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第十七話「古代神殿の発見」

 

 海神の三叉戟を手に、俺たちは再びクラーケン・ガーディアンのいる洞窟に向かった。今度は全員が海神の祝福珠を身につけている。


「準備はいいか?」


 カイトが最終確認する。全員が頷いた。


「今度こそ、あの守護者を倒そう」


 洞窟に入ると、クラーケン・ガーディアンは相変わらず洞窟の奥で威圧的に待ち構えていた。10本の触手を大きく広げ、こちらを睨みつけている。


「いくぞ!」


 まず俺が海神の祝福珠を使用した。


『海神の祝福珠を使用しました』

『効果:海洋生物に対するダメージ+50%(10分間)』


 続いて他のメンバーも祝福珠を使用する。全員に淡い青い光が纏った。


「今度は違うぞ!」


 タケルが剣を構えて突進する。今度こそダメージが通るはずだ。


 強力な斬撃がクラーケンの触手に命中した。


『-47』


 ダメージが表示された!IMUNEではない!


「やった!効いてる!」


 続いてカイトの矢が放たれる。


『-38』


 これも見事に命中。アヤの水魔法も、レイの投げナイフも、全てダメージが通る。


 そして俺の番だ。海神の三叉戟を構え、全力でクラーケンに向かって投げる。


 シュオオオ!


 三叉戟が光の尾を引きながら飛んでいく。


『クリティカルヒット!-156』


「すげぇ!大ダメージだ!」


 クラーケン・ガーディアンが苦痛の声を上げた。しかし、まだまだ元気だ。反撃が始まる。


 巨大な触手が鞭のように襲いかかる。今度は俺たちも準備ができている。


「散開!」


 カイトの指示で、全員が素早く動き回る。狭い洞窟内だが、連携を活かして戦う。


 アヤが氷魔法でクラーケンの動きを封じ、その隙にタケルとレイが接近攻撃を仕掛ける。カイトは遠距離から的確に矢を放つ。


 俺は三叉戟を取り戻し、再び攻撃の機会を狙う。


「ウシオ、あの頭部を狙え!」


 カイトの指示通り、クラーケンの頭部に向かって三叉戟を投げる。


『クリティカルヒット!-203』


 大ダメージ!クラーケンのHPが半分を切った。


 しかし、ここからクラーケンの攻撃が激しくなった。水流を操って津波攻撃を繰り出してくる。


「うわあ!」


 俺たちは押し流されそうになったが、必死に踏ん張る。


「回復薬!」


 アヤが治癒魔法を使い、タケルが回復薬を配る。


 戦闘は激しさを増していく。クラーケンの触手攻撃、水流攻撃、そして墨を吐いて視界を奪う攻撃。


「見えない!」


 洞窟内が真っ黒になった。


「ウシオ、動物交感は使えるか?」


「やってみます!」


 動物交感スキルを発動すると、クラーケンの位置がなんとなく分かった。


「右斜め前です!」


 俺の指示でカイトが矢を放つ。暗闇の中でも見事に命中した。


「ナイス!」


 墨が薄れてくると、クラーケンのHPは残り4分の1まで減っていた。


「もう少しだ!」


 最後の攻勢に出る。全員が残った祝福珠を使用し、総攻撃を仕掛けた。


 タケルの連続攻撃、アヤの大魔法、レイの罠攻撃、カイトの貫通矢、そして俺の海神の三叉戟。


 全ての攻撃がクラーケンに集中する。


『-89』『-67』『-45』『-78』『-234』


 ついに、クラーケン・ガーディアンのHPがゼロになった。


 巨大な体がゆっくりと海底に沈んでいく。そして、光の粒となって消えていった。


『クラーケン・ガーディアンを撃破しました!』

『経験値を大量獲得しました』

『レベルが上がりました』


「やったー!」


 全員が歓声を上げた。長い戦いだったが、ついに勝利を掴んだ。


「よくやったぞ、みんな」


 カイトが嬉しそうに言った。


 クラーケンが消えると、洞窟の奥に新たな通路が現れた。


「あれが深海神殿への道か」


 俺たちは通路を進んでいく。そして、ついにそれを目にした。


 巨大な地下海が広がっていたのだ。そしてその海の向こうに、いくつもの島のような構造物が見える。


「これは...」


「地下海だ。こんなものが海底にあったなんて」


 アヤが魔法で照明を強くすると、地下海の全貌が明らかになった。そこには、複数の古代遺跡が点在していた。神殿、宮殿、工房のような建物、そして巨大な図書館らしき構造物。


「これ、一つの文明だぞ」


 タケルが興奮して叫んだ。


 その時、地下海の中央にある最も大きな建物から、光の柱が立ち上った。そして、システムメッセージが現れた。


『【歴史的大発見】古代アルネシア海洋文明の中枢都市を発見しました』


 そして、全プレイヤーに向けたワールドアナウンスが響いた。


『【歴史的大発見】パーティリーダー「カイト」率いる調査隊が古代アルネシア文明の遺跡を発見!「古代海洋神殿」の解放により、古代エリアシリーズが始動します!冒険者の皆様、失われた古代文明の謎に挑戦してください!』


