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漬物石3


 「とにかく、あれはパワーストーンだったと思うわ。お母さんの漬物がすごく美味しくなったもん。あれ、なんだろうね?気持ちの問題なんかな?不思議だった。」

作者は笑った。

「貴女が思うのなら…そうだと思います。」

私は笑った。私の記憶が正しけれは、石には確かに憑いていた。小さな水神の魂が。

「そんなもん、あるわけないじゃん。ああ、でも、私もなんであんなこと信じたんだろう(T-T)

 私、その漬物石に蛇の霊が憑いてるとか、思ってしまったんだよね。

 はぁー

 私、近所にゆみちゃんって同じ歳の友達がいてね、で、ゆみちゃんは心霊好きだったんだ。」

作者は昔を思い出していた。


 ゆみちゃんは作者の近所の女の子だった。


同じ歳だったので、二人はよく遊んでいた。当時は夕方のワイドショーで心霊特集などをしていて、ゆみちゃんはそれをよく作者と見ていた。

「そうでしたね。ゆみちゃん。懐かしいですね。」

私の言葉に作者は苦笑した。

「そうね。あの子、色々と不思議だったな。ナイロンの人形の髪の毛が伸びるとか言って切ったりしていたし。

 でも、思えば、あの頃は石の霊とか、人気があったのよね。ワイドショーでもとりあげられていたし。

 で、石についた蛇の怨念の回をゆみちゃんと見ていたらさ、うちの漬物石にも憑いてるとか言い出したんだよね。

 今考えると、ヒビだと思うんだけれど、石にはう黒い溝が蛇に見えちゃってさ、なんだか、そう考えると怖くなったんだ。」

作者は笑った。が、私は笑えなかった。それは水神の眷属の作用だから。

「そう考えたのなら、相性が悪かったのかも知れませんね。」

私は無難に答えた。

「ああ、パワーストーンとか、相性とかよくいうよね?私、よくわからないんだけれど、そんなの迷信でしょ?

 でも、ゆみちゃんって、霊の話をするときは目力、半端なくてね。それで洗脳されたんだと思う。」

作者は渋い顔でその時を思い返す。

「でも、気になるなら、違うものと取り替えれば、川の石ですし。」

私は当時を思ってため息が出た。

ゆみちゃんに霊能力があったかは知らない。けれど、あの漬物石には小さなs水神の魂が憑いていて、漬物石にするような類ものではない。

大体は、ばちが当たりそうなものだが、見えないものに好かれる作者が、冬中、凍る漬物樽から思い石をどかして白菜を取り出し、石をほめていたので、

石の主も黙ってそれに従っていたのだった。

 水神が守る漬物である。それはうまいに違いない。

が、そのような物はいつまでも一般人が持っていて良いものではないし、気のバランスが崩れるのだ。

 そして、眷属も困るから迎えにくる。

ゆみちゃんは、その気を受信したに過ぎない。

「そうだね。私も、アレから夢見が悪くてさ、なんか、死んだおばあちゃんが夢で怒るのよね。早く返してこいって。

 で、怖くなって石を持って川に行ったんだ。

 そして、違う石と変えたんだけど、これが、うまく浸からない石でさぁ。お母さんに叱られたわ。」

作者は不貞腐れた顔になる。

が、その夢、水神の眷属に脅された本当の祖母さんの霊ですから。

「でも、夢見は良くなったのでしょ?」

「うん。夕飯は悪夢だったけど。お父さんが漬物ディスるから、夕飯ば暗くなるんだよ。でも、そのうち、しば漬けフィーバーがやってきて、お母さんは漬物から卒業したんだ。」

作者は苦笑した。

「しば漬け、お好きでしたね。今年は私も漬けてみましょうか。でも、貴女はもう、川で漬物石を取ってきてはいけませんよ?」

私の言葉に作者は渋い顔をした。

「当たり前でしょ。今は、どこに監視カメラがあるかわからないし、それにもう、樽で白菜なんて漬けなくても食べる物はたくさんあるんだもん。

 あんな大きな漬物石は必要ないわ。

 それに、河岸は整備されて、もう、あんな大きな石、転がってないもん。」

作者は肩をすくめた。


 でも、いるんですよ。あの方は。

 そして、あの日、貴女が川に石を返しに行った時、約束した言葉を今でも覚えているんですよ。


 『もう一度、私を出会える事があるなら、その時は、一緒に暮らそう』


水神様のその言葉を知らずに、貴女は『ありがとう』と返していましたね。

水神は女ったらしが多いのです。

そして、捕まったら川の水底でとらわれてしまうのです。永遠に…

そんな事になっったら…私は…


 「ねえ、何、抱きついてるのよ。もう、そんな怖い話じゃなじゃない。」

思わず作者を抱きしめた私に作者は文句を言う。でも、今はその言葉すら愛おしくて、離れられません。

「すいません。もう少しだけ…そうしたら、離れますから。」

「え?怖くないでしょ?ねえ?それとも、なんか寄ってきたのっ!」

作者は慌て始める。

「いいえ、今は二人っきりですよ。ただ、私が、怖がりなだけです。」

私は作者を抱きしめる手に力を込める。


 貴女を失う…私にはこれほど怖いことはないのです。


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