Q.血を奪う者-ヴァンパイア- 其の十三
厨房に入ると、佐古田は備品の片付けをしていた。
「佐古田さん!」
「優人様?どうされました?」
佐古田は手を止めて、優人の方を見た。
「聞きそびれていた事がありました」
「なんでしょうか?」
「使用人の人達の食事……賄いですか?それも佐古田さんが作ってるんですよね?」
「ええ、そうですよ」
「今日の献立はカルボナーラのスパゲティ?」
「そうです。ご存じでしたか?」
優人はそこで質問の仕方を考え。・
「では……僕、実はペペロンチーノが一番好きなんですよ。佐古田さん、作ったりしますか?」
佐古田はそれを聞いて、愛想よく微笑んだ。
「ああ、それでしたら、いつでもお作りしますよ。材料さえあれば」
「いえ、わざわざそんな事をする必要はないですよ。賄いがペペロンチーノの日にでも教えて貰えば」
「あー……申し訳ありませんが、口臭の事で賄いでニンニクを使うのは禁じられてまして」
「そうなんですか?それは誰から言われたんですか?」
後ろに控えていた守が、優人の質問の意味に気付き、顔をあげた。
「主に女性陣から、ですね」
「女性陣……それは、想月家ではなく、使用人から、という事ですね」
「はい」
「でも、少しくらいはいいんじゃないですか?ペペロンチーノみたいニンニクを使わないと美味しくない料理もありますし、臭いを抑える調理法とか佐古田さんなら知ってるでしょう?」
「いえ、自分もそう考えて賄いを作った事もあるんですが、敏感な人に気付かれてしまって、NGを出されたんです」
「!……敏感な人、それは誰ですか?」
「気付いた人ですよね、確か……」
佐古田はその人物を口にした。
「……え?」
翌日の日中、グラウンドではクラスメイトの男子達が野球をしていた。
有り体に言うなら、体育の時間、優人は日陰で彼らを眺めているだけだった。
優人はあまり運動が好きではなかった。
しかし、球技という枠組みに限っては例外であり、幼少の頃積極的に参加した覚えがある。
だが、今の身体能力を考えると彼らの中で混じって野球をするのは自殺行為に近い。
そんな経緯もあって、優人は羨望と嫉妬を抱きながら、彼らを眺めていた。
「……暇だ」
当然の結果として優人はそんな独り言を呟いてしまう程に手持ち無沙汰になった。
優人は特に意味はなく、なんとなく立ち上がった時だった。
「あっ!?」
「え?」
背後に衝撃を受け、優人の頬は土に触れていた。




