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日常

〈ヴェランダに片蔭あつて人一人 涙次〉



【ⅰ】


 カンテラ事務所、先日人事異動があつたばかりだが、新たに牧野に辞令が下つた。

 ロボテオ2號に名刺を貰つた牧野、そこには「カンテラ一燈齋事務所・開發センター管理者 牧野旧崇」と黑々と印字されてゐる。

 杉並區某所(* もとは安条展典のスタジオ敷地だつたところ)に、安保さん秘密兵器開發の為のラボが建つた。敷地内には、カンテラが「修法」を使ふ用の、方丈も併設されてゐる(新たに護摩壇も用意されてゐた)。

 牧野はそこの用務員兼留守居役となつたのだ。

 杵塚、「お下がりで惡い」と云ひつゝ、ホンダ LY125fiのキイを、牧野に渡した。「カンさんが遷ちやんに急用あつたりする時、バイクあると便利だろ?」‐「か、監督~」涙脆い牧野はぐすぐす鼻を云はせてゐる‐



* 当該シリーズ第174話參照。



【ⅱ】


 確かに、今まで事務所雑用の任に当たつてゐた牧野からすれば、これは榮轉なのである(だからつて泣く程の事はないが)。

 ラボ、早速、テオと安保さんが入つて何やら造つてゐる。「何だい、今度の新兵器は?」じろさん問ふと、ダイナマイトの約30倍の爆破力、然も爆音と煙は最低限に抑へてある、爆彈だと云ふ。じろさん「???」‐「僕みたいに先を讀める奴にしか、用途は分からないでせう」。テオ、嘯いた。



【ⅲ】


 ところで、カンテラと悦美、ザ・冩眞出版社と云ふ會社からお聲が掛かり、接待を受けた。「たまには外メシもいゝんぢやないの?」と、ご馳走に舌鼓。ところは横濱の中華街。用件は? とカンテラが訊くと、シンクロニシティか、安条の事だと云ふ。* 彼が自ら焼いてしまつたスタジオ址に、カンテラ一味が新たに建物を建てたところから、失踪後の彼の行く方を知つてゐるんぢやないか、さう勘繰つて來たらしい。だうも單なる偶然の一致ではないやうだつた。



* 当該シリーズ第147話參照。



 ⁂  ⁂  ⁂  ⁂


〈狂蟲が我が部屋無盡に飛び廻る夏の夜べ嗚呼夏の夜べかな 平手みき〉



【ⅳ】


 帰つて、カンテラと悦美。「【魔】の臭ひがぷんぷんする。大體、事務所の外で會はうつて奴は、そんなものなのさ」‐「こゝには結界も張つてあるし、タロウちやんもゐるしねえ」‐君繪が割り込んで來た。(安条さんなら、四万十川の髙知県流域にゐるわ、パパ・ママ)‐(テレパシーのネットワークかい?)‐

(さうよ)ロボテオ2號も、髙知デ妖怪・かはうそノ目撃例アリ、とPCのデータを讀み上げた。


 と、云ふ譯で、じろさんがカンテラの代參で四國出張と相なつた。



【ⅴ】


「僕の事を探してゐる? 僕は人間としての僕を已めたんだから、それはカンテラさんの云ふ通り、【魔】ですよ」と、すつかりカハウソ姿の板に付いた安条が云ふ。「僕の冩眞の才能を惡だくみに利用しやうとしてゐるんです」‐「あんたとしては、もう一度魔道に墜ちて迄カムバックする氣は毛頭ない、と」‐「当たり前です。僕は四万十に生きるカハウソ。それで充分。惡の部分はカンテラさんに斬り棄てられました」



【ⅵ】


 カンテラ「フル、ラボからテオを呼んでくれ。今からザ・寫眞出版社に襲撃を掛ける」‐じろさんは黑装束に覆面の出で立ちに早替はり。「【魔】の巢窟」に踏み込む準備は整つた。テオは折り畳み式のカートを押してゐる‐ じろさん「何それ?」、テオ「まあ怪盗もぐら國王Ⅱ世つて譯」‐「???」



【ⅶ】


「ちょいとご免よ」カンテラ開口一番、

「安条はあんた方の為に働く氣はないつてさ」。「な、何い!?」で、カンテラ・じろさん、ザ・寫眞出版社内で大暴れ。カンテラ、首魁と覺しき【魔】の首級を挙げた。「しええええええいつ!!」

 それを尻目に、テオ、社の金庫をガメて來た。カートにそれを載せて、はいサヨナラ。


 後に、例の「爆彈」が仕掛けられ、金庫のドアは開けられた。じろさん「きみら、その為に...?」‐「だつて依頼主不在なら、【魔】本人たちに支拂つて貰はないとね、ヤマの代金」

 じろさん、狐に摘まゝれた心地。先を讀むとは、かう云ふ事か!



 ⁂  ⁂  ⁂  ⁂


白癜(しろなまづ)ぽつぽつ穿つ腕の灼け 涙次〉



 それにしても、安条の寫眞を【魔】がどのやうに利用してゐたのかゞ、氣になるところだが、一味本人たちはThis case is closedとばかりに、日常的営為に戻つてゐた。君繪の顔を白虎がぺろり。涙坐ちやんだうしたのかな? と白虎は思つた。お仕舞ひ。



 

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