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第十六話「月と貝の契り」

 

 クラーケン・ガーディアンとの戦闘から一夜明けた。俺は早朝から港にいた。今日こそ、あの無敵の守護者を倒す手がかりを見つけなければならない。


「おはよう、ウシオ」


 カイトが声をかけてきた。


「おはようございます。みんなは?」


「もうすぐ来るよ。昨夜、色々と調べてみたんだが、やはり古代の遺跡には何かしらの攻略法があるはずだ」


 しばらくすると、レイ、タケル、アヤも集まってきた。


「それじゃあ、もう一度海底遺跡に向かおう。今度は戦闘ではなく、徹底的な調査だ」


 カイトの指示で、俺たちは再び調査船に乗り込んだ。


 海底遺跡に到着すると、俺たちはクラーケンのいる洞窟ではなく、まず外側の遺跡を詳しく調べることにした。


「昨日は急いでいたから、見落としがあったかもしれない」


 俺は遺跡の壁に刻まれた古代文字を注意深く観察した。魚の彫刻、波の模様、そして...


「あれ、これは?」


 遺跡の一角に、これまで気づかなかった小さな部屋を発見した。


「隠し部屋か?」


 カイトが興味深そうに覗き込む。


 部屋の中央には、石でできた円形の台座があった。そして、その台座には月の満ち欠けを表すような彫刻が刻まれている。


「月齢を表してるのかな?」


 よく見ると、台座は回転するようになっていた。現在は三日月の位置を指している。


「ウシオ、これ分かるか?」


「月齢の図ですね。新月から満月まで、月の満ち欠けのサイクルが表されてます」


 俺は台座の周りを調べた。そして、壁に刻まれた古代文字を発見した。


「『海神は月の満ち欠けと共に呼吸する。大いなる潮の時、封印は解かれん』」


「大いなる潮?」


 アヤが首をかしげる。


「大潮のことですね。新月と満月の時に起きる、一番潮の干満が大きくなる現象です」


 俺は台座を回してみることにした。現在の三日月から、新月の位置に合わせる。


 カチリと音がして、台座が固定された。すると、部屋の奥の壁がゆっくりと開いた。


「やったぜ!隠し通路だ」


 通路の先には、さらに小さな部屋があった。そこには...


「貝殻がたくさんある」


 部屋の壁には、様々な貝殻の片側が埋め込まれていた。そして床には、対になるはずの貝殻がバラバラに散らばっている。


「これは...貝合わせか?」


 壁に刻まれた文字を読んでみる。


「『海の子らよ、真の契りを示せ。十二の絆が道を開く』」


「十二の絆...十二種類の貝を正確に合わせろってことかな?」


 カイトが推測する。


「そうみたいですね。でも、これは難しそうだ」


 床に散らばった貝殻を見ると、確かに様々な種類がある。しかし、同じ種類でも微妙に形や模様が違っている。


「これ、間違えたらどうなるんだろう?」


 レイが心配そうに言う。


「やってみるしかないな。ウシオ、頼む」


 カイトが俺に託した。確かに、この中では俺が一番海洋生物に詳しい。


「分かりました。やってみます」


 俺は床の貝殻を一つ一つ手に取って確認していく。


「これはアサリ...こっちはハマグリ...あ、これはサザエの蓋かな」


 壁に埋め込まれた貝殻と、床の貝殻を見比べながら、慎重に対を探していく。


「アサリはこの模様の違いで見分けるんです。同じアサリでも、成長環境によって微妙に違いが出るんです」


 俺は祖父から教わった知識を総動員して、貝殻の鑑定を続けた。


 最初の一対目、アサリの貝合わせ。壁の貝殻に、床から見つけた対の貝殻をはめ込む。


 ピッと光った。成功だ。


「よし、一つ目クリア」


 続いて二対目、ハマグリ。これも微妙な模様の違いを見分けて、正しい対を見つける。


 三対目はサザエ。四対目はホタテ。五対目はアワビ。


 俺は集中して作業を続けた。海洋生物への愛情と、長年の観察経験が活かされている。


「すげぇな、ウシオ。俺にはどれも同じに見える」


 タケルが感心している。


「慣れですよ。毎日海を見てると、自然に覚えるんです」


 六対目、七対目と順調に進んでいく。しかし、八対目でつまずいた。


「うーん、これは...」


 床にある貝殻が、どれも微妙に違って見える。同じ種類のはずなのに、どれが正しい対なのか分からない。


「どうした?」


「ちょっと分からない貝があって」


 俺はもう一度、壁の貝殻をじっくりと観察した。模様、色合い、成長線...


