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漬物石2


 「そういえば、漬物石は別だったわ。」

作者は楽しそうに昔を思い出していた。そして、お茶を一口含むと、続きを話し始める。

「うん。大体、川の石は家には持ち帰るなって言われたの。昔は、河原は整備されてなくて、老人が野草をとりにきていたの。」

作者は懐かしそうに目を細める。

「そうですね。あの頃は、戦前生まれの人が沢山いて、物不足の時代の思い出手共に河原で野草を取ってましたね。」

私も懐かしく少女の作者を思い出した。当時、それほど整備の進んでいない川の周辺は危険な場所でしたが、野草とりや散歩の老人が子供たちを見守っていました。

「うん、今は、多分、そういうのはダメだと思うんだけれど、戦前のひどい時にお世話になった河原と、敗戦の混乱などから法律で爺さんたちを縛るなんて出来なかったと思うし、誰も、それを止める理由を持ち合わせていなかったわ。寧ろ、次の食糧難の時のために食べられる野草を子供に襲えてくれていたわ。」

作者は楽しそうに話す。

「そんな日が、来なくてよかったですね。」

私は平穏だった作者の人生を思い言った。

「そうね。でも、今思うと、あの戦争経験者の、『きっと来る』に騙されて世紀末は大変だった気もするわ。楽天的なのもなんだけれど、悲観的なもの悲劇よね。」

作者は渋い顔をする。

「それはそうと、漬物石はどうしました?」

「あ、そうだったわね。そうそう、石よ。そんな爺さんたちに、河原石は霊がついてるから縁起が悪いとか言われて持ち帰るなって言われたの。

 今考えると、河川の石で遊ぶなって言いたかったのかもしれないけれど、まあ、川って、昔はお盆にご先祖様を送ったり、江戸時代は処刑場だったりしたから霊が彷徨うとか脅されたわ。

 で、怖くて持ち帰らないようにしていたんだけれど、老人は漬物石が必要になると河原石を拾うのよ。おかしいでしょ?

 まあ、昔は漬物石なんて売ってなかったから、河原で探すしかないし、漬物は必需品だから、のそ為の石はご先祖様も許してくれる、という設定だったんだと思う。

 まあ、昔はこんなに暖かくなかったし、コンビニなんてなかったから、冬の保存食として漬物を樽でつけて離してたのよね。


 で、いい石を拾ってくるとお駄賃をくれたりするのよ。」

作者はくすくすと笑いだす。

「お駄賃ですか。」

「うん、お金だけじゃなくで、お菓子とかの時もあったけれど、あれ、結構大変なのよ。大きからず、小さからず、重からず、軽からず、いい感じで野菜を浸透させなきゃいけないらしいから。

 なんかね、漬物石で味が変わるんだって。」

作者は懐かしそうに空を見る。そして、思い出したようにポツリといった。


 「でも、本当に、漬物石で味が違ったのよね。あの当時は科学が流行っていたから、鉱物の種類とか、いろんな意見を交わしたりしたけれど、よくわからなかったわ。うちのお母さん、漬物つけるの下手だったのよね。

 思えばあれも、一つの『パワーストーン』って言えるのかもしれないわね。」

作者はくすくすと笑い出した。

「パワーストーン。そんないい待遇でしたっけ?」

私の質問に、作者の顔が暗くなる。


 「パワーストーンって、いいものばかりではないわ。その力が自分と合わなきゃひどい目に遭うし。」

作者はそう言って深いため息をつく。

「仕事のお守り見たいに?」

私の意地悪な質問に作者は責めるように私を見る。

「悪かったわね。あれは大変だったのよ。それに悪いのは、仕事が途切れる剛なんだもん。」

作者は膨れながら私を睨む。作者は食事会をしたくなって怖い話を集めた事がありました。当時はオカルトブームで、実話の体験は雑誌社が採用すると食事に使えるカーでとかをくれたりしたのでした。

 でも、集めている途中で、仕事運のパラーストーンのお守りが真っ二つに割れて、バイトが急遽なくなり、作者は恐怖に慄いたのでした。

 彼女はどんな霊体験より、この時が1番怖かったと、そう話していました。

「そうでしたね。でも、よかったじゃないですか。なんとか生きてこられて。」

私は笑った。

「神社に泣いてお願いしたもん。もう、怪談集めて金儲けなんて考えないのでなんとか仕事くださいって。」

作者は不機嫌そうにぼやく。それから、急に私を見て、

「ねえ、この話は金儲けには当たらないわよね?」

と、聞いてきた。

「そうですね。それに、これは小説です。実録は…最近はコンプライアンスが厳しくなりましたから。」

「そうよね、うん、私、ホラー作家、これ、フィクション。金は欲しいが、天下の底辺作家、いいんだよね。」

作者はそう言って自分を励ます。

「ええ。大丈夫です。私が貴女を見守っていますから。」

私のセリフに作者は少し驚いてそれから、やさしく笑う。

「そうね、ありがとう。私が暴走しないように見守っていてね。」

作者の言葉が、少し切なく心に響いています。私は正体を貴女は本当には知らない…

「はい。いつまでも。」

そう、小さな女の子だった頃、貴女が私にお願いしたように

 貴女の王子様として、いつまでも。永遠に…


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