噂の美形親子が、うちの近所の女性陣のハートを震撼させている件について。
これは連載中の「リトライ中です。多分・・・」
ブックマーク300記念&連載1周年記念の短編デス。
いつもありがとうございます。の気持ちを込めて書きました。
楽しんでいただけたら幸いです。
僕の名はケイン・グリース。
15歳。学生。
金髪で大きな青い目が特徴で(周りに言わせれば可愛い系らしい)自分でもそこそこイケてると思う。
でも、(それなのに)なぜか彼女はいない。
3人兄弟の真ん中で、上と下に姉と妹がいる。
両親は健在だが共働きで仕事で忙しく、歳の離れた姉に面倒みられていた為
この年になっても姉には未だに頭が上がらない。
4つ下の妹は近所でも評判の美少女(彼氏持ち)だが、妹にあこがれを持つすべての人の夢を壊すようで悪いが、兄である僕から言わせればアイツは性格悪いただのマセガキである。
そして、
ここはシャハム国の王都。
スバード地区。
観光名所や隣のダブラーン地区(貴族街)の様に高級商店などは無いが
この地区には王立騎士団の拠点施設があり、比較的治安も良い為
女性や子供たちだけでも、安心して出歩ける地区として認識されている。
そして、人が集まるところには店が集まり、店があるからとますます人も集まる。
ましてや、この地区には有名な2つの学校がある。
今まで官僚などを多く輩出してきた バルト・フリーダ記念学園。
魔法を扱える人材育成を目的とした 国立魔法学校。
その学生らが利用するのだ。
お手頃価格で尚且つ多種多様な品々を扱う店が必要とされた。
ゆえに商店街や食堂、市場がこの地区に集まるのは自然の摂理であろう
今では、オシャレな雑貨から方や防具まで買えると評判で
平日でも結構賑わっている人気スポットだ。
そう言う僕は・・・
記念学園の学生であり、実家は商店街で食堂を開いているという根っからの地元っ子だ。
なぜ僕が急にこんなことを語りだしたのか?
気になる方もいるだろう。
きっかけは3日前。
この日僕は担当教授に呼び出されていた。
僕は、かねてより学園の修士課程に進み、将来は教職に就きたいと考えて教授に相談していたのだが、
成績の方も入学以来学園で10番以内をキープしていた為か、教授の反応も良かった。
その為、いい返事がもらえるのではないか?とちょっと浮かれながら訪れたのだが・・・
人生そんなに甘くはなかったようだ。
教授によると、なんと・・もう一人希望者が現れたのだという。
それも、学園関係者の身内だという人物。
なんだよそれ・・無理。 終わった・・。
そんな考えがよぎったが、僕を評価してくれているという教授はある提案を僕にしてくれたのだ。
それが【 教授が推薦できるような面白い論文を書き上げてこい。】というものだった。
もちろん。僕の答えはYES。やるしかない。
そうなれば、一刻も早く面白いテーマを見つけ出さねばならない。
で、話題集め・・を始めたのだが
とても気になる噂を聞いた。
そして、不可解な事に気づいた。
まず手始めに いつものように「ここ最近の気になること」を姉に聞いてみた。
姉は、嫁に出てすでに十年、3人の子持ちで今では立派な貫録を身に着けた主婦である。
主婦の連絡網もあって、かなりの情報通である。
それに半年前から騎士団の食堂でパートを始めていた。
姉からの噂によると騎士団に美形の魔法使いがいるらしいのだが、その魔法使いが相当のたら̪しらしい。
もともと愛想のいい方だったらしいのだが、なんでもここ最近から だれかれかまわず褒めるらしいのだ。
もう いいおばさん年齢のハズの姉も頬を染めて
うっとりとその言葉と情景を思い出しているようだ。
そして、うちのマセガキ妹。が・・・
なんと実家の食堂を手伝っているらしい。
今までどんなに忙しい時期でも、手伝わなかった妹が・・である。
両親にリサーチしてみれば
なんと・・ここにも美形の魔法使いが現れるらしかった。(こっちは少年らしかったが)
そして、こちらも褒めていくのだそうだ。
いつも表情に出さないその魔法使いの褒め言葉聞きたさにあの妹が手伝いをしているらしいのだ。
しかも、彼氏とのデートを断って!
そして、調査を進めてみると・・それはスバード地区一帯で起こっているようなのだ。
名付けて『 たらし事件 』が!
そして、いつも同じ人物の名前が出てくる。
魔法騎士団のノア・ウィーザー
魔法学校学生ジークフリート・ウィーザー
この二人。親子らしい。
謎が謎を呼ぶ。
どうして最近からこの親子が急に『 ここいらでたらしている 』と噂になっているのだろうか?
以前(半年前)にはそんなことなかったようなのに!だ。
おもしろい。面白すぎる・・・ワクワクしてきた。
そうして僕は、この二人を観察してみることに決めた。
某日昼休み
実家の食堂でジークフリート・ウィーザーを発見。
日替わりを注文したようだが、給仕していたうちの母親に何やら囁いた。
うっ。まんざらでもない顔で嬉しそうに母親が頷いている。
なんだ?何が起こった?
その後、食器を下げながら(普通の客は皿なんか下げないが、さすが たらし というべきか?)
母親・・と、奥で調理していた父親にも声を掛ける。
なんということだ・・父親も嬉しそうにしている。
絆されたのか?「またおいで」と声を掛けていた。
後で、やり取りを聞いてみたら、料理を褒めていくのだそうだ。なるほど・・
某日昼過ぎ
今度は魔法騎士団のノア・ウィーザーを発見。
お茶やお菓子を出す休憩所で、どうやら紅茶を飲んでいるようだ。
給仕しているお姉さんに、やはり囁く。
どうやらお姉さんはハートをやられた様だ。真っ赤になってフラフラと戻っていく。
その後も違うお姉さんを次々と落としていった。
皆、世話をして声を掛けられたいらしく
数が半端なかった・・
1ヵ月後
僕は無事に教授に推薦してもらえることになった。
でも、その後も親子の観察は続けている。
だって、この親子。
実に興味深いのだ。
そして、僕は今日もペンを持つ
噂の美形親子が、うちの近所の女性陣のハートを震撼させている件について。
趣味で本一冊は書けると思う。