ポイント・ネモ
こんばんは!メッセージ届いていたよ(^-^)
水の怪談を探してるんだってね。
怖い話なんて、この歳になるとあまり聞かなくなるんだけれど、面白い話を聞いたから、参考にメールするよ。
寿美礼、あなたは、建築関係の、ダムの工事と幽霊とか、そういうのを聴きたいんだろうけれど、残念ながら、一般人が思うほど、建築現場には幽霊は発生しないのであります。
でも、測量に関する少し怖い話を仕入れてきたからメールするね。
いきなりだけれど『ポイント・ネモ』って知ってる?
あなたの希望の怪談ではないかもしれないけれど、これは外国の測量技師がデーター上から発見した、極めて興味深い場所なのよ。
そこは、半径2700kmで海以外、何もない海域なの。
だから、360度、障害物のない水平線が見られる場所なのよ。
考えてみて。
それってすごく、恐ろしい気がしない?
南太平洋のある地点、たとえば、救命ボートでここに一人で漂っていたら、人工の光のない波の音だけの本当の闇と静寂に包まれるはずだもの。
心配しなくても、あなたの嫌いな海洋生物の攻撃はほとんど無いと思うわ。
この海域は、水深が4000mもあって、生物、プランクトンすら大量発生は望めない、文字通りの静かな海なんだから。波も荒くは無いから、流されることも少ないけれど、逆に、そこからボートを漕いで脱出するのは、難しいわ。
少し、ゾクゾクしてきたかしら?
人喰いザメはいないけれど、水温が低いので泳ぐことは出来ないと、思うわ。
でも、自分が浮いているその下に4000mの海水だけの世界が数千メートルも続いていると思うと、例え水温が暖かくても、スミレは、とても泳ぐ気にはなれないかもしれないね。
もし、泳いでいる間に、携帯電話とか、鍵なんかを落としてしまったら、そのまま、4000m下まで静かに沈んで行くのだから。
何も無いところだから、ここで遭難することなんて殆ど無いとは思うけれど、それでも、冒険者はいつの時代にもいるから、そんな人が遭難しないとも限らないわ。
物語としてはいい感じでしょ?
こんな所で一人になったら、本当の孤独を味わえるかもしれないわね。
遭難信号を送るとしたら、たまに通る宇宙ステーションしかないかも知れないわ。
暗い海の中で、SOSの光を向けられたら、もしかしたら、宇宙から助けが来るかも知れないと思うとロマンチックな気分になるでしょ?
まあ、相当の光源が必要だと思うから、異世界魔法でも使わないとそれは無理かも知れないわね。
さて、哀れな遭難者、どう救出する?
空に祈る。そして、助けを呼ぶ。
流れ星に長いをかけるとね、空から巨大な火球が海に落ちてくる、なんてのはどうだろう?
ここは、宇宙船の墓場とも言われているの。
偶然、宇宙船が海に落ちてきたら、ついでに見つけてもらえるかも。
なんて話はどうかな?
まあ、参考程度に。
今夜は少し暑いね。寿美礼も熱中症には気をつけて。
素敵なお話が出来ることを祈って。
かしこ ナツコより。