Q.血を奪う者-ヴァンパイア- 其の二
「優人くん、よく眠れ、ました?」
「あ、ああ……」
広い食卓に優人とサラは向かい合って座っていた。
「どうしました?」
「いや、無駄に長いテーブルだな、と思って」
二人は端の角の椅子に座っているが、それぞれの列に四席ずつ空いた椅子があった。
「それは来客があった時の為のスペースですから」
「それなら、他の人間にも使わせたらどうなんだ?」
「使用人の事ですか?公私混同になるので、ルールとして出来ませんよ」
「だけど、この長いテーブルに二人というのは……」
「……三人、です。この奥の席はまだ父の席、です」
サラはそう言って側面に当たる奥の席に手を向けた。
「……まぁ、それがここのルールというなら従うけど」
「ありがとう、ございます。それに暫くすれば、母も帰ってきますので」
そこで優人は気付いた。
サラの母親である、想月レルシィにまだ会ってない事を。
「ん?そう言えば、サラのお母さん……レルシィさんは何処に?」
「母は今、母の国、実家の方に戻ってます。私が離れられないので彼方側の冠婚葬祭は全て母に任せる事になるので」
想月レルシィはその名から伺えるように元は異国の人間だった。
当然、娘のサラにもその血が半分流れている事になる。
サラの白い肌は母親譲りだと優人は感じている。
「そうか。なら挨拶はまた今度か」
世話になるというのに、サラの母親の事を忘れていた事を優人は苦々しく思う。
そんな不甲斐なさで探偵役などつとまるのか、と。
「ええ、まだ先の話、です。今は今日の話をしましょう」
「今日の話……事件の捜査か?」
「それは……学校が終わってからにしましょう。とりあえずは学校の事、です」
手続き関係は全て想月家が受け持つという話から、優人は特に何もせずに着いたその翌日から学校に通う事になっていた。
「学校の事?担任と話してあとは流れでなんとかなるんじゃないのか?」
「大まかに言えばそうですけど。色々話し合う必要があります。例えば、優人くんの身体の事は先生方には話してますが、生徒にはまだ伝えてません。どうするかは優人くんの希望に沿う形にしたかったので、今日は何度か休み時間に面談があるんです」
「そうか」
「……学校では、私しかまともにフォロー出来ないと思います。だから、同じクラスの人に頼む事も選択肢に入れて下さい」
「うん?ああ、この家で同い年なのはサラだけだからな」
二人と歳が近い使用人はミコと守だが、ミコは学年が一つ上、守に至っては二つ下のまだ中学生だ。
基本的に同じ学年、クラスで行動を共にする事を考えると、まともに優人をフォローできるのはサラだけとなる。
「次期当主サマから直々に助けてもらえるとは恐縮千万で」
「優人くん?」
「……言ってみただけだよ。真面目に考えるさ、自分の事なんだし」
とは言うものの、優人の気持ちは決まっていた。
契約を交わした想月家の人間はともかく、直接は関係のない他の人間の手を借りるのは道理ではないと感じていた。
「で、とりあえずはそれで終わりか?」
「そう、ですね……後は優人くんがどれだけ適応できるか、です」
「適応、ね……」
学校に通うのにも適応が必要……自分の事ながら、その身の上に優人はため息が出た。




