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俺がこのありきたりな異世界冒険をぶち壊してしまっている件  作者: でれるり
第1部 〝 異質者との冒険が始まってしまった件〟
3/13

2「私、人殺ししました」

 





 翌日、ルーシアは日本へ行く準備を始めた。

 バックの中身は契約書、ペン、水、金、連絡用超小型ウォッチ、大量の異世界石のみ。必要最低限のものだけ入れて軽くする。それがエリート社員の心得。


 ルーシアの部屋は、男性や女性がいつ襲ってくるかも分からないので、ものすんごく隔離されている。勿論、彼女が要望した。




 この仕事はただ案内をするだけで、別について行くわけでもないのですぐに帰ってこられる。だから長期間部屋を空けておく必要もない。

 ルーシアは玄関のドアを足で蹴飛ばして閉め、寮の最上階を目指す。最上階には異世界間を移動するための空間が備わっているのだ。





 ──相当の数がある階段を上りきり、最上階へと辿り着いたルーシアは、バックから大量の異世界石を取り出して、空間の真ん中へと移動した。

 空間の真ん中へと移動するとルーシアはど真ん中の地面の窪みの中に大量の異世界石を入れる。

 ⋯⋯すると一瞬にしてルーシアは時空間に移動した。その時空間はうねってうねってうねりまくる。この時空間を移動している速さは測定不能。速さのせいかルーシアは衝撃波を出している。


「⋯⋯そろそろね」


 超小型ウォッチを見ながらルーシアは宙にふわふわ浮いている。この空間は自分では制御できない。どんなにエリートであろうが無敵チート能力は持っていないし、狂人な力さえも持っていない。


 そしてルーシアの目線の先には無数の光が差している。その光に入り込み、ルーシアは消えた。






 ──しばらく時間が経って、ルーシアはようやく日本の依頼人の家の前に辿り着いた。他の惑星ならこんなに時間はかからない。約二秒で到着するところ、約十二秒もかかっているのだ。

 なんせ地球が一番会社から遠いから。


「汚ったない家ねぇ⋯⋯。お庭もきちんと整美されてないし、家に(つた)が巻きついている時点でどうかしてる」


 呆れた表情でルーシアは愚痴る。

 依頼人の家は無数の苔が生えていて、家中蔦が巻き付いている。てか、家死んでる。


「とりあえずまずは亜蓮君の部屋に移動しないと」


 しかし、移動するも何も移動するためにはまた異世界石が必要なのだが、行きと帰りの分ぴったりしか持ってきていなかったため、異世界石が一つもなかった。


「仕方ないわ⋯⋯。地道に玄関から入っていくしかないわね」


 ルーシアは渋々と死んだ家の玄関の元へと歩き出した。


 だが、蔦が邪魔してドアノブを回すことができない状態になっている。どんなに力を込めてもビクともしない。


「なんでこんな家のガキが依頼なんかしてきたのよぉ⋯⋯。ふぎぎぎぎ⋯⋯」


 結局開かなかったので、ルーシアは超小型機関銃で玄関のドアを破壊し、強行突破した。勿論、無許可ですけど。


 幸いにも一階には人が誰も居らず、ルーシアは二階へと行けるであろう階段を発見した。⋯⋯だが、階段の先は真っ暗闇で、お化け屋敷ではないのか位恐怖を感じさせるようである。

 ルーシアは恐る恐る階段を上り、遂に二階へと辿り着いた。辺り一面見渡す限り、ドアは一つしかないようだが、そのドアのドアノブにも蔦が巻き付いている。


「⋯⋯こんな不清潔な家初めてだわ」


 そう言いながらルーシアは再び超小型機関銃をドアに向けて、打とうとした。





 ──が、ルーシアが機関銃を撃つと同時にドアが勢いよく開き、中から人のシルエットが現れた。




「え」




 ルーシアの間の抜けたような声と同時に人が思いっきり倒れた音が響く。


「きゃぁぁぁぁぁぁ!!」


 その人は男性で、スリムで眼鏡をかけていて、多分依頼人ではないと思われた。

 男性の胸からは血が出ていて、苦しそうな顔をしている。


 エリート社員のルーシアが人を撃ってしまった。あの超美人エリート社員が。エリート社員が。エリート社員が!!




「──わ、私はなんて事を⋯⋯。人を撃ってしまった⋯⋯」


 ルーシアの瞳からは涙が零れた。

 今まで完璧オンリーワンを貫いてきたルーシアが人に怪我をさせてしまったのだ。


「⋯⋯社長になんて言えば」


 ルーシアは膝をつき、両手で顔を塞いだ。


 ──がその時、男性が喋ったのだ。


「⋯⋯痛ってぇ。あぁ、びっくりしたぁぁ!」


 男性は眼鏡をただしながら起き上がった。


「だ、大丈夫だった? あ、胸から血が! はやく応急処置をしないと!」


 ルーシアは超パニック状態に陥っていた。こんな経験をしたのは初めてだったので何がなんだか分からなかった。


 ──すると男性は真顔で眼鏡をクイクイしながらこう呟いた。





「あ、大丈夫ですよ。これは昼にファミレス行ってポテト頼んだ時に付いてきたケチャップです。胸ポケットにしまったままにしていたのでその弾無し機関銃の衝撃波で破裂したのでしょう。⋯⋯あ、貴方こそ大丈夫ですか? 一体何があったんですか? そんな顔で泣いて」


「⋯⋯は?」


 ルーシアは状況を理解できる状態では無かったが、この男が相当ウザ眼鏡であることは秒で察することが出来たのであった。



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