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城に近づくと城の前には門番らしい全身を甲冑で身に纏った者が二人立っていた。城壁は遠くから見ていたよりも大きく高さは10m程あった。門から見える中の様子は町になっていて異国の者達で賑わい活気付いていた。
中に入ると中世ヨーロッパ風の家が並びその前で出店が開かれていた。
町のガイドらしき人物が「ようこそ、アッハロスへ」と歓迎され近づいて来た!
「お客さん、この町に来るのは初めてかい?」
「は、はい」私はなんて説明したらいいか分からなかった!気づいたらこの大陸にいたと言ったら怪しい奴だと思われ何をされるか分からないからである。
ガイドは私の全身を見回し「随分と変わった服装をしているなぁ! そんな服装見たこともないよ! 旅人かい?」と尋ねるが私は曖昧に返事をした。確かに周りを見回すと布製の服とスパッツのような肌にピッタリのパンツの人が多かった。中には腰に剣を提げている者もいた!私のようにスーツの者は一人もいなかった!
ガイドは私の酒瓶を持った手を掴み「酒飲みかい? いいバーがあるから連れて行ってやるよ」と言ったが酒瓶を見て何か気が付いたようで私の手を掴んだまま人混みの中を荒っぽく走り抜けた。
出店を通り抜け民家が立ち並び開きっぱなしの城の扉から城の二階まで連れて来られ王様に合わされた。なぜ王様だと気付いたのかは見るからに王様という感じで王冠を被り白髪の長い毛とサンタクロースのような髭をたがやし赤いマントを羽織りその下には鎧を装着していて玉座に腰を掛けていたからである。しかし面持ちはとても穏やかそうで優しそうな50代くらいのおじさんの感じをしていた!民からとても愛されている王様に見えた。
玉座の間はとても広く30畳程あり赤い絨毯で敷き詰められ左右には広い階段があり玉座は一段、段差があって段差の左側には木製の扉があり部屋の右側にはテラスに続くであろう大きなガラス窓があった。そして部屋の後ろ側には兵士が全身を甲冑で覆い槍を持ち左右に控えていた。
ガイドに部屋の中央まで連れて行かれガイドは片膝を付き右手を左胸に付けた!私も真似して同じ姿勢をした。
王様は私達を心配して尋ねてきた。
「何事かね?」
ガイドは声を張り答えた。
「王様! この者が伝説の武器『聖剣』を抜かれました!』
えっ⁉︎ この酒瓶が伝説の武器⁉︎ 抜いたって気付いたら手に持ってましたけど!
王様は驚き立ち上がった
「そ、それは真かね⁉︎ 森の祭壇に納められ数々の屈強な戦士が抜こうとして挑んだもののビクともしなかったあの伝説の武器を抜いたものが現れたのだな!」
王様は私に近付き私の右手の酒瓶を調べまるで独り言のように話し出した!
「これは正しく代々伝説として語り継がれている伝説の武器『聖剣』! この世が邪悪な者の手によって暗黒に閉ざされそうな時、異世界から現れ『聖剣』を手にし邪悪な者を打ち倒しこの世に光を照らし出すだろう!伝説は本当であったのだな!」
王様は何かを考え込み玉座に腰を下ろした。
「二人共、腰を上げるがよい!」
私達は立ち上がった。
「ガイドよ、この者と二人で少し話しがしたいので後にしてはくれぬか⁉︎」
ガイドは礼をし後にした。
「勇者よ! 聖剣を持たせてくれないか?」
いつの間にか私は勇者になっていた!
「王様! 大変申し訳にくい事ですがこの聖剣は私の手にくっ付き離れないので御座います」
「ほう! そうか! そうか⁉︎」
王様はまた私に近付き「そのままでは不便であろう! 少し引っ張ってみてもよいか?」と言い聖剣を引っ張った!私も外れて欲しいと願い王様とは逆に引っ張ったが外れることはなかった。
王様は少し息を切らし玉座に腰を下ろした。
「やはり、選ばれた者しか扱えないようになっているのだろう! はて勇者の名は何と申すか?」
「私の名は鏑木 シュンと申します」
「鏑木 シュン⁉︎ 随分と変わった名前であるな! 異世界ではそういった名前が主流なのかのぉ! ではシュンよ!お主は異世界からこちらの世界に降りてきたのであるな?」王様は私を勇者として認める為に一つ一つ質問をしてきた!
異世界?私はその質問に答えを持ち合わせていなかったが私の居た世界が王様が言うように異世界であるのであれば異世界なのだろうと思い返事をした。
「では、こちらの世界の事は殆ど知らないのであろうな⁉︎ 今、この世界では魔王が復活し日に日に魔物が増え民を苦しめておる! 魔王はまだ復活したばかりで力が完全ではないとはいえ強大な力を持っておる! それを倒せる者は勇者シュン! お主だけなのだ! 是非ともお主には魔王を倒し苦しめられている民を救い世界を平和にしてはくれぬか⁉︎」
私は今の自分なら簡単に倒せるであろうと思い安易に返事をした!
「そうか! そうか! ありがとう! ありがとう! 話しは変わるがお主は結婚はしておるのか?」
突然の話しの切り替わりに私は驚いたが正直に話した!
「では、私の娘と結婚してはくれぬか? まぁ、お互いの気が合えばの話だが⁉︎ それとそなたの魔王退治が終わってからでも構わない」そう言うと兵士に向かい娘を連れてくるよう命令した!
け、け、け、結婚!私が結婚⁉︎しかも王様の娘っていったらお姫様ではないか! 落ち着け、落ち着け!もし、私のタイプでは無かったらどうする⁉︎ はたして私にお姫様をふることなど出来るのであろうか⁉︎ いやいや、もしタイプだったらどうする⁉︎ これは一世一代のチャンスではないか⁉︎