生産職と新武器作成と翁魚討伐
リアルでの次の日。
鍛冶職のクエストに参加できるようになったのでそのクエストが発生する工房へ行くことにした。
そこは表通りから少し離れたところにある一軒の家。
その家に入ると一人の男に出会った。その男こそが鍛冶職クエストのキーマン、ダイエモンだ。
「なんだ?武器でも買いに来たか?」
「いや、鍛冶を教えてもらいに来た」
そう答えるとダイエモンは「ちょっと待ってろ」と言い、奥から1つの湯飲みを持ってきた。
「これを割ることが出来たら教えてやろう。」
どうやらこれでステータスを確認するようだ。俺はそれを掴み、軽く力を入れる。
するとバリンッと音を立てて湯飲みは割れた。そしてクエストを受けるか受けないかのボードが出てきたので受諾する。
「ほう、壊せたか。いいだろう、教えてやる。だがまず一流の鍛冶師は自分で素材を取ってくるもんだ。そこで3日以内に鉄10個、銅20個、石炭30個もってこい。それを使って教えてやる。」
宿に帰り、規定数の鉱石を持っていく。
すると、ダイエモンが「付いて来い」と言い、工房の奥の部屋に入っていく。
付いていくとダイエモンの前には金槌などの道具をかけている丸太が置いてあった。
「こいつはハーディーログ。鍛冶道具を置いとくもんだ。それじゃあ説明をするぞ。」
「まず金属をインゴットに換えるには燃料として石炭が必要だ。石炭は鉱石2つに付き1つ使う必要がある。石炭を炉に入れ、インゴットにしたい鉱石を炉に入れる。するとインゴットが出来る。インゴットは鉱石二つで1つ出来る。インゴットが出来たらはさみで持って鎚で叩いて整形していく。これが基本中の基本だ。他の鉱石に関してはこの本に載っている。」
そう言って、『鍛冶師の基本事項~鉱石と炉の温度~』という本を渡してきた。
それを受け取り、インベントリにしまう。
「ほれ、実際にお前に持ってこさせた鉱石を使ってやってみろ。」
そして、ゲーム内時間で2時間後……
「ようやく形になったな。応用も教え終わった。これでお前はすべての武器が作れるはずだ。だが日々研鑽を続けなければ意味が無い。がんばれよ。」
そんなダイエモンのありがたいお言葉を胸に、俺は工房を後にした。
その後、俺はひたすら生産職の特殊クエストを受け、次々とスキルを手に入れることに時間を費やした。
木工、料理、細工、裁縫、錬金、薬剤、etc…
さらにそれらのスキルのレベルが5を超えると、オリジナルの武器、防具の製作や調合のレシピなどが作れるようになった。作ったアイテムの一部は自動販売露店を使い売り払った。そのおかげでかなりの金額を稼げた。
そして、ゲーム内時間で7日目、鍛冶スキルがレベル10を超え、中級鍛治を取れるようになったので俺は初めて工房の個室で強いオリジナルな剣を作ろうとしていた。
早速、熱した炉に軸となる火精石を入れ、インゴットにする。そして棒のような形にすると、今度は今回作る剣のベースとなる黒曜石を加熱する。
最初の頃は黒曜石は鉱石ではないので、インゴットにはならないと思っていたが、ダイエモンにもらった本にはちゃんと書いてあり、今回もちゃんとインゴットになった。そして、火精石を軸にして、黒曜石のインゴットを纏わり付かせ、剣の形にする。
そしてフラーをさらに深く掘り、そこに細く加工した風精石のインゴットをはめ込み、反対側も同様に加工した水精石をはめ込む。そして少し熱して叩き、馴染ませる。水につける。そして再び熱して鍛える。水に戻し熱して鍛える。
それを何度か繰り返し、刃の部分は完成した。そして柄の部分には滑り止めのためになめした洞窟蝙蝠の皮膜を錬金スキルで大きな一枚にしたのを細く長く加工して巻いていく。最後に付与術で基本のアタック、ディフェンス、スピードを付与する。そして剣は完成した。
次は鞘の部分を作る。と言っても桐を剣が丁度収まるように加工して、その表面に唐草文様を細工として施し、ベルトに止めれるようにして完成だ。
銘は自分で決めれるので真剣に考えた末、『黒精剣』というのにした。
