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「どうだ?鳥籠から飛び立った気分は。」


 


「別に..何も。」


 


あの後2人に着いていくがまま、車に載せられ今に至る。


 


「シン。こいつが例の?」


 


「あぁ..。そうだ。」


 


シン?こいつの名前か..。


 


「そういえば自己紹介してなかったね。私はいのり。ただのいのり。」


 


「ただのいのり?」


 


「いのりには苗字がないんだ。俺は..皆からはシンと呼ばれてる。」


 


お前も苗字ないのかよ..。


 


「そうなのか..。俺は..、あれ?俺の名前は..。」


 


あぁ..もう名前すら思い出せない。


 


「思い出せないか?」


 


「名前すら無かったのかもな..。」


 


ハッ、っと自虐気味に言う。


 


「まあ別に名前なんてどうでもいいだろ。好きに呼んでくれ。」


 


「流石に名前が無いのは不便だろ..。」


 


そうか?と聞き返すが実際番号で呼ばれていたから今更感が否めない。


 


「髪の毛真っ白だからシロでいいんじゃねーの?」


 


「海斗、それは安直すぎるよ..。」


 


海斗?ってやつが適当に言うが、いのりがフォローする。


 


「それでいいよ。」


 


「え、いいの!?ほんとに?」


 


「分かりやすいし、番号よりかはマシだろうよ。」


 


おいおいマジかよ。と海斗がニヤニヤしてるが気にしない。


 


「よし。じゃあシロこれからの話をしよう。」


 


さっきまでの談笑が嘘だったかのように周りが静まる。


 


「俺達はこの世界の在り方が間違っていると考えている。その認識の元で革命のようなものを起こすつもりだ。」


 


「革命..ねぇ..。」


 


「事実、異能の優劣で判別される世界だ。いくら努力しても異能は変わらない。生まれた時からそいつの人生が成功か破綻かが決まってる世の中なんて間違っているとは思わないか?」


 


「どうだろうな..。世間には疎いもので。」


 


「そうだったな。しかし異能を持たないものはどうする?ただ運命を潔く受け入れるのか?勉学や運動にいくら熱を注いでも結局異能で判別されるんだ。」


 


そう。シンが言っているようにこの世界はどんなに突出した才能を持っていても異能で全て解決されてしまう。


 


「シン。お前の言ってることが間違っているかどうかは知らん。ただ俺から言えるのは、それは俺に関係のある話ではないという事だけだ。」


 


「ほう..。つまり?」


 


「俺でも分かる簡単なことだろ。俺は研究対象とされるほどの優れた異能を持ってる。そんなヤツが革命とか、世の中の在り方が間違っている、なんて言ったところで綺麗事って切り捨てられたり、大した異能を持ってない連中に煽ってんのかって敵対されるのがオチだろ。」


 


「かなりの年月ぶち込まれてたらしいのによく分かってんじゃねぇの。」


 


そりゃどうも。と笑いながら答えるが、結局の所こいつらに着いていく以外今のところ選択肢が無いのも事実。


 


「シロ..その通りだ。優れた異能を持ったお前がそれを言っても意味が無い。だが、俺らの目的は世の中を変えるんじゃないのを理解して欲しい。そして別の目的があるんだ。」


 


「おいおい..それじゃあ革命にならないじゃないか。」


 


「いや、なるさ。俺達の目標は独立した国を作ること。異能だけでは判別しない、そんな国を作ることだ。」


 


大層な目標なこった。


 


「それで?もう1つは?」


 


「おめぇがばらまいちまった異能の副産物の排除だよ。」


 


「..あのクローンか。」


 


「そうだ。最後に見たアレを覚えているか?」


 


「あぁ..。」


 


「あの一体を作るだけで何百もの死体が生まれた。クローンがダメなら人間にと考えたアイツらはまた何百もの死人が出た。その繰り返しをずっと何年間も続けている。」


 


「その成功体は..どれだけいるんだ?」


 


「正確な数は分からない。ただ世界中に拡散しているのは確かだ。」


 


