Q.血を奪う者-ヴァンパイア- 其の十二
使用人のスケジュールを見て、ミコと守を除く全員に聞き込みを行った。
その数18人。
しかし、目ぼしい成果は得られなかった。
優人は自室に戻り、守と今後について話し合う事にした。
ちなみに使用人の食事の時間の為、ミコは守と交代で席を外している。
「うーん、成果なしか……」
優人は机に並べられた聞き込みのメモを見て呟く。
「まぁまぁ、地道な捜査を続ける事が大事なんですよ」
「そうは言うけど、ここからはノーヒントだろ?一人二人、噂話でも怪しい人間の心当たりがあったりしないのか?」
「……そうですね」
一瞬、守の表情に陰りが落ちたのを優人は見逃さなかった。
「何か思うところがあるのか?」
「あ、いえ……その」
「……この部屋には今、俺と守矢の二人しかかいない。他の誰かを気にする必要はない」
「……みんな、臆病なんですよ」
「臆病?」
「自分にその気がなくとも、誰かを敵に回すのは怖いんです」
「敵?犯人……いや、容疑者にしたてあげる事……か?」
「そうです。誰だって、根拠のない直感なら、答える事はできるはずなんです。でも、それをしないのはその人を敵に回すのが怖いからなんですよ」
「なら、守矢はどうなんだ?」
「え?」
「そう言えば、守矢と神道にはまだ聞いてなかったよな?守矢は誰が吸血鬼だと思う?」
「……っ」
守は何かを口にしようとして、言い淀んだ。
「根拠はなくていい。それとも、守矢も臆病なのか?」
「……ボクは特に物語をよく見る方ではないです。でも、こういう時の定番を知っています」
「定番……何の?」
「吸血鬼ですよ」
「……」
「吸血鬼は……館の主人が定番でしょう?」
「……想月沙良が犯人だと?」
「犯人ではなく、吸血鬼、です」
「それってどういう……」
優人が言い終わるより先にノックが鳴り、二人は扉を見た。
「神道神子、戻りました」
ミコが戻ってきた事で守の話は中断せざるを得なくなった。
「お話中でしたか?守くん、キリのいいところでお食事に行ってほしいのだけど……」
「えっと……」
「いいよ、行って」
「はい、失礼しま……神道さん、ソース拭き取れてないですよ」
「えっ!?」
よく見ると、拭き残しらしきホワイトソースが、ミコの口許に付着していた。
「……カルボナーラのスパゲティか?」
「ゆ、優人様!見ないで下さい!」
ミコは恥ずかしそうに、口許をハンカチで押さえた。
守は、呆れたようにため息をついたが、優人は何かが引っかかった。
「あ」
優人が立ちあがると、守とミコは優人を見た。
「……聞きそびれた事がある。佐古田さんはまだいるよな?」
「え、ええ、いますが……」
「どっちでもいい、着いてきてくれ」
優人は早足で厨房に向かって歩き出した。
「行きます」
「えっ」
着いていったのは守だった。
取り残されたのはミコ。
「守くん、お食事は……?」




