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「いやあ。いひひひ……。まあそう怒らないでちょうだいよ、魔剣兄さん。私の恋愛成就に手を貸してよお。もう既にラブ・ストームは吹き荒れてるんだよお。自慢のラブ・ストラッシュを放ってよお。夜通しラブ・ストーリーを語り明かそうよお」


 え、さんざん俺に期待して損したみたいな事言ってたくせに、自分への協力要請は諦めてないのか。なんて図々しい奴だ。


「それに魔剣兄さんてなんだ。俺は責王(せきおう)の剣。血と魂をすする魔剣。相応しい者が手にすれば神と世界を滅ぼしうる黒の……」


「私、イイル君と巡り合えて本当に良かったと思ってる。同じクラスになるなんて前世からの因縁だよね。知ってる? あの人すっごい格好良くて頭も良くて、超優しいの。こういうの運命って呼ぶんだろうなって、やっぱり思っちゃって。でも私、ちゃんとした恋愛てした事なくて……。ぶっちゃけ、二人がどこまでやっていいのか分からなくて。順序があるはずなんだけど、聞ける相手もいなくて。だってさ、周りの連中の彼氏自慢の話とか、くだらないじゃない? 聞くだけ無駄っていうか、耳に入るだけで腹が立ってさ。なんなんだろうね、ああいう人達って。アンタ達の人生ってその青二才の馬鹿の事しかないの? って、私おかしくって。でね、イイル君と私ってどうも相性がいいみたいで、こないだね、私消しゴム落としちゃって、そしたらね、イイル君のね、足元に転がっていったの! すごいよね!」


「うるせえよ! 中身の無い事ばかりダラダラ喋りやがって!」


「あひん」


「はっきり言ってやろう。お前はそのオスと結ばれる事はない! お前はそのオスに告白する事も出来ず、周囲の恋人達を馬鹿にする振りをして自分を慰め、実際にはなんら浮いた話もないまま大人になる! そして食べる為に就職した先で、父親よりも年上のオスに生まれてはじめて口説かれて、経験不足と思考力の無さからすぐに体を許す! そして久々に再会した友人に『私は年上にはモテるんだけどね~』とか調子こいてぬかし、友人の方も『あ、こいつ無料の愛人にされてるんだな』と察しながらもてきとうに話を合わせ、自分の結婚報告は今日はやめておこうと思うのだ。さらに時は過ぎ、歳を重ね、オヤジにも相手にされなくなったお前は、貯金もなく、友人もおらず、仕事のスキルもなく、趣味も楽しみもなく、体は衰え、親に頼る事も出来ず、ペットには懐かれず、家事も面倒になり、ゴミが溜まり、家賃も」


「うわーーーーお!」


 小娘は俺を握り、ぶんぶん振り回し、自分自身もグルグル回った。


 数分間そうして暴れた後、ストンとしゃがみ込んだ。俺を胸に抱いて。


「たすけて……くれても……いいんだけど……?」


「……………………」


「ね? たすけてくれるでしょ?」


 小娘は俺の柔らかな刀身を撫でながら言った。


「ね? いいでしょ? 私達、もうこういう関係になっちゃってるんだし。君だって嫌いじゃないでしょ?」


 すべすべした手が俺の刀身を前後にこする。


「ね? いいよって言って? ね?」


「……………………」


「ね? ね? いいでしょ! ね! いい!? いい!?」


 ごしごし激しくこすってきやがって、こいつは!


「やめんか! ああもう! 分かった分かった」


「ありがと~! 良かった~。ふう~、あぶなかった。これで安心」


「じゃ、行けよ」


「へ?」


「そのお前の意中のオスに愛を告白しに行けよ」


「無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理」


 小娘は抑揚のないロボットのような声で否定の言葉を連発した。瞳からも光が失せている。


「無理ってなんだよ。一発で成功しろと言っているわけじゃないぞ。とにかく告白せにゃどうにも進まんだろう」


「無理デス」


「意味が分からんぞ。好きなんだろうが」


「好きデス。でも無理デス」


「お前なあ、あのな」


「はあぁ~~~~~~~~っ」


 俺の言葉を打ち消すように、盛大にため息をつく小娘。


「私……ただ彼を見守ってるだけでいいかも」


 なんて、ぽつんと、切なげな表情で、言葉を漏らした。


「お前ーー! 俺に助けてとかあれだけ言っておきながら、なんなんだよーー! 頭おかしいんじゃないのか!? 頭にくる奴だなあ!」


「そそ、そうやって怒るの、いけない! 私のこの感じ、女の子らしさ! それを分かってあげて上手に助けるの、男らしさ! それを知るべき!」



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