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異世界でバーを開いたら魔王が入り浸っているんだが  作者: 楢館祥人


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4-3 バーカラビナへようこそ

「レオン、次は何にする?」


レオンは一瞬だけ目を閉じ、迷う素振りを見せた。


「……エル・ディアブロを。」


その名を聞いた瞬間、シュウの眉がわずかに跳ねた。

(”魔王”が、”悪魔”ね…)

心の中で静かに笑いながらも、すぐに手を動かす。


「ずいぶんと詳しいんだな。」

ゾーがグラスを傾けながら呟いた。


「ふふふ…かなり通っているからな。ずいぶんと種類も覚えてきたぞ。」


レオンは涼しい顔で言い切るが、どこか得意げでもある。

その横で、ゴロが腕を組んでシュウを見た。


「ところでシュウ。お前さん、一体どこでこの酒作りを学んだんだ? どう見ても、手際がただ者じゃねぇ。」


唐突な問いに、シュウは一瞬だけ手を止めた。


(どう答える? 本当のことを――いや。)

「……昔な、住んでいた街で少し教わったんだ。あとは見よう見まねさ。」


苦笑でごまかしながら答えると、ゴロは「ふむ」と納得したように頷いた。

その間にも、レオンは目の前の小皿に手を伸ばしていた。

中身は塩気のきいたピーナッツ。


「……美味いな、これ。」


殻を割る手つきに夢中になり、次から次へと口に放り込む。

ついには、手からこぼれ落ちた一粒が床に転がり落ちた。


「む……。」


レオンは慌てた様子で床に落ちたそれを拾い、皆に隠すようにして、さっと口に入れた。


「レオンさん!今ひろい喰いしたでしょ!」


抜け目のないノルムが鋭く突っ込む。

サルマはその様子に思わず噴き出していた。


「ん…別に良いではないか!?」

「ダメだよ!落ちたもの食べちゃ。」

「そうだぞー、レオン。ママに習わなかったか?」


シュウは冗談混じりに、その会話に口を挟んだ。

「みんな3秒ルールって知らないのか?」


「…? なんだそれ?」


皆の視線がシュウに集まる。


「落ちたものでも3秒以内ならセーフなんだよ。」


皆の反応が薄い。フォルンなんか、真顔でこちらを見ている。


「…え。何か変なこと言った?」

「シュウって、時々変わったこと言うよね。」

どうやら3秒ルールはこっちの世界では受け入れられないようだ。


「別の世界の人間だったりして。」

(…当たってやがる…。)


ノルムもフォルンも、妙に勘が鋭い時がある。



「そういやシュウ。」

サルマが手を挙げる。


「俺が初めて飲んだ酒、覚えてるか? あれを頼む」

「ああ。ブッシュミルズだな。サルマにとっては思い出の一杯か。」


シュウは得意げに笑い、ボトルを手に取る。

そのやりとりを見ていたレオンが、不意に言った。

「ならば……ワシも思い出の酒を飲みたい!」


シュウは思わず声の主へ顔を向ける。

「ん? まさか、ラスティネイルか?大丈夫か?」


シュウが心配したその言葉に、サルマが聞き返す。

「大丈夫って、どうしたんだ?」


ピトが口を挟むようにして答えた。

「このお酒を初めて飲んだ時、レオン様、倒れたんです。」


「それなりにアルコールも強いお酒だけど、倒れるほどじゃないんだけどな。」


そう言いながら、シュウはバックバーからブッシュミルズと、オールドパー、そしてドランブイを取り出した。


「お待たせしました、こちらブッシュミルズのハイボールです。そして、、、はい。こちらがラスティ・ネイルです。」


カウンターの上を滑ってきたグラスが、レオンの前で静かに止まる。

彼はそれをそっと持ち上げ黄金色の液体を見つめている。その瞳が、ほんのわずかに震えていた。


「……少し懐かしい、良い香りだ。」


彼は香りを楽しんだ後、唇を寄せる。

シュウは安心した様子でそれぞれの思い出のお酒を口につける瞬間を見守った。


「こういうゆっくりとした時間も良いものだな。」


ゴロの言葉を耳に残しながら、お酒をバックバーに戻そうと、ボトルに手を伸ばした瞬間、カウンターに鈍い音が響いた。

音のする方へ皆が顔を向けると、そこらじゅうにお酒やピーナッツをばら撒いて、気を失ったようにカウンターにつぶれているレオンがいた。


「れ、レオン!?」


ピトが慌てて駆け寄る。

「レオン様っ!? しっかりしてください!」


死んだように潰れているレオンを見て、サルマは笑いがこぼれてしまった。

「大丈夫かよっ!?」


咄嗟に駆け寄ろうとするフォルンをみて、シュウが慌ててカウンターの外に出ようとする。最初の時と同じであれば、彼に触れた瞬間に雷が炸裂するはずだ。そしたらお店の中のものを壊すどころか、正体がバレてしまう。


「大丈夫!フォルン。 座ってて。俺がやるから。」


必死の静止もむなしく、隣に座っていたゾーが、レオンの肩に触れてしまう。


「おい、つぶれたのか? 飲みすぎだぞ?」


(……? あれ? 何も起きない。)

驚いた顔をして、ゾーに介抱されるレオンの前で立ち尽くしてしまうシュウ。


「…どうした?怖い顔して?」

「……え?いや、、、。」


「おい、シュウ。突っ立ってないで手伝ってくれ。」

「あ、ああ。」


ゾーと二人でレオンの体を起こし、お店のソファ席に横たわらせた。


「レオン様が迷惑かけてごめんなさい。」


「…ったく、飲みすぎはダメだぞ。」

「あんたもそろそろいい加減にしなさいよ、サルマ。」


特に何も起きずに、事態が収束した様子にシュウは胸をなでおろした。

(それにしても、なんでまた…?)


一時はどうなるかと肝を冷やしたシュウだったが、最初の時と同じお酒で倒れた魔王に一瞬目をやるも、すぐに接客モードに切り替え、みんなの前に戻っていった。

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