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第十五話「無敵の守護者」

 

 血抜き熟成法の技術公開から一週間が経った。この間に俺のレベルは13まで上がり、海洋での活動も板についてきた。そして今日、ついに深海神殿への挑戦を決行する日が来た。


「準備はできてるか?」


 カイトが最終チェックをしている。今回のパーティは俺、カイト、レイ、そして新たに加わった戦士のタケルと魔術師のアヤの5人編成だ。カイトがパーティリーダーを務めることになった。


「水中呼吸装置、ロープ、照明、非常食、全て準備完了です」


 レイが装備リストを確認する。


「深海神殿がどんな場所か分からないからな。万全の準備が必要だ」


 タケルも緊張した面持ちだった。彼は掲示板でパーティ募集を見て参加してくれた、レベル15の熟練戦士だ。


「魔法の準備もOKです。水中でも使える光魔法と治癒魔法を用意してます」


 アヤは魔術師らしく冷静だった。彼女もレベル14の実力者だ。


「それじゃあ、出発しよう」


 俺たちは調査船に乗り込み、海底遺跡のある海域に向かった。


 現場に到着すると、一週間前に発見した遺跡が静かに海底に佇んでいる。しかし今日の目的は、あの奥にある水で満たされた洞窟だ。


「あそこが深海神殿への入り口か」


 水中呼吸装置を装着し、全員で海中に潜る。遺跡の最深部にある洞窟の入り口は、確かに神秘的な光を放っていた。


「なんか...吸い込まれそうな感じがする」


 アヤが不安そうに呟いた。


「大丈夫。俺たちがついてる」


 タケルが力強く答える。


 洞窟に入ると、想像していたのとは全く違う光景が広がっていた。水で満たされているはずなのに、なぜか息ができる。魔法的な空間なのかもしれない。


「これは...すごいな」


 洞窟の壁には美しい発光苔が生えており、幻想的な青い光で辺りを照らしている。そして、洞窟は思っていたより深く続いていた。


「ウシオ、何か感じるか?」


 カイトが動物交感スキルの使用を促す。俺はスキルを発動してみた。


「うーん...何か大きな存在がいる気がします。でも、敵意は...」


 その瞬間、洞窟の奥から低い唸り声が響いてきた。


「...今、敵意を感じました」


「来るぞ!」


 カイトが警告した瞬間、洞窟の奥から巨大な影が現れた。


 それは...まさに海の怪物だった。体長5メートルはある巨大なイカのような姿をしているが、10本の触手の一本一本に古代の装身具が巻かれ、頭部には王冠のような飾りを身につけている。


『古代の守護者クラーケン・ガーディアンが現れた!』


「でけぇ...」


 クラーケン・ガーディアンは威圧的な存在感を放ち、触手を大きく広げて俺たちを威嚇した。


「いくぞ!」


 タケルが剣を構えて突進する。強力な斬撃がクラーケンの触手に命中した。


 しかし―


『IMMUNE』


 ダメージ表示が『IMMUNE』と出て、全くダメージが通らない。


「なんだと?」


 続いてカイトの矢、アヤの魔法、レイの罠、俺のフィッシュアロー。全ての攻撃が次々と繰り出される。


『IMMUNE』『IMMUNE』『IMMUNE』『IMMUNE』


 しかし、全ての攻撃が無効化されてしまう。


「どういうことだ?全然効かないぞ」


 一方、クラーケン・ガーディアンの反撃は苛烈だった。巨大な触手が鞭のように襲いかかる。


「うわあ!」


 アヤが触手に吹き飛ばされ、洞窟の壁に叩きつけられた。HPが一気に半分まで減る。


「アヤ!」


 レイが治癒薬を投げ渡す。


「ありがとう!でも、私の魔法も全然効かない」


 クラーケンの攻撃は続く。水流を操って津波のような攻撃を仕掛けてきた。


「これはやばい!」


 俺たちは必死に回避するが、狭い洞窟内では限界がある。タケルも大ダメージを受けてしまった。


「くそ、どうなってるんだ」


 カイトが焦りを見せる。


「リーダー、一度撤退しましょう」


 俺が提案する。このままでは全滅してしまう。


「そうだな。全員、洞窟の外に避難するぞ」


 カイトの指示で、俺たちは必死に洞窟から脱出した。クラーケン・ガーディアンは追ってこなかったが、洞窟の入り口で威嚇的に触手を振り回していた。


 海上に戻って、俺たちは息を切らしていた。


「あのクラーケン、なんなんだ?全ての攻撃が効かないなんて」


 タケルが困惑している。


「古代の守護者って名前からして、特別な存在なんでしょうね」


 アヤが推測する。


「でも、完全無敵ってことはないはずだ。きっと何か攻略法があるはず」


 カイトが冷静に分析していた。


「そうですね。古代の存在なら、古代のルールに従って戦う必要があるかもしれません」


 俺も同感だった。


「もう一度、遺跡を詳しく調べてみませんか?何かヒントがあるかもしれません」


「いいアイデアだ。今日はここまでにして、明日改めて調査しよう」


 カイトが決断した。


 港に戻る途中、俺は考えていた。あのクラーケン・ガーディアンを倒すには、きっと普通の戦闘とは違うアプローチが必要だ。


「古代の遺跡なら、古代の知識が必要かもしれない」


 そんなことを考えながら、俺は海底遺跡のことを思い返していた。あの古代文字、魚の彫刻、波の模様...きっと何かの意味があるはずだ。


 宿屋で一人になった俺は、古代海洋文書を読み返してみた。


「『海の深淵への道を示そう』『海洋の叡智を持つ者にのみ開かれる』...」


 叡智。知識。きっとそこに答えがある。


「明日はもっと詳しく遺跡を調べよう」


 俺は決意を新たにして眠りについた。あのクラーケン・ガーディアンを倒し、深海神殿の謎を解き明かすために。

【アルネペディア】

・クラーケン・ガーディアン:古代海洋神殿を守る巨大なイカ型の守護者。体長5メートル、10本の触手に古代の装身具を身につけている。全ての攻撃を無効化する特殊な能力を持つ。


・IMMUNE:攻撃が無効化された際に表示されるシステムメッセージ。対象が完全な耐性を持っていることを示す。

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