由来はもちろん素材だ。黒曜石と火精石、風精石、水精石で作られた剣。だから黒精剣。
黒精剣の評価は7。ステータス要求値は攻撃25。
ATKは+30
特殊効果は無くて属性は水、火、風の3つ。
特殊効果とは武器、防具に使う素材によって付く物でさまざまな種類がある。属性も素材によって変わるが、ドロップアイテムの場合ランダムだったりなかったりする。
残念ながらこの剣は俺が装備することは出来ないので、練習で作った鉄と風精石の剣を使って狩りをして感覚を掴む。
そして残念なことに現実には宿題という呪縛があるのでログアウトしてそれの解呪を進めた。
……なお、セカフリのことが気になりすぎて全然捗らなかったことをここに記す。
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翌日7時。朝起きて一番に俺は春姉に電話をした。内容はもちろんゲーム始めたのでフレンドになってと、春姉がちゃんと規則正しい生活をしているかの確認である。
現在高校二年の春姉の中学時代は基本は引きこもり。2日、3日の徹夜は当たり前。ご飯は1日2食食べたら多いほうという酷い生活を送っていた。
高校になってからは引っ越してしまい、分からないが願わくば多少でいいのでまともに生活してほしい。
そう祈りながら3コール目、「はあぁい。どちらさまですかぁ」という眠そうな声が聞こえてきた。
「もしもし、春姉?」
「ん?まさか……鬼の桜?!」
中学時代には俺が部屋から引きずり出したり色々してたからな〜仕方ないか。
「誰が鬼だ!…まあいいや。春姉はネクスト・ステージ・オンラインってゲームやってる?」
「もちろんよ。発売当初からやってるわ。それも私はβテスターだったのよ。」
「へ~。俺も始めたからフレンド登録してくれない?」
「あら、珍しい。いいわよ。じゃあ今から現実時間で3時間後に初めの街の時計台で待ち合わせね。着いたら私にメールちょうだい。私のパーティーメンバーも連れて行くわ。」
「分かった。じゃあな。…そうそう、ちゃんとき「ブチッ……ツーツーツー」
生活のことを聞こうとしたら切られてしまった。……怪しい。
とりあえずゲームの中では4時間半くらい時間があるのでログインして、今日は以前発見して以来手を出していない湖にいる翁魚ディノウルスを討伐する。
そのために以前洞窟で倒した鉱石アリの甲殻を使って作った胸当てを装備する。そして湖まで行き、潜る。するとディノウルスはまっすぐ突っ込んでくるので、横に避けてエラめがけて剣を突き立てる。
しかしHPは殆ど減らなかった。そこで剣を杖の代わりにして内部で炎魔法のフレイムを使う。
するとHPが一気に2割ほど減った。その瞬間ディノウルスが体をひねらせると弾き飛ばされ、HPを5割ほど削られてしまった。
しかし自作の中位ポーションを3本使い、全回復させてまた挑む。
しかしさすがに二つ名モンスター。魚系のモンスターを召喚して時間を稼ぎ、スキルで回復してきた。
そして体内に打ち込む魔法をいろいろ変えながら死にそうになったら逃げるというトライアンドエラーを繰り返し、倒しきるまでに3時間半ちょっとかかってしまった。
ドロップアイテムは翁魚のウロコ20枚、牙5個、ひげ10本、骨3本だった。
ちなみに精霊石や魔石など魔力を含む素材を使うと杖のように魔法発動の媒体に出来る。杖がないと下位魔法までしか使えない。魔法は下位魔法、中位魔法、上位魔法がある。
そして、そのまま湖底を探索していると洞窟の入り口を発見した。
……俺は二つ名のモンスターを倒したことで調子に乗っていた。
その洞窟にいたのは今の最前線プレイヤーでも勝てるかどうか分からないモンスターだった。
死ぬ前に俺に出来たのは鑑定で名前とそのレベルを見ることだけだった。
その名は「古代帝霊 チャンネン」レベルは70。最前線のプレイヤーの平均レベルが65前後だ。
気がつくと初期リスポーン地点である、噴水の前に戻ってきていた。
