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俺がこのありきたりな異世界冒険をぶち壊してしまっている件  作者: でれるり
第1部 〝 異質者との冒険が始まってしまった件〟
8/13

7「抱きつかれたまま」

 





 男性は変な声を出しながら地面へと倒れ込んだ。頭とケツを強打した模様──。


「⋯⋯ちょっと、変な声出さないでくれる? 気持ちが悪いわ」


「い、今のは不可抗力でしょうがぁ⋯⋯いでで」


 男性はケツをすごい速さで擦りながら、まるで陸に上がった魚のようにじたばたしている。ざまあみろ、うざ眼鏡。


「とにかく、あなたが剛林 亜蓮じゃない事が分かったからこの件は無かったことにして帰るとするわ。⋯⋯掃除代払ってもらうんだから」


 すると、男性は勢いよく自分の身体を布団で隠した。


「身体で?」


「んなわけあるかぁぁ!!」


 もはや漫才である。

 一応言っておくがこの二人は初対面だ。なのにこの息ぴったりのツッコミとボケ。これは何かの縁なのか?


「⋯⋯はぁ、君も遂に身体を求めるようになってしまったのか。あれから成長したねぇ。⋯⋯グスン」


「誰も求めてないし⋯⋯。てかあれからってなんであんたが私の幼少期知ってんのよ。今日会ったばかりだからね?」


「いやぁ、君とは以前にどこかで会ったことがある気がするんだが⋯⋯」


「一度も会っていません」


 ルーシアが会話を一刀両断し、無言の空気が漂う。






 ──ルーシアがこの家に来てから軽く数時間は経っただろう。

 証明もできず、ずっと変な話が続いていたのでルーシアは少し疲れ気味であった。


「じゃあ私そろそろ帰るね。ばいばーい」


 ルーシアは急に帰る支度をし始める。

 その行動に困惑し始めた男性は突然、ルーシアの目の前に立ち、眼鏡を外した。


「⋯⋯君を帰らせるわけには行かない。まだ俺が剛林 亜蓮であるかどうかの証明が終わっていない。⋯⋯どうすれば君は認めてくれるんだ?」


 するとルーシアは手をとめて一つ溜め息をついた。


「あなたがどうこう言おうと送られてきた写真と顔が全然一致してないもの。本人だなんて認められるわけないじゃない。⋯⋯だからこの話は無かったことにしてって何度言ったらわかるのよ」


「⋯⋯」


「⋯⋯じゃあ帰るから。亜蓮くんが帰って来たらよく言っといてね。それじゃあ」


 ルーシアはそう言って男性に背を向け、ドアから出ていこうとした。──が





「──!!!!」


 突然、男性がルーシアの後から抱きついたのだ。

 ルーシアは困惑し、何が何だか分からなかった。


「ちょ、はな、離しなさいよ!! なにいきなり抱きついてんのよ!! やめ、やめてってばぁ!!」


「⋯⋯離さないよ。だって離せば君は帰る。そして君とはもう会えない。俺が生きる人生で二度と会うことは無い」


「だ、だからって抱きつくことないじゃない!!」


 ルーシアは男性を引き離そうとするが、男性の力は尋常ではなく、全く離れない。


「⋯⋯!? この力、普通の人間じゃない⋯⋯」


「だって俺、剛林 亜蓮だから。⋯⋯いかにもボディービルダーにいそうな体つき、だろ?」


「!?」


「君の名前はルーシア・インディード。役職は異世界冒険管理案内事務所の社員。会社内では高嶺の花的存在で、モテモテ社員。⋯⋯いっつも俺のお父さんがその話しててさぁ」


 え? なんで? なんであなたが知ってるの? お父さん? え?

 ルーシアの頭はさらにこんがらがる。何故この男は私の隅々まで知っているのか?


「ルーシアは会社では丁寧な口調だけど裏ではすっごいキャラ崩壊してるってお父さんが笑って話してくれるよ⋯⋯」


 おいおいおいのおい。すっごい貶されてますな。裏を暴かれている!? 怖すぎんだろ。

 すると、ルーシアの頭にある一人の人物が浮かび上がる。


「⋯⋯あなたのお父さんの名前は?」


「え? ゴウバ・ヤーシーだけど?」


「えぇぇぇぇぇぇ!!!!」


 ルーシアは男性に抱きつかれたまま声をあげた。家中に響く声で。


「ゴウバ・ヤーシー部長があなたのお父さんだったなんて⋯⋯」


「まぁね。俺のお父さんはずっと前から異世界の会社で働きたいって言ってたからなぁ」


 男性は腕を組んでウンウンと頷く。


「いや、異世界で働きたいからってそんなに簡単に働けるものなの? 現に働いてるけど⋯⋯」


「だって俺のお母さん、異世界人だもん」


「おぇぇぇぇぇぇ!!!!」


 ルーシアは再び莫大な声をあげた。今度は外まで聞こえる声で。


「⋯⋯な、な、なま、名前は?」


「ゴウバ・ヤーシーノ・ツマデースだよ」


「私の友達だぁぁぁぁぁぁ!!!!」


 まさかのお父さんもお母さんの二人ともがルーシアと同じ会社で働いているという奇跡。




 ──ということは。




「⋯⋯じゃあ、あなたが」


「そう。剛林 亜蓮。⋯⋯やっと信じてくれたね」






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