「あ、これだ」


 成長線の入り方で見分けがついた。正しい対を見つけて、はめ込む。


 ピッと光る。成功だ。


「よし、残り四つ」


 九対目、十対目も何とかクリア。しかし、十一対目で再び難しい局面に遭遇した。


「これは...見たことのない貝だな」


 床にある貝殻が、俺の知識にない種類だった。


「古代の貝なのかもしれません」


 アヤが推測する。


「そうかもしれませんね」


 俺は古代文字を参考にしながら、貝殻の特徴を分析した。螺旋の巻き方、表面の凹凸、色の濃淡...


「これかな?」


 直感を信じて、貝殻をはめ込んでみる。


 ピッと光った。成功だ。


「最後の一つだ」


 十二対目。これが最も難しかった。床に残った貝殻は三つあり、どれが正しいかが分からない。


「うーん...」


 壁の貝殻をもう一度よく見る。そして、ふと気づいた。


「あ、これは潮汐に関係してるかも」


「潮汐?」


「はい。この貝殻の模様、潮の満ち引きの跡みたいに見えるんです」


 俺は台座の月齢と関連付けて考えてみた。満月の大潮の時にできるような、特殊な模様。


「これだ」


 最後の貝殻をはめ込む。


 ピッと光った瞬間、部屋全体が光に包まれた。


「成功だ!」


 十二の貝合わせが完了すると、部屋の奥からせり上がってきたのは、美しく光る三叉の矛だった。


『古代の神器「海神の三叉戟」を発見しました』


「これは...」


 俺が三叉戟を手に取ると、不思議な力が体に流れ込んできた。


『特殊能力「海洋の加護」を獲得しました』

『効果:海洋生物に対する攻撃力が大幅に上昇』


「すげぇ!これがあれば、クラーケンと戦えるかもしれない」


 カイトも興奮している。


「でも、これ一本だけで大丈夫かな?」


 レイが心配そうに言う。


 その時、台座が再び動き出した。今度は満月の位置に自動的に回転する。


 すると、十二の貝殻が全て開いて、それぞれから光る真珠のような珠が現れた。


『海神の祝福珠×12を獲得しました』


『効果:使用すると一定時間、海洋生物に対するダメージが増加』


「これで全員分だ!」


 俺たちは海神の祝福珠を一人二個ずつ分け合った。


「よし、これでクラーケン・ガーディアンに挑める」


 カイトが決意を込めて言った。


「今度こそ、深海神殿に到達しよう」


 俺たちは新たな武器と加護を得て、再びクラーケンとの戦いに挑む準備を整えた。


「海の叡智を持つ者にのみ開かれる...まさにこのことだったんですね」


 俺は古代海洋文書の言葉を思い出していた。現実の海洋知識が、ゲームの世界でも重要な意味を持つ。これこそが、俺の目指していた道だった。


「今度は必ず勝つぞ」


 仲間たちと共に、俺は決意を新たにした。

【アルネペディア】

・月齢台座:古代遺跡にある回転式の石台。月の満ち欠けを表す彫刻が刻まれており、正しい月齢に合わせることで隠し通路が開く。大潮(新月・満月)が重要な鍵となる。


・古代貝合わせの間:十二種類の貝殻を正確に合わせる謎解きの部屋。海洋生物への深い知識と観察力が必要。成功すると海神の神器が出現する。


・海神の三叉戟:古代の神器。海洋生物に対する攻撃力を大幅に上昇させる特殊武器。ウシオが謎解きで獲得。


・海神の祝福珠:一定時間、海洋生物に対するダメージを増加させる消耗品。古代貝合わせの成功報酬として12個獲得。


・海洋の加護:海神の三叉戟によって得られる特殊能力。海洋生物との戦闘で真価を発揮する。

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