デスペナルティでステータスが下がってしまったのでそれが直る30分間でレベルアップした分のspを攻撃に振り、アイテムの補充、装備の整備や売却金の回収して商品の補充もする。
そしていつもの弓も背負い、レべリングをしようと歩き出したとき、1人の大剣使いとその取り巻き2人が声をかけてきた。
「オイオイオイこいつ弓使ってやがるぞ!馬鹿なやつだな」と大剣使い。
「オイそこの弓使い!おい!お前のことだよ!」と取り巻きA。
「アニキ、やっちゃいましょうぜ!」と取り巻きB
……こういうやつらは非常にめんどくさい。現に周りの初心者プレイヤーが怯えきっている。
下手に返答するとさらにめんどくさいので無視して歩き出す。
すると……さらにめんどくさい事態になった。つまり、絡まれたのだ。
「オイこらお前に言ってんだよ!」
あまりにもうっとうしかったので「……なんだよ。」と思わず返事をしてしまった。
「不遇な弓使いのお前に嬉しいお知らせだ。お前、ポーション売ってんだろ?俺らが買ってやるよ。」
……何を言ってんだ、こいつは。確かに俺は作ったのを露店で売っている。だが、こんなやつに売るほど金に困っているわけじゃない。確かに弓は矢を何本も買わなければいけないが、羽と枝と石で作ることが出来る。
それにひたすらモンスターを狩っていたからドロップアイテムでも稼げる。
……コイツらはバカなのか?
そもそも俺が剣を装備してるのが見えていないのか?
さらに木工スキルの練習で矢筒を作ったのでリロードにも時間がかからない。
何より絶対安く買い叩かれる。というわけでコイツらに売る気はない。
「悪いが、お前らのようなやつに売る気は無い。」
だからそう答えた。
すると、何故か大剣使いは激昂した。
「だから、最前線プレイヤーである俺らが買ってやるっつってんだろ!さっさとよこせやゴラァ!」
「立場分かってんのかコラ!」
「兄貴やっちゃいましょうぜ!」
そして何故か取り巻きも一緒になって威圧してくる。
「だからあんたらが最前線プレイヤーだか何だか知らないが、売るつもりは無い。分かったらさっさと帰ってくれ。」
そう言って立ち去ろうとしたらいきなり目の前にウィンドが現れた。
……決闘システムのものだ。
相手が勝つと俺の持つアイテムを渡すという条件だった。
すると近くにいたプレイヤーが話しかけてきた。
「なあなんた、さっさと売っちまいな。その方がいいよ。」
親切な人だった。だが、俺は苦笑いをして承諾ボタンを押した。
すると周りの景色が変わっていく。やがて広大な白いフィールドに変わった。
「オイオイホントに良いのかよ、俺らとの決戦を受けちゃってよ。」
「別にかまわない。俺が勝てばいいんだから。」
そう、勝てばいいのだ。幸いこのゲームはいくらレベルが上がろうと防具をつけていない急所に当たればちゃんと死ぬし、もし死ななくてもスタン状態になるので隙が生まれる仕様になってる。
俺は矢筒を出し、戦う準備をする。
戦う準備が整うと俺と大剣使いは10mほど離れていて、その間に数字が現れ、カウントダウンをし始めた。
そして、カウントダウンが0になったとき、大剣使いが一直線に突っ込んでくる。
それをダッシュを使い、横に走りながら、弓を構えて戦技・強撃を使い、矢を放った。
それは大剣使いの足首を貫き、地面に縫い付ける。
そしてそのまま距離をとり、戦技・三矢縫いを放つ。
するとそれらが防具の無かった喉仏の周りに刺さり、そのHPを一気に7割ほど削る。
さらにスタン状態になっているうちに近づき、腰にある剣を抜き放ち、戦技・居合い一閃をして相手が振りかぶってる大剣をパリィする。
さらに連撃を加えて最後に剣の側面を使い、喉に刺さってる矢を思いっきり叩き、さらに深く挿し込む。
その結果、残ってるHPをオーバーキル気味ですべて消し飛ばした。
そして周りが元に戻ると俺の前には勝者・サクラという表示がされ、その隣に賞金受け取りのボタンが出てきた。
それを押して立ち去ろうとしたとき、「俺は負けてねぇ!」という声と共に大剣使いの長剣が目の前に迫っていた。