UN:DEAD DANCE!!~異世界で屍と化した少女は踊る~
周囲は赤く染まっていた。
どす黒い血の色だ。
その中心で少女が狂ったように巨大な斧を振り回す。
少女の斧に胴体から、頭から、真っ二つに切り裂かれていく人の形をしたもの。
吹きだした赤い返り血を浴びて少女は口の端を吊り上げる。
少女は何故こんなことをしているのか。
私は何故こんなところに居るのか。
どうしてこんなことになってしまったのか。
私は眼前で繰り広げられる光景にただ目を奪われているだけだった。
「おい、おまえも、やるんだよっ!新入りっ!!」
狂ったような雄たけびを上げながら少女が私に声をかけてくる。
え?私が?何で?どうして?
私はただの一般市民だ。
そんな巨大な斧なんて振り回せない。
振り回せっこない。
しかし私の手には。
一振りの巨大な剣が握られていた。
何?この状況は。
分からない……。
分からない……けれど。
私は目前に襲い来る人の形をしたものに対して剣を振りかぶり。
そして、それを真っ二つに両断した。
視界が返り血で真っ赤に染まる。
「あ……あ……」
そこで私の意識は途絶えた。
・
・
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チュンチュン。
この季節はまだ肌寒い。
布団の中の温もりが何と心地いい事だろうか。
でもいつまでもそんな快適な空間でまどろんでいられるほど私は暇ではないのだ。
私は駆け出しの新人声優なのだから。
朝食食べて事務所に行ってボイトレしないとなぁ。
そんなことを考えながら愛しい布団からのそのそと這い出る。
「今日はオーディションの選考会もあるんだっけ」
まぁ……オーディションなんて名ばかりで今、旬の声優の方々が主役をもっていっちゃうんだけどさ。
人生って不公平だよね。
あー……やめやめ。
そんなこと考えてたら端役にも受かりやしない。
千里の道も一歩から。
モブも積み重なれば山となる。
きっといつか主演声優とまではいかなくても助演声優くらいにはなれるかもしれない。
だから、暗い考えは止め止め。
よしっ。
朝ご飯も軽く済ませたし事務所に行こう。
そうしよう。
そして私、水無月希は住み慣れた部屋を後にした。
私を待ち受けている運命も知らずに。
電車に轢かれそうになった老人を助けて、死んで生き返った先はアンデッド。
私が生きていくためには闇に堕ちた同族を狩り続ければならないという。
そんな過酷な運命をその時の私はまだ、知らない。
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