10「異世界へはおひとり様ですか?」
「もう帰りたい⋯⋯。メンタル死んじゃう⋯⋯」
「いいや、帰らせない。せっかく今認めてもらったんだから」
亜蓮はイケメンボイスでそう言い、ルーシアが帰るのを阻止する。⋯⋯まぁそれがルーシアのストレスとなっているのだが。
「──まぁ帰らないけど、都市伝説をさっさと試しましょう。もし無理なようだったら帰る」
「無理だって? ⋯⋯そんな分けないだろ。なんせ俺の十八番はTOSIDENSETSUだからね」
──都市伝説が十八番とは?
亜蓮の発言は理解できないことが多い。ていうか何故、都市伝説を英語風で言った? どーせなら英語で言えや。
ますます嫌な予感がしてくる。
「では早速明日の朝、その都市伝説を実行しようではないか!」
「ちょっと待って、今日何月何日だっけ?」
「九月十五日だけど?」
だけどって⋯⋯。一体どこからそんな自信が溢れてくるんだ?
都市伝説を試すには四月四日でないといけない。でもとっくに過ぎている。
「なら無理じゃないのよ。条件が満たされてないし。どうするつもりなの?」
不安げな目で亜蓮を見つめるルーシアなんて無視して、突然、亜蓮は指を天井に向けて決めポーズをした。
「そんなの⋯⋯」
ルーシアは唾をゴクリと飲み込んだ。なんだこの緊張感は? 無駄にドキドキする。
「⋯⋯そんなの?」
「TEKITOUに決まってるじゃないすか!!!!」
DE・SU・YO・NE!!!! はっはっは──
さっきの緊張感を返してください。
──と、まぁなんやかんやで翌日の午前三時五十分位になっちゃいました。
亜蓮とルーシアは眠気を惜しんでずっと起きていた。特にすることも話すこともなく、二人はボーッとしている。
「だァァァァ⋯⋯。眠い⋯⋯」
亜蓮が史上最高にだるそうに発言した。
「誰のせいよ⋯⋯。私だって眠いわよ。都市伝説の件、まだ疑ってるんだし」
ルーシアは亜蓮のわがままに付き合わされているといっても過言ではないのだ。半信半疑──⋯⋯いや、無信全疑のルーシアは眠気を必死にこらえている。眠ってしまったら亜蓮に何をされるかわからない。
──そして、都市伝説の四時四十四分の五分前となり、ますます緊張感が増していた。
「さぁ、お楽しみの時間が来てしまったようだな⋯⋯。あと五分で異世界へと行けるぜ」
「絶対行けないと思うに一票」
ルーシアは睡魔に襲われているので言葉一つ一つが棒読みである。
──ついに、その時が来た。あと十秒で四時四十四分四十四秒となる。
本当に都市伝説は事実なのか?
「都市伝説の時間まで十秒、九、八、七、六──」
「ごー、よーん、さーん、よーん」
ルーシアは死んでいるが容赦なく時間は進む。
──そして、
「ゼロォォォォォォ!!!!」
二人はその時間になると同時に、白い壁に触れた。
二人の声が重なった瞬間、蒼い光が二人を包んだ。
「え? なんだこれ??」
「まさか⋯⋯。ウソでしょ!?」
光は強さを増すばかりだ。そして、
──光が消えた。
「⋯⋯あれ?」
ルーシアは目を開けると、目の前には白い壁があった。
あぁ、やはり行けれなかったんだなと、察したルーシアは左側にいた亜蓮に声をかけようと振り向いたが、そこには亜蓮の姿はなかった。
「ちょ、亜蓮? どこ? どこ隠れてんのよ?」
声を張るも、ちっとも亜蓮の返事はなく、先程よりも静かになったように感じた。
「⋯⋯え、まさか」
ルーシアの察しは早かった。
そう。都市伝説は失敗してはいなかったのだ。
──亜蓮だけ異世界へと行ったのである。
「⋯⋯私だけ取り残された?」
この部屋にはルーシア以外に誰もいない。ルーシアは地球に取り残されたのだ。
ルーシア、乙。




