Q.血を奪う者-ヴァンパイア- 其の十
メイは夕食の用意の為に厨房でシェフと打ち合わせをしていたところだった。
優人としても、仕事の邪魔をするつもりはない。
手が空いたら話したいという旨を伝えて、部屋で待つつもりでいたら、すぐに打ち合わせを終わらせてしまった。
「急かすつもりはなかったんですが」
「いえ、そういう訳には参りません」
そういうと芽唯は持ってきたお茶と茶菓子を優人の前に置いた。
「えっと……僕の分だけですか?」
メイ自身の分も傍に控えている、ミコや守の分もなかった。
ミコや守は今回、優人が行おう聞き込みの内容をメモに記す役割だった。
「私どもは使用人ですので」
「は、はぁ……」
やり辛さを感じつつも、話は聞かない訳にはいかない。
「とりあえず……座って下さい。これから話しをするんですから」
「畏まりました」
急いでいたのかメイは額の汗をハンカチで拭いてから、椅子に腰掛けた。
メイが椅子に座る間に優人は茶菓子を一口食べた。
「先に確認しておきたいんですが、使用人の方達は僕にどんな役割があるのかはご存じでしょうか?」
「契約……優人様が探偵になられた事は末端の使用人にも伝わっているはずです。ですが、その伝達は想月家直属の使用人までとなっております。外注の者……庭師等の一部の者は外注していますが、それらの者にまで想月家の内情は伝えておりません」
「成る程」
聞きたい事は全て答えてくれたな、と優人は頷き、茶で喉を潤した。
「では、単刀直入に言いましょう。お察しでしょうが、これは捜査です。探しているのは吸血鬼。その吸血鬼がこの屋敷にいると思われます。何か心当たりはありませんか?」
「吸血鬼、ですか……」
メイは考えるように口元に手を添えた。
「心当たりはないようですね」
「はい、申し訳ありません」
「では、仮にこの屋敷に吸血鬼がいるとしたら、誰だと思いますか?」
「!」
優人の質問にメイは目を丸くした。
「根拠はなくて構いません。恐らく備海さんが使用人全体の事を一番知っているはずです。その備海さんから見て、誰が吸血鬼だと思いますか?」
「それは――」
メイの俯くように斜め下を見た。
そのまま口を手で押さえたまま、一瞬視線は優人の側を向いた。
「ん?」
「――本当に根拠はありません」
「ええ、それで構わないです」
「私は長い間、想月家に仕えてきました。想月家の人間の事はよく知っていると自負しております」
「ええ、そうでしょうね」
「吸血鬼の事件、聞いております。確か、死者も出たとか……想月家の人間にそのような者がいるとは到底思えません」
「……」
「どうしても選べというのでしたら、私は一番知らない人間を選ぶ事になります。言うのならば、一番信頼が薄い人間を――」
メイの視線は優人を捉え、そのまま天井を見上げた。
「ですが、それを言うのはあまりにも――」
「……そういう事か」
「お分かり頂けますか?」
「貴女の見解がそうであるのなら、構いません。聞いたのは僕です」
「では……」
「だとしても、言葉を濁さず宣言して貰えますか?」
「どうして……でしょうか?」
「これが捜査で、僕が探偵だからです。察したところで言質を取らなければ後から幾らでも……何とでも言えますから」
「……わ、わかりました」
メイは観念したように目を伏せた。
「私は――梔子優人様が吸血鬼だと思います」