「おお!ワールドアナウンスだ!」


 パーティメンバー全員が興奮していた。


「カイトさん、やりましたね!」


 俺がカイトを祝福する。


「いや、これはみんなの成果だ。特にウシオ、君の謎解きがなければここまで来れなかった」


 カイトも感動している。


 地下海の探索を続けると、さらに驚くべきことが判明した。ここは単なる遺跡ではなく、古代の技術によって今でも機能している都市だったのだ。


「見ろよ、あの建物から光が漏れてる」


「まさか、まだ人が住んでるのか?」


 最も大きな建物に近づくと、そこから古代の人々...ではなく、海洋生物と融合したような不思議な存在が現れた。


「あれは...」


 それは人間のような姿をしているが、鱗や鰭を持つ海洋人だった。古代文明の末裔なのかもしれない。


『来訪者よ、よくぞここまで辿り着いた』


 海洋人が話しかけてきた。


『我らは古代アルネシア海洋文明の守護者。長い間、この聖域を守り続けてきた』


「あなたたちは...」


『我らの文明は表の世界から姿を消したが、海の底でその叡智を受け継いできた。そして今、新たな海の探求者たちが現れた』


 海洋人は俺たちを見回した。


『特に汝』


 海洋人が俺を指差した。


『汝の中に、真の海への愛を感じる。我らの知識を受け継ぐ資格があるやもしれぬ』


 そして、俺の手に古代の巻物を渡してくれた。


『これは「潮流統率の書」。古代の漁師たちが使った秘技が記されている』


『古代漁法の書を獲得しました』


「ありがとうございます」


『この聖域には、まだ多くの秘密が眠っている。だが、全ての秘密を解き明かすには、まだ時が必要。汝らはまず、この神殿の基礎を理解することから始めるがよい』


 海洋人が地下海の施設について説明してくれる。


『だが、全ての秘密を解き明かすには、まだ時が必要。汝らはまず、この神殿の基礎を理解することから始めるがよい』


「他の冒険者たちも来ることができますか?」


 カイトが質問した。


『もちろんだ。この発見により、多くの探求者がここを訪れるだろう。我らは全ての真摯な学び手を歓迎する』


 海洋人は再び建物の中に消えていった。


「すげぇ...本当に古代文明の生き残りがいたんだ」


 俺たちはしばらく地下海を探索したが、他のエリアは魔法的な結界で封印されており、今は入ることができなかった。


「これから徐々に解放されていくんだろうな」


 カイトが推測する。


「でも、すごい発見だった。これでゲーム全体が変わるぞ」


 地上に戻る頃には、既に多くのプレイヤーがワールドアナウンスについて議論していた。


「古代エリアシリーズって何だ?」


「カイトって誰?すげぇじゃん」


「海洋系プレイヤーが大発見したのか」


 港は大騒ぎになっていた。そんな中、別の話題も耳に入ってきた。


「シトラスハーブが品薄になってるって」


「血抜き熟成法のせいで需要が爆発してるらしい」


「どこの店も売り切れだよ」


「もっと効率的な保存方法があればいいのに」


 俺の開発した技術が思わぬ副作用を生んでいるようだった。


「カイトさん、すごい注目ですね」


「照れるな。でも、これは俺たち全員の成果だ」


 カイトが謙遜する。


「特にウシオ、君がいなければこの発見はなかった。君こそ真の発見者だよ」


「そんな...みんなで力を合わせた結果です」


 俺も照れながら答えた。


 宿屋で一人になった俺は、古代漁法の書を読んでみた。そこには確かに「潮流統率」という技術について書かれていた。海の流れを読み、時には操ることで、魚を自在に導く技術らしい。


「これを習得できれば、漁師としての実力が格段に上がるな」


 今日の発見は、俺の海への理解をさらに深めてくれた。古代文明の叡智を受け継ぎ、真の海洋マスターを目指す道筋が見えてきた。


 窓の外では、相変わらず美しい海が星空に照らされている。しかし今、その海の底には古代文明の遺跡が眠っていることを知っている。


「漁師への転職も、もうすぐかもしれない」


 俺はその海を見つめながら、新たな決意を胸に眠りについた。明日からは、古代の叡智を学ぶ新しい冒険が始まる。

【アルネペディア】

・古代海洋神殿:地下海に浮かぶ古代アルネシア海洋文明の中枢都市。カイト率いる調査隊の発見により古代エリアシリーズが解放された。


・古代アルネシア海洋文明:かつて海底に栄えた高度な文明。現在も海洋人が守護者として聖域を管理している。


・海洋人:古代アルネシア海洋文明の末裔。人間と海洋生物の特徴を併せ持つ存在。古代神殿の守護者として活動。


・潮流統率の書:古代の漁師が使った秘技「潮流統率」について記された古代文書。海の流れを操り魚を導く技術が記されている。


・古代エリアシリーズ:カイト調査隊の発見により解放された古代文明の遺跡群。現在は古代海洋神殿のみが発見されているが、アルネシア大陸の各地に他の古代エリアも存在すると推測される。

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