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終わった!私の人生はこれで終わった!せめて一思いに一撃で殺されたい!
とうとう怪物の爪が私に襲い掛かってきた!目の前のモンスターは腕を高く上げその鋭い爪を私めがけ振り下ろしてきた!
私の人生はいったい何だったのだろうか⁉︎思い返せば高校時代はたいした青春もおくれずただ学校と家を行ったり来たりの日々、彼女もおろか友達すらいなかっ!って振り下ろすの速すぎ!私のもう目と鼻の先まで爪は振り下ろされていた!私は目を閉じた!
《キーーン》
あれ?私は生きてる!
私は目の前の光景に驚いた!私の意思に反し独りでに酒瓶が怪物の爪を受け止めているのである!いや⁉︎これはもしかしたら生きたいという私の意思が最後の悪足掻きをしたのかも知れない⁉︎しかし、やはり酒瓶は勝手に動き出し爪を払いのけ私共々、3mはあろうかという怪物の頭上より高く浮き上がり怪物目掛けて酒瓶を打ち下ろしたのである!
怪物の頭に酒瓶は直撃しドーーンという地響きと共に怪物は倒れながら幾つかの小さく黒い発光した球となりまるで浄化されたように消えたのである!
だが驚いているのも束の間、すぐに後ろを振り向き襲い掛かってくる二体からの爪の連続した攻撃!また酒瓶は独りでに動き出し、いとも簡単に爪を捌いていった。だが私にも怪物の攻撃がスローモーションとまではいかないがハッキリと見えていた!このまま酒瓶に頼ってばかりではいけない!私も怪物の攻撃を避けるように左右に体を動かした!
なんて体が軽いんだ!かつてここまで体を動かせた事があっただろうか⁉︎更に襲い掛かってくる怪物の攻撃を私はまるでアクション映画のCGのように避けた!いける!いけるぞーー!今の私とこの酒瓶があれば目の前の二体の怪物なんて目じゃない!
私は爪を避けながら左の怪物の足元に飛び込み怪物の右足を酒瓶で払い怪物はよろけながら右の怪物の頭と頭がぶつかりそうなところで高くジャンプし二体の怪物の頭と頭を横一線に叩きつけた!
私は三体もの怪物を撃破し両手を高く上げ喜んだ。
「イャッホーー」
今の私ならなんでも出来る!
私は森の出口まで走った!時には宙返りをして走った!まるで子供のように無邪気に走った!
森の出口が見えそこから広がっていく光景に驚愕し走るのを止め一歩また一歩と歩み始めた!
森を出ると壮大な草原が広がり柔らかい風に草が揺れ正面には海が見えまるで海が今立っている場所よりも高く見え正面より少し左側には城壁で囲まれた城が見えた。そして右側には遠くで山々が連なっていた。私はこの様な光景を今まで目にした事がなかった。まるで夢の中にいるような感じを覚えた。そこで私は気付いた。気付いたというよりも思考を巡らせた。ここは夢の中なんだ!なんで今までこんな事も気づかなかったのだろう!それは、これ程まで現実的な夢を見た事がなかったからである。そもそも夢とは寝てる最中に思考を巡らせその思考を目で見ているような錯覚を感じさせるもので夢と気付いたときには大抵目を覚まし現実に戻らされるものである。そして良いも悪いも続きを見たければ目を閉じ、また思考を巡らせ想像するものであるのだが今の私はこれが夢だと気付いても現実に戻らされる事がなく更には夢の中で思考を巡らせているという矛盾があるのだ。では、これが夢ではない場合、それは天国や地獄いわゆる死の国である場合である。死の国、それは誰もが現実で見た事がない国であり実際は想像と掛け離れ今いる場所が死の国である場合、私は死んだという事になるのだ!昨晩に私は酔っ払い何かの拍子で亡くなったりしたのであれば今みている景色もうなづけるのではないだろうか⁉︎昨晩という考えに違和感を感じた!そもそも死の国にいる場合、死んだ直後にここに来たのであれば現実的には昨晩ではないのかもしれないからだ!しかし私は自分が死んだという事には納得は出来ないのである。
そもそも何故このような考えに至ったのかというと森の中であれほど軽快に動いたのに体に負担なり痛みがあってもおかしくない筈なのにさほど感じてないのである。この『さほど』ってのが現実味を感じさせていたのである!全くといってない訳ではないのだ!そして今、目にしている光景である。割と世界遺産など好きである私だがこのように広大に広がる緑そして遠くからでもわかる大きい城を見た事がないのである。このような場所ならテレビなどで紹介されてない訳がないのである。
私は今の現状を理解するために城に向かい歩を進めた。