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プロローグ
何かの目が私をみつめている。
それは私の身体に、まるで棘のように鋭く食い込み、矢じりに似て抜けることのない視線だった。
冷たいものが体内を巡り、じわりと熱を持つ感触。
そして身体の末端を、虫にかじられているような痛みがある。
朧げな意識が冷めていくと、信号が私の脳内を走り抜けた。
「いけない。」
なぜいけないのか。
直感でしかないが、きっと何か良くないことが起きている。
いけない、いけないと、拒絶を示す私に、その目は形を歪めて囁いた。
「君はまた、生きねばならない。」
生暖かい水滴が、私の身体の末端を伝う。
生きる。生きる?生きねばならない?
いいや‥‥‥きっと違うはずだ。
では、違うのは、何か?
ーー信号の交錯した身体の奥深くで、鼓動が一つ鳴った。