生産職と従姉とパーティメンバー
目の前に長剣が近づいてくる。頭では理解して回避しようとするのだが体が追いつかない。
―――やられるっ。そう思ったとき、横から数本の氷の矢が飛んできて剣に当たり、長剣の軌道を変えた。
長剣は俺の背中すれすれを通り、少しの風を背中に感じさせ地面に衝突して火花を散らした。
さらに氷の矢が飛んできて男の体に突き刺さり、そのHPをわずかに残してそれ以上は飛んでこなかった。
「初心者狩りは感心しないな、ゴーギャン。」
そう言って野次馬の中から出てきたのは白色の鎧に刀を提げて青い髪をした女プレイヤーだった。
それを見た大剣使いは後ずさりながら「何でお前がこんな所にいるんだ!ハル!!」と叫んだ。
「たまたまよ。リアルでの知り合いが会いたいって言ってるから待ち合わせしてるだけ。それとあんたが前線でも同じようなことしてキャッティーとツタトラ達にアイテムを売って貰えなくなったからここに来て初心者の生産職に恐喝してるって掲示板に上がってたわよ?」
そして俺のほうを向いて大丈夫?と聞いてくる。
そしてゴーギャンと呼ばれた大剣使いはいきなり立ち上がり、覚えてろよ~!と声を上げて逃げ去っていた。そしてとりまきABも「待ってくだせぇ~」「兄貴やっちまいましょう!」と言いながら叫んでいった。
あれで元前線のプレイヤーだったのか。完全に態度がしたっぱを引き連れた小物みたいだったのに。
「災難だったわね。」そう言って尻餅をついていた俺に手を差し伸べてくれた。
そして背中にある弓を見て……かわいそうな目を俺に向けて、
「武器を変えることをおすすめするわ」
と言った。
「お気遣いご苦労様、でも使えてるから良いよ」
「確かにあれはすごかったわね。弓をあれだけ使える人は最前線プレイヤーにもβテスターにもいなかったわよ。」
「そりゃあどーも。ところであんたはいったい誰なんだ?さっきの馬鹿と知り合いのようだったけど」
そう言うとハルと呼ばれたプレイヤーは少し困った顔をして言った。
「私は元βテスターで、今は最前線プレイヤーの一人よ。それであいつは私がβテスターの時にいた、問題児プレイヤーよ。生産職にアイテムを売ってもらえなくなったのも問題起こしたからなのよ。」
その時、いきなりビィー、ビィーというアラームの音が聞こえてきた。
「それじゃあ俺は時間だから」
そう言うとハルも、「私も時間だからちょうどよかったよ」と言って歩き出した。……二人とも同じ方向へと。
時計台に着くと待ち合わせの時間の10分前だった。
早速着いたという報告と回りの詳細をメールで送る。
そして「わかった~」という返事をもらったのでそのまま待っていると目の前を先ほど会ったハルというプレイヤーが、うろうろしていた。
そして俺を見て、「もしかして……桜?」と聞いてきた。
それを聞いて俺も驚きを隠せず、「春姉なのか!!」と若干叫んでしまった。
………それから数分後、落ち着きを取り戻した。俺たちは春姉、つまりハルのパーティーメンバーのところに来ていた。パーティーメンバーは三人で、その全員が女性だった。
リアルでも知り合いだということを事前に聞いていたので挨拶もリアルのことが混じる形になった。
「初めまして、ハルの従弟の桜です。いつもハルが迷惑をかけていて申し訳ありません。プレイヤーネームもサクラなのでこれからよろしくお願いします。」
真ん中辺りのハルの話のところで慌てたようすで「私迷惑なんてかけてないよ!!」とハルが言うが周りから呆れた目で見られてぐうの音もでないようすで黙った。
そしてハルのパーティーメンバーが一人ずつ自己紹介をしてくれることになった。
最初に話初めたのは一番大柄なひと。
「私はハタハタという。リアルではハルのクラスメイトで一緒にいることが多い。武器は片手剣で、クラスはガーディアンだ。よろしく。」
次はゆったりとしたローブを身に纏った女の子だ。
「私はアロマです。ハルのクラスメイトで魔法使いです。クラスは賢者です。よ、よろしくお願いします。」
3人目は小柄でぴちっとした服を着ている子。
「私はノノ。ハルのクラスメイト。クラスはアサシンで武器は短剣二つ。よろしく」
パーティーメンバーが終わるとハルが自己紹介することになった。
「改めて、ハルよ。クラスはパラディンで、武器は両手剣よ。ほら、私もしたんだからあんたもちゃんとし直しなさいよ!」
そう言われ、俺もすることになった。
「サクラです。クラスはまだとってません。生産職で、武器は剣と弓です。よろしくお願いします。」
その後、いろいろ話をした。
最前線は何処まで行ったのかとか、どのクラスがいいかとか。
そんな風に放していると、ハルが思い出したように言った。
「そういえばサクラって生産職なのよね。どんなの作ったか見させてくれない?」
それに他の3人も同調して言う。
「ふむ、確かに見てみたくはあるな」
「ちょ、ちょっとだけ見てみたいとは思いますけど……」
「見てみたい」
結果、俺は自信があるものだけを見せることになった。
そして俺が出したのは、翁魚討伐のため作った剣、黒精剣だ。
「これが俺の作った中で1番出来のいいやつだ。もっとも今の俺には使うことはできないケド。」
そしてその性能を見て一番驚いていたのは一番冷静そうだったハタハタだった。
「なんなんだ、この性能は!なんで、初心者が最前線よ並みの性能を持った剣が作れるんだ!」
そう言って俺の肩を持ち、揺さぶりまくる。そしてそれは他のみんなが止めに入るまで終わらなかった。
「オホン取り乱してすまなかったな。1つ質問がある。」
そう言って少し間を開けてハタハタは言った。
「この剣を売ってもらうことは可能か?」
それに対してハタハタのパーティーメンバーは滅多に見せないハタハタの真面目な顔とそこから放たれた言葉の驚いた。
「ちょっとあんたなに言ってんの!!」
「さすがにそれはダメだと思う」
「だ、ダメですよぅハタハタさん」
少し動けばキスできるくらいの距離で顔を近づけながら鼻息荒くハタハタは俺に懇願した。
俺は年頃のせいかその距離に少しドキドキし、ハタハタの勢いにタジタジになり、黒精剣を売る許可を出した。
「良いんだな?ほ、本当にいいんだな?!あっ後でやっぱり……ってのは無しだぞ!!」
俺が許可を出したことに狂喜乱舞していて、普段とはかけ離れた姿を見せるハタハタを呆けた表情で見つめるパーティメンバーたち。
……そんなカオスが2、3分ほど続き、正気に戻ったハタハタと俺は机を挟んで黒精剣の取引の話をしていた。