『どうしたの、優人くん、しゃべれなくなった?』
『……』
水堪りから、鞄を引き上げる。
中の体操服や空の弁当箱は多少手間がかかっても洗えばいい。
教科書の類いはランドセルに入っている。
ただ、読みかけの推理小説がびちょびちょに濡れてしまっていたのはいただけなかった。
『どうしたのって、聞いてるでしょ?耳まで悪くなった?』
優人はそこでサラを見た。
『……なに、その目』
優人は哀れみに満ちた目でサラを見ていた。
優人はサラの本質を見た。
ただ、生まれた家の力に胡坐をかいているだけで、サラ自身に大したものはない。
だから、自分を誇示したがって、いるんだと。
『可哀想な奴』
サラの表情が凍りついた。
優人は構わず、背を向けた。
『……ミコ!』
優人の身体は宙を舞い、背中から泥まみれの地面に叩きつけられた。
『ぐっ!』
『馬鹿じゃない、何様!』
サラは泥まみれになった優人を見下ろす。
『こんなの大切にして!』
サラは優人のもった本を踏もうとする。
『や、やめろ!』
『ミコ、抑えて!』
子供の頃の一歳差は大きい、加えて女子の方の成長が早い事もあり、抵抗しようとする優人は抑えられた。
『ははは、ばーかっ!』
優人の抵抗むなしく、本は踏みにじられた。
(お父さんが買ってくれた本なんだ……お父さんが……!)