「なるほどな..。」


 


要約すると、こいつらの最終目標として異能で判別しない独立国家を築くこと。次に俺の実験で生まれたクローンの排除ってことか。


 


「一つ質問だ。」


 


「なんだ?」


 


「お前らがどんな目的で行動しているのかは理解出来た。ただクローン達を排除する理由は?」


 


俺がシンの話を聞いていて疑問に思った点がコレだ。別に軍事目的に使われるからと言ってクローンを排除する必要は無い。確かにこの組織が国を築いたとして、もし他国と戦争になった場合、厄介な相手なのは確かだがあの研究所にいたクローンは再生こそしていたが殺せないほどでは無い..と言ったレベル程度だ。そして実験の素となる俺という素体がいなくなった現状、実験が進むとも思えない。つまり無理に排除する必要はないと俺は考えている。


 


「オイオイ..。お前さん自分の異能の恐ろしさを理解してねぇのか?」


 


「どういうことだ?」


 


「海斗..。俺が説明する。」


 


「へいへい。」


 


「シロ。自分の異能はどういうモノだと思ってる?」


 


「簡単に言えば自分の体を弄れる異能って感じかな。違うのか?」


 


「その通りだ。だがシロはその異能を完璧に操れるから何も支障がないだけでクローン達は違う。」


 


「....クローンが完璧に操れないからと言ってどんなデメリットがあるってんだよ。」


 


「細胞レベルまで操るシロの異能を中途半端に使うと細胞が誤作動を起こし全く別物に変化する。コンピュータで言うならバグってところだな。それが人体で起こった場合どうなるか分かるか?」


 


「悪い..。医学はあんまりわからん。」


 


「癌になる。」


 


「癌って..あの癌か?もしそうだとしたら何もしなくてもアイツらは勝手に死んでいいじゃないか。」


 


「いや、それが1番あってはならない事だ。」


 


「は..?どいうことだよ。」


 


「シロの異能で癌になり息絶えたアイツらはその後も癌の侵食が止まらず全身が癌細胞になる。その後軽い衝撃で飛散し、別の苗床を探し空気中を舞うんだ。その苗床とは..」


 


「人..ってか?」


 


シンは黙って頷く。それに続いて俺が大きく溜息を吐いて、キノコかよとボヤく。


 


「人だけじゃない..生物全体に広がる。そんな爆弾を抱えた奴ら同士で戦争したらどうなる?核戦争と同等のタチの悪い結果が目に見えている。そうなる前に俺達でクローンを排除し、死体も処分する。」


 


何故そんな持て余すようなモノを人は持つのか。馬鹿な俺でも分かる。抑止力だ..。向こうが持ってるんだからこっちも持つ。お互いにその威力や恐ろしさは重々承知だからこそ持つ意味があるんだろう。本当に愚かなヤツらだ。


 


「つまりあれか?そのクローンを作るきっかけとなった俺が責任持って尻拭いしろってか?」


 


「そーいうこった。お前さんがどう生きて行きたいのかは知らねぇけどよ..テメェのケツはテメェで拭けって言葉くらい知ってんだろ?それが終わってから自分探しするこったなぁ。」


 


「もちろん拒否権はある。だが拒否したとしてもこれ以上クローンが増えないようにするために身柄は俺達で預かる。どうするかはお前次第だ。」


 


前に、あの研究所にいた時に本に載っていた言葉が頭に浮かんだ。『無知は罪』何も知ろうとしなかった俺の罪。そんな俺に対する贖罪のチャンス..か。


 


「そうか..。これが俺の生きる意味..なのかな?」


 


これが終わった後がどうなるかは分からない..。ただ今は俺をあの狭く薄暗い部屋から連れ出してくれたコイツらへの礼と、俺自身の罪と向き合わなくちゃな。


 


「いのり、海斗、シン。長い付き合いになるから..よろしくな。」


 


三人はその言葉を聞いて軽く笑う。


 


「あぁ..。シロ、お前を歓迎する。ようこそ罪人の集いへ。」


